英語の「過去分詞」に戸惑ったことはないでしょうか?
- be + 過去分詞 ⇒ 受動態
- have + 過去分詞 ⇒ 現在完了
よくみるのはこの2パターンですが「過去時制」とは関係ありません。
「受動態」と「現在完了」では意味が全然違うように見えます。
さらに「現在完了」は「過去」との違いがわかりにくいです。
おそらく英文法の中でも、一番、本質をとらえにくいのが「過去分詞」だと思います。
過去分詞は「have のあり・なし」を分けることで一気に本質が見えてきます。
現在完了 “have + 過去分詞” は例外ルール
まず過去分詞の正体を知るための前提条件があります。
【 区別する基準 】
・過去分詞が have とペアになっているか?
- (例)I have used it.
- (例)I am used.
過去分詞を見切るのに必要な知識は「have のあり・なし」だけです。
- have なし「単独用法:受身・完了の形容詞」
- have あり「連携用法:完了の動詞」
過去分詞はこの2つのパターンで運用が大きく変わります。
① have なし(単独用法)
- My job is done.
- 私の仕事は = 終わらせられた(完了した)
- 意味:受身と完了
- 品詞:形容詞
② have あり(連携用法)
- I have done my job.
- 私は 終わらせた 自分の仕事を
- 意味:完了のみ
- 品詞:have とペアで1つの「動詞」
ここで「have + 過去分詞 の例外ルールが生まれた話」はこちら。
ここからは「基本ルールの過去分詞(have なし)」に話を進めます。
過去分詞は「完了相」と「受動態」の形容詞
過去分詞で重要なポイントは4点あります。
- 時制:なし / 該当しない(Not Applicable)
- 品詞:形容詞(Adjective)
- 相:完了相(Perfect Aspect)
- 態:受動態(Passive Voice)
過去分詞は「過去」とは関係ありません。
「分詞 participle」は「動詞が変化した形容詞」という意味です。
過去分詞は誤解を招きやすい名前をしています。
まずは「過去分詞」の意味を用語から理解したい方はこちらをご覧ください。
過去分詞とおなじく現在分詞の意味も確認をお願いします。
「過去」と「完了」の違いは「相 aspect」でわかる
過去分詞の意味は「過去 past」ではありません。
過去分詞の意味は「完了 perfect」です。
英文法における「過去」と「完了」は一見よくにています。
- 過去 Past: 過去に起こったこと
- 完了 Perfect:もうすでに実現したこと
この2つは似ているようにみえますが「文法のカテゴリーが違う」んです。
【 過去と完了の区別 】
- 過去 Past ⇒「時制 tense」のカテゴリー
- 完了 Perfect ⇒「相 aspect」のカテゴリー
日本であまりみない「相 aspect」は「行動の進行度(0~100%)」を表す文法用語です。
では「時制」と「相」の違いを確認します。
時制 tense
・行動の「時」を表す
- 「過去 past」
- 「現在 present」
- 「未来時制なし」
*厳密には英語に未来時制は存在しません。
相 aspect
・行動の「進行度(0~100%)」を表す
- 「未然 prospective」 やる予定(まだやっていない)
- 「進行 progressive」 やっている(まだおわっていない)
- 「完了 perfect」 やりおえている(いつ終えたかは関係ない)
これを図で表現してみます。

英文法でよく見る「○○形」とは「時制+相」で組み合わせです。
- 「現在時制 + 未然相」 It is to do it.
- 「過去時制 + 未然相」 It was to do it.
- 「現在時制 + 進行相」 She is doing it.
- 「過去時制 + 進行相」 She was doing it.
- 「現在時制 + 完了相」 He is gone. / He has done it.
- 「過去時制 + 完了相」 He was gone. / He had done it.
*have + 過去分詞は「例外ルール」ですが一般的な用法なので紹介します。
*be動詞 + to do(未然相)は一般に「be to 構文」として解説されています。
では本格的に「相 aspect」に進めていきましょう。
「相 aspect」はラテン語・エスペラント語から学ぶ
日本の英語教育では「相 aspect 」はあまり目にしません。
英語には「相 aspect」が存在するので、参考にラテン語とエスペラント語を参考にしてみます。
不思議なことに「相 aspect」はラテン語とエスペラント語をつかうとよくわかります。

