現在分詞を一番つかうのは「現在進行形」とよばれる形です。
現在進行形があまりにも有名なので「現在」と関係ありそうですが、実はそうではありません。
現在分詞は「現在 present」とありますが「時制」や「時間」とは無関係です。
「現在」と「進行」は似ているのですが、英語では全く別物になります。
「現在分詞」は誤解を招きやすい文法用語なのでしっかりと「意味」と「用語の由来」を見ていきましょう。
「過去分詞」と対応する「現在分詞」という名前を英語でつけた
「現在分詞」を「現在」+「分詞」に分けて説明しています。
現在分詞の「現在」の名称の由来
英語の Wikipedia から「present participle(現在分詞)」の命名の経緯を引用します。
“The linguistic term, past participle, was coined circa 1798 based on its participial form, whose morphology equates to the regular form of preterite verbs. The term, present participle, was first used circa 1864 to facilitate grammatical distinctions.”
『言語学用語としての「past partciple(過去分詞)」は、規則変化をする動詞の過去形と同じ形をしていることから1798年頃(*注)につくられた。また「present participle(現在分詞)」という用語は「past participle(過去分詞)」との文法上の区別を容易にするために1864年頃(*注)に最初に使用された。』
*個人的に調べるともっと早く登場しているようですが、Wikipediaの記述(ソースは Merriam Webster)なのでそのままにしておきます。
Participle – Wikipedia
18世紀になってからなので意外と最近ですよね?
その理由も踏まえてすこし注意点があります。
実はもともと英語だけでなくヨーロッパ系言語の文法用語はラテン語を元にしています。
もちろん英語の2つの分詞の由来もラテン語です。
それはローマの公用語だったラテン語が中世~近代までヨーロッパ世界の共通語だったことに由来します。
そのため近代に入っても英語の文法書すらラテン語で書かれていました。
そのためラテン語ではなく英語の文法用語としての成り立ちの時期が18世紀になっているというわけです。
最初に英語の文法用語としての「present participle」が使用された記録は英語辞書 Merriam Webster に記載があります。
実際の記録は Google Book Ngram Viewer も参照ください。
現在分詞の「現在」に要注意
文法用語はラテン語に由来していますが、英語とラテン語ではかなり仕組みが違うところがあります。
たとえばラテン語には「過去分詞」がなく「完了分詞」が存在します。
- ラテン語の分詞
- Participium praesens(現在分詞)
- Participium perfectum(完了分詞)
- ラテン語には「未来分詞」もあります。
どちらも英語の分詞とよく似た機能をもつので、英語の文法用語の由来となっています。
和訳すればラテン語の「participium praesens」も、英語の「present participle」のどちらも「現在分詞」になるのは同じです。
ではラテン語の流用で「現在分詞」となったように思えますが、 Wikipedia には違うことが書いてありました。
The term, present participle, was first used circa 1864 to facilitate grammatical distinctions.”
『「present participle(現在分詞)」という用語は(past participle 過去分詞)との文法上の区別を容易にするために1864年頃に最初に使用された。』
Participle – Wikipedia
その理由は英語では「present participle(現在分詞)」以外にもほかの用語も使われてことから推測できます。
- active participle(能動分詞)
- imperfect participle(未完了分詞)
- progressive participle(進行分詞)
日本の英文法ではほぼ「現在分詞」という和訳一択になっていますが、昔はバラついていたんです。
そのため「過去分詞」に対応しない名称を選ぶと「過去分詞 ⇔ 能動分詞」なんてことになりかねません。
こんな非対称な名称がつくとお互いの機能の関係性が分かりにくくなります。
それゆえ下記のような分詞の対応関係をしめす名称のペアリングになります。
- past ⇔ present(過去 ⇔ 現在)
- perfect ⇔ imperfect / progressive(完了 ⇔ 未完了/進行)
- passive ⇔ active(受動 ⇔ 能動)
この中で「過去分詞 past participle」が主流になったので「現在分詞 present participle」が対応するものとして選ばれるという単純明快なロジックです。
つまり「受動分詞」という用語が選ばれた場合は「能動分詞」が対応するものとして選択されていたでしょう。
ちなみにラテン語では「現在分詞 ⇔ 完了分詞(+未来分詞)」というペアリングです(ラテン語の仕組みではこの表現はわかりやすいです!)。
では、あえてラテン語に無い英語オリジナルの文法用語を使おうとする理由はどこにあるでしょうか?
実はラテン語の文法と英語の文法がうまくハマらないことがたくさんあるからです。
実際に「現在分詞」と言われても「現在時制」とは無関係なんです。
これだと日本人でなくてもこんがらがると思います。
いろいろ調べてみるとドイツ語では「現在・過去」という用語を分詞から外す動きがあるようです。
- Partizip I(分詞 I)
- その他の名称は Partizip Präsens(現在分詞)など。
- 英語の場合は「現在分詞」のこと
- Partizip II(分詞II)
- その他の名称は Partizip Präteritum(過去分詞)や Partizip Perfekt(完了分詞)など
- 英語の場合は「過去分詞」のこと
英語だけでなくドイツ語でも「分詞」の名称はバラつきがあるんです。
ラテン語の流用がそのまま機能するのであれば、だれも用語の選定で悩まなくて済むんですが・・・。
下記の Wikipedia のリンクはドイツ語のページを添付しておきます。
また人工言語エスペラント語では分詞に「現在」や「過去」をそもそも使いません。
6種類の分詞の名称も機能そのものを表す単純明快なものです。
英語と比べるとエスペラント語の分詞のシステムは自由自在に運用でき、語尾の変形で品詞の切り替えも可能です。
この分詞の変化パターンをはじめて目にしたとき強烈な感動を覚えたのと同時に、それが英語の分詞の機能を見切った瞬間でもありました。
英語には失礼ですけど、エスペラントの分詞の機能限定版として英語の分詞を理解することで死角がなくなりました。
エスペラント語とは対照に英語の「分詞」は名称よりも「機能」を理解することに徹底的にこだわって下さい。
では注意点をまとめるとこうなります。
英語の現在分詞そのものは「現在」とは無関係なんです。
英語の現在分詞の重要な機能は「進行相 Progressive Aspect」をつくることなんです。
さて「相 Aspect」とは「行動の進行度」を表す英文法用語です。
一般的に「現在進行形」とよばれるものは「現在時制+進行相」をまとめていう表現のことです。
- I am going there.
