日本の英語教育では「現在進行形」は中学生の時に習います。
「現在進行形」は「~している」という意味だと教わります。
中学で習う現在進行形の作り方
・動詞を「be 動詞 + 動詞のING形」に変える
実際にやってみましょう。
(X) I go to school .
・・・ “go” ⇒ “be going” へ変換・・・
(Y) I am going to school.
ここまでは中学のワークでよくある内容です。
別の例文を2つ並べてみるとこうなります。
- ① Amy helps Bobby. *現在形
- ② Amy is helping Bobby. *現在進行形
- ① エイミーはボビーを手伝う。 *現在形
- ② エイミーはボビーを手伝っています。*現在進行形
では次の文は「現在進行形」でしょうか?
- ③ Charlie is going to see Daniel.
- ③ チャーリーはダニエルに会うつもりです。
中学でこの文は「現在進行形」ではなく「未来形」と習います。
さらにこの2つはどうでしょう?
- ④ My daddy is driving a car.
- ⑤ My hobby is driving a car.
- ④ 私の父は車を運転している。
- ⑤ 私の趣味は車を運転することです。
違いは daddy と hobby だけなのに、下の⑤文は「現在進行形」になっていません。
このように be動詞+ING形には「現在進行形」以外のパターンがあります。
丸暗記はキケンなので対策をとります。
現在進行形の動詞はどれなのか?
突然ですが、ここでクイズです。
- Erica is singing.
- エリカは歌っている
Q: この文章の動詞はどれですか?
A: おそらく日本の学校での正解は singing だと思います。
さらにクイズをつづけます。
- Fred walking.
- フレッドは歩いている(???)
Q:この文章の動詞はどれですか?
A:残念ながら walking ではありません。
そもそもこの文は英語として成立していないんです。
その理由は「動詞」が存在しないからです。
なんと「動詞のING形」はもう「動詞」ではないんです。
ではもう一度「現在進行形」を見ていきます。
- Fred is walking.
- フレッドは歩いている。
be動詞の「is」が復活したことで、フレッドがちゃんと歩いています!
つまりこの文章の「本当の動詞」は be動詞なんです。
そして「進行」を意味する walking は「現在分詞」といって「動詞が形容詞に変化したもの」です。
後ほど触れますが、英語の「進行」は「動詞」で表現しない決まりです。
さて現在分詞の品詞は「形容詞」に変化しています。
せっかくなので形容詞の「nice」にも参加してもらって比べてみます。
- ① Grace is nice.
- ② Hannah is smiling.
- ① グレイスはやさしい。
- ② ハンナは微笑んでいる。
明らかにどちらの文も動詞は「is」なんです。
ここで be動詞を消すと・・・
- × Grace nice.
- × Hannah smiling.
エラーがでて英語が機能しなくなりました…
やはり「be動詞」が「動詞」です。なぜなら「現在分詞」が「形容詞」だからです。
さらにもう一つ確認です。
形容詞には「名詞を説明する(限定用法)」という機能があります。
現在分詞を形容詞と並べてみると・・・
- ③ Isaac caught a falling apple.
- ④ Jack bought a sharp knife.
- ③ アイザックは落下中の林檎をつかんだ。
- ④ ジャックは鋭いナイフを買った。
どちらもちゃんと機能しています。現在分詞が「形容詞」である証拠です。
【 形容詞の使用ルール 】
- 名詞を説明する(限定用法 Attributive)
- 補語 C になる(叙述用法 Predicative)
では図で確認です。
形容詞の使用ルールはこれさえ覚えておけばなんとかなります。もちろん「現在分詞」にも応用できます。
では「現在分詞 present participle」の詳しい解説に進みます。
現在分詞とは何か?
現在分詞を理解するための重要なポイントは3点あります。
- 品詞:形容詞(Adjective)
- 時制:なし
- 相:進行相(Progressive Aspect)
まず現在分詞は「現在時制」とは関係ありません。
時制は「動詞」が担当します。
- I am here.
- I was here.
時制は動詞が変化して表すので、「現在分詞」は時制とは関係ありません。
そして「分詞 participle」は「動詞が変化した形容詞」を意味する文法用語です。
- I am sleeping here.
- I was sleeping here.