このように「分詞」は「動詞の変化形(準動詞 non-finite verb)」で「相 aspect」を表します。
未然相 prospective aspect
- 不定詞(英語)”to do / to be / to have”
- 未来分詞(ラテン語)
- 未然分詞(エスペラント語)
進行相 progressive aspect
- 現在分詞(英語) “doing / being / having”
- 現在分詞(ラテン語)
- 進行分詞(エスペラント語)
完了相 perfect aspect」
- 過去分詞(英語)”done / been / had”
- 完了分詞(ラテン語)
- 完了分詞(エスペラント語)
こうしてみると「過去分詞」が「完了相」をもつのがよくわかると思います。
【 完了を理解するポイント 】
完了は「相 aspect」ですので、過去「時制 tense」と一緒にしてはいけません。
ここまでで過去分詞が「完了相 perfect aspect」をもつこともわかりました。
次に過去分詞の「受動態 passive voice」を見ていきます。
英語で「受動態」を作れるのは過去分詞だけ
過去分詞は「受動態」をもちます。
では「態 voice」をざっくり解説します。
・態(voice)とは何か?
「主語(S)と目的語(O)の関係が『する』のか『される』のかを区別する文法用語」
日本語の能動態・受動態
- 能動態(する): 私は 書いた この小説を。
- 受動態(される):この小説は 書かれた 私によって。
英語の能動態・受動態
- 能動態(する): I wrote this novel.
- 受動態(される):This novel was written (by me).
態は「主語 ⇔ 目的語」の「する vs される」という関係性を示します。
つまり過去分詞に受動態を発動させるには「目的語」が存在する必要があります。
この「目的語」をとることを「能動態」と言います。
目的語をとる=能動態を作れる動詞を「他動詞」といいます。
英語の「受動態」は「他動詞の過去分詞」だけにセットされています。
しかし受動態は「目的語」を持たない動詞の過去分詞には発動できません。
英語の「能動態」と「受動態」は目的語がある前提で存在しています。
英文法の「態 Voice」から確認されたい方はこちらをどうぞ。
ヨーロッパ系の言語の「過去分詞」はみんな似ている
過去分詞が「受動態 passive voice」を持つ理由はどこから来たのでしょうか?
これまた歴史的に「過去分詞」に昔からセットされているんです。
英語やラテン語、ヒンズー語、ペルシャ語を含む言語のグループにインド・ヨーロッパ語族(Indo-European Languages)があります。
このインド・ヨーロッパ語族の「過去分詞」は「受動態 passive voice」を発動できるんです。
英語だけでなくラテン語でも同じなので、図を見ていきましょう。

英語の過去分詞には「完了相」と「受動態」がセットされています。
ラテン語でも同じように完了分詞に「完了相」と「受動態」がセットされています。

分詞には「相 aspect」と「態 voice」の両方がセットされています。
- 現在分詞:能動態 + 進行相(doing / speaking など)
- 過去分詞:受動態 + 完了相(done / spoken など)
ラテン語などと違って、英語は「未来分詞」の代わりに「不定詞(to do)」を使います。
分詞を覚えるときは、ついでに「未然相 prospective aspect」も覚えておくと便利です。
- 不定詞(未来分詞):能動態 + 未然相(to do / to speak など)
では「過去分詞」の例文をみていきましょう。
【 現在時制 + 受動態・完了相 】
- The project is completed.
- この計画は(現時点で)完成させられた。
【 過去時制 + 受動態・完了相 】
- The project was completed.
- この計画は(過去の時点で)完成させられた。
どちらも時制と関係なく「相+態」を表現しています。

過去分詞は「動詞の機能」を一部だけ発動することができます。
- 品詞 = 形容詞(動詞ではなくなる)
- 機能 = 動語 V(五文型の構造を引き継ぐ)
ここが「形容詞」と「過去分詞」が大きく違うところです。
そういうわけで「完了 & 受動」という「行動」を意味することが可能になります。
次に過去分詞を文法的に正しく使うため「形容詞」の 「使用ルール」を再確認します。
過去分詞は形容詞と同じように使える
英文法用語の「分詞 participle」の意味が「動詞を形容詞として使う品詞」です。
それゆえ過去分詞の使用ルールは「形容詞」に合わせて使います。
では形容詞の使用ルールを確認します。
① 名詞を説明する(限定用法 Attributive)
- 名詞の前から(前置修飾 Pre-positional)
- 名詞の後ろから(後置修飾 Post-positional)
② 補語 C になる(叙述用法 Predicative)
- SVC(第2文型の補語 Complement)
- SVOC(第5文型の補語 Complement)
では図を見て確認します。