- 私は現在そこに向かっています。
この文章では「be動詞」が「現在時制」を表します。
そして「現在分詞」が「進行相」を意味しているんです。
ここで注意ですが、それぞれの言語によって「現在分詞」の機能は似ているけれども違うものがあります。
たとえばフランス語やドイツ語の現在分詞は英語と同じように「進行相」をつくる形がありません。
いずれにしても「現在時制」という用語と混同しないようにしましょう。
分詞(Participle)とは動詞が変化した形容詞
次に「分詞」の意味に進みます。
一見すると「doing」や「going」は動詞に見えますがそうではありません。
分詞 Participle
- 動詞を変化させた形容詞(adjective)
- 動詞の変化形(準動詞)の品詞は動詞にすることはできない
分詞の種類
- 現在分詞(Present Participle) doing / helping / speaking / sleeping など
- 過去分詞(Past Participle) done / helped / spoken / slept など
分詞の名前の由来
ラテン語の「分詞」が動詞と形容詞と副詞の役割を「共有」していたことが由来です。
実際には言語によって「分詞」の機能にはばらつきがあります。
英語の分詞は形容詞としての使用が基本になります。
では Wikipedia の引用を見てみましょう。
“The word participle comes from classical Latin participium, from particeps ‘sharing, participation‘, because it shares certain properties of verbs, adjectives, and adverbs. The Latin grammatical term is a calque of the Greek grammatical term μετοχή ‘participation, participle’.”
『英語の「participle(分詞)」は、動詞、形容詞、副詞の特性を共有していることから、古典ラテン語の「particeps(共有、参加)」という用語に由来します。 このラテン語の文法用語は、ギリシャ語の文法用語「μετοχή’(共有)」から翻訳されたものです。』
Participle – Wikipedia
分詞の役割
英語の「分詞」は動詞としての性質を持つ「形容詞」のことです。
では Wikipedia の引用を見てみましょう。
“In linguistics, a participle is a nonfinite verb form that has some of the characteristics and functions of both verbs and adjectives. More narrowly, participle has been defined as ’a word derived from a verb and used as an adjective, as in a laughing face’.”
『言語学において分詞は、動詞と形容詞の特徴と機能をいくつか合わせもつ動詞の変化形のことです。より狭義では、分詞は「動詞から派生し形容詞として使用される単語」と定義されています。(例) a laughing face 』
*nonfinite verb(準動詞)= 動詞の変化形のこと(文法上は動詞として使えない)
Participle – Wikipedia
現在分詞はルール上では「形容詞」として扱う必要があります。
だから「be動詞 + 形容詞(≒現在分詞)」の形をとることができるんです。
ここでもよくある勘違いを確認しておきます。
現在進行形というのは「複合時制 composite tense」といって動詞と分詞をまとめたいい方です。
本来であれば、動詞と分詞の組み合わせで成り立っています。
現在分詞は「動詞を変化させた形容詞」なのでもう動詞として使えません。
現在分詞は「形容詞」の使用ルールに従うことで正しく使うことができます。
分詞は形容詞なので時制とは関係ない
「現在分詞」は「現在時制 past tense」とは無関係になります。
現在分詞も同じく「分詞 participle」であり、「時間 time」や「時制 tense」とは無関係となります。
英語の場合、動詞(と助動詞)が時制を表現します。
- ① She is going.(現在時制)
- ② She was going. (過去時制)
- ③ She gets going.(現在時制)
- ④ She got going. (過去時制)
これらは、すべて第2文型(SVC)です。
動詞が be動詞でも get でも同じように文構造を作ることができます(詳しくはブログ最後のリンクへ)
現在分詞や過去分詞は分詞(動詞の変化形 = 準動詞)になります。
分詞はある程度の動詞の機能を持ちますが、品詞は「形容詞」なので時制を表すことはできません。
「過去分詞 Past Participle」のことも知りたい方はこちらをどうぞ。
現在分詞の大切な機能は「進行相」の発動
現在分詞をつかう文章で一番たいせつなのが「進行相」の機能です。
- ① She is going.(現在時制)
- ② She was going. (過去時制)
「be動詞+進行相」をつくる「be動詞」は「助動詞 auxiliary verb」とよばれています。
しかしそれは「現在分詞」が「動詞になれない」ので「補助する動詞」という意味です。
一般的に助動詞とよばれる will や can は「法助動詞 modal verb」といって別カテゴリーになります。
現在分詞は形容詞なので be動詞が「動詞」として機能しています。
これは英語の歴史の経緯からも正しい解釈なので気になる方は以下のブログもどうぞ。
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