形容詞の使うところは全部で4パターンあります。
このように「過去分詞」も基本は4パターンで運用することになります。
過去分詞にはもう少し広い役割がありますが、基本は形容詞と同じ使い方でOKです。
過去分詞で「名詞を説明」する(限定用法)
まずは「名詞を説明する(限定用法)」で過去分詞と形容詞を並べて例文をみていきます。
名詞を前から説明
- ① He is an innocent man.(形容詞 innocent)
- ① 彼は = 一人の無実の男性
- ② He is a convicted man.(過去分詞 convicted)
- ② 彼は = 一人の有罪とされた男性
名詞を後ろから説明
- ③ She attacked someone innocent.(形容詞 innocent)
- ③ 彼女は 攻撃した 誰かを ← 無実の
- ④ She defended someone convicted.(過去分詞 convicted)
- ④ 彼女は 擁護した 誰かを ← 有罪とされた
注意として「後ろから説明(後置修飾)」は日本語にないので感覚がつかみにくいです。
過去分詞を「補語 C」に入れる(叙述用法)
では次に「補語 C」でつかうパターンをみていきましょう。
【 SVC 第2文型 】
- ① He is guilty.(形容詞 guilty)
- ① 彼は = 有罪
- ② He is arrested.(過去分詞 arrested)
- ② 彼は = 逮捕された
【 SVOC 第5文型 】
- ③ I found him guilty.(形容詞 guilty)
- ③ 私は 分かった 彼が 有罪と
- ④ I found him arrested.(過去分詞 arrested)
- ④ 私は 分かった 彼が 逮捕されたと
形容詞とまったく同じように過去分詞も使えます。
形容詞の使用ルールに合わせて過去分詞を使用すればOKです。
「受動態」と「完了相」のどちらが重要か?
過去分詞は「受動態」と「完了相」の二つの意味を持っています。
過去分詞を理解する際は、どちらかだけに限定できるわけではありません。
実際に日本語の「~された」も同じ感じです。
- (誰かに)~された(受動態)
- (もうすでに)~された(完了相)
では例文を見ていきましょう。
【 受動態が中心 】
- The task is completed by him.
- そのタスクは = 完成された 彼によって
【 完了相が中心 】
- The task is completed by its due date.
- そのタスクは = 完成された 期限の日までに
この2つの意味が自然に含まれていますよね?
日本の文法書の解釈では「be動詞 + 過去分詞は受身!」と意味を分離しているものが多いです。
しかし、実際の英語ではそのあたりは文脈依存です。片方の意味だけ切りわけるほうが困難です。
では、さらに無理して先ほどの2つの例文を結合してみます。
【 完了相 & 受動態 】
- The task is completed by him by its due date.
- そのタスクは = 完成された 彼により 期限の日までに。」
さてこの文章では「受動態・完了相」どちらが優先なのでしょうか?
「受動態」と「完了相」のどちらが主軸になるかは、過去分詞以外の表現に頼っています。
ここでは和訳を「~された」を基本として和訳しています。
もちろん受動態の意味だけをとらえて「~される」と訳したほうがいい場合もあります。
そのあたりは文脈や状況にあわせて適切に対応してください。
「態 voice」と「相 aspect」は過去分詞だけでなく不定詞や現在分詞もセットされています。
下のまとめの解説図が参考になるかと思います。

過去分詞は「完了相」と「受動態」をもつ形容詞です。
いつも両方の意味を把握するようにしておいてください。
自動詞の過去分詞は「完了相」のみ発動
受動態をつくれるのは他動詞の過去分詞だけです。
最後に「自動詞の過去分詞」の例文を少し確認します。
【 自動詞の過去分詞 】
- 自動詞の過去分詞は「受動態」を発動できない
- 自動詞の過去分詞は「完了相」を発動できる
では例文をみていきます。
- ① The bridge falls.
- ② The bridge is fallen.(橋は落ちてしまった)
- ③ He goes.
- ④ He is gone.(彼はどこかにいってしまった)
自動詞の過去分詞は単純に「完了相の形容詞」として理解すればよいです。
最近の英語では「自動詞の過去分詞」は完全に形容詞になってきています。
形だけをみたら「過去分詞」なので「受動態」と切り離してください。
(SVCの過去分詞はかなりやっかいなので、ここでは割愛します)
現在完了(have + 過去分詞)のナゾも受動態と完了相で解決!
受動態の文法は一見すこしトリッキーなものも存在しています。
次のブログではいろいろな受動態の文法構造を解説しています。
英語の「have + 過去分詞」が「現在完了」となるのは「例外ルール」でした。
次のブログで「have + 過去分詞」がうまれた理由と「現在完了」の正体を解説しています。