こうすると形容詞である分詞が、時制と関係ないことがよくわかると思います。
そう考えると「現在分詞」はとても誤解を招きやすい名前をしています。
本来の現在分詞は「現在時制」とは関係なく「進行相」をつくる機能を持ちます。
この「相 アスペクト aspect」という用語が重要なので覚えておいてください。
「現在」と「分詞」の用語の由来や意味を知りたい方はこちらをご覧ください。
現在進行形とは「現在時制」+「進行相」の組み合わせ
ここから「進行 progressive」をくわしく解説していきます。
まず「現在分詞の意味」をおさらいです。
- 行動が進行していることを表現する
- 時間の現在とは関係がない
- 分詞は動詞が変化した形容詞
- 分詞は形容詞なので動詞ではなくなる
さて英文法における「現在」と「進行」は一見よく似ています。
- 現在 Present:現在の行動や事実
- 進行 Progressive:行動が進行中や実行中であること
この2つは似ていますが絶対に区別しないとダメなんです。
なぜなら「文法のカテゴリーが違う」んです。
【 現在と進行の区別 】
- 現在 Present ⇒「時制 tense」のカテゴリー
- 進行 Progressive ⇒「相 aspect」のカテゴリー
「相 aspect」とは「行動の進行度(0~100%)」を表す文法用語です。
ここで英語の Wikipedia を引用してみます。
“The continuous aspect is constructed by using a form of the copula, “to be“, together with the present participle (marked with the suffix -ing).”
『進行相は、主語と補語をつなぐ役目をもつ be動詞と(動詞 + ing の形をとる)現在分詞を組み合わせて作られる。』
Continuous and progressive aspect – Wikipedia
*英文では “continuous” となっていますが “progressive” でもほぼ同じ意味
この「進行相」こそが「現在進行形」の「進行(~している)」を意味しています。
実は「現在時制+進行相」の形は、ヨーロッパの言語では珍しい形になっています。
ドイツ語やフランス語などには存在しません。
スペイン語には「現在分詞(gerundio へルンディオ )」を使用した「進行相」を意味する表現があります。
スペイン語も英語と同じく「estar(英語では be動詞 に相当)+ 現在分詞」の仕組みです。
英語の gerund は「動名詞(ING形の名詞用法)」ですが、スペイン語の gerundio は英語の「現在分詞に近い」ので、ここではあえて「現在分詞 ≒ gerundio」として使います。
イタリア語にもスペイン語とよく似た仕組みで「進行相」を作ることが可能です。
スペイン語やイタリア語のように gerund は英語の「動名詞」と同じ機能ではない場合が多いので、第2外国語を英語で学ぶ時は注意してください。
では「相 aspect」をつかって「現在(時制)+ 進行(相)」の説明に進んでいきましょう。
まず「時制」と「相」の違いを確認します。
【 時制 tense 】
- 行動の「時」を表す
- 動詞の「形」を「現在形」と「過去形」に変えて表す
【 時制の種類 】
- 現在 present
- 過去 past
- ✖ 未来 future
厳密には英語に未来時制はありません。
英語は「現在時制」のなかで「未来」を表現します。
それゆえ「現在時制」は「非過去 non-past」と理解するのが正しい定義です。
【 相 aspect 】
- 行動の「進行度(0~100%)」を表す
- 動詞の変化形(準動詞 non-finite verb)で表す(品詞は動詞ではなくなる)
【 相の種類 】
- 「未然 prospective」 ⇒ やるつもり(まだやっていない)
- 「進行 progressive」 ⇒ やっている(まだ終わっていない)
- 「完了 perfect」 ⇒ やりおえている(いつ終えたかは関係ない)
図で確認してみましょう。
このように「相 aspect」は「動詞の変化形」にセットされています。
ですので「過去 + 進行」も「現在分詞」でつくれます。
【 時制の変更 】
- 現在時制 ⇒ 動詞を現在形に変える
- 過去時制 ⇒ 動詞を過去形に変える
では例文をくらべてみましょう。
【 英文 】
- ① Katie is making lunch.
- ② Laura was having dinner.
【 和訳 】
- ① ケイティは昼ごはんをつくっている。
- ② ローラは夕ごはんを食べていた。
【 時制 + 相 】
- ① 現在時制+進行相(Present Progressive)
- ② 過去時制+進行相(Past Progressive)
【 使用している品詞 】
- ① be動詞(現在形 Present Form)+ 現在分詞
- ② be動詞(過去形 Past Form)+ 現在分詞
このように「時制」と「相」を分離すればわかりやすくなります。
現在進行形は英文法にいらない
現在進行形や過去進行形という言い方は「複合時制 compound tense」といってすこし古い文法解釈です。
時制や相といった用語をつかわないので、初心者向けの時制の考え方とも言えます。
しかし応用レベルに進む場合は「現在進行形」と「過去進行形」を消し去ってしまって構いません。
なぜなら「時制+相」という考え方が世界の言語の文法解釈として主流だからです。
In the traditional grammatical description of some languages, including English, many Romance languages, and Greek and Latin, “tense” or the equivalent term in that language refers to a set of inflected or periphrastic verb forms that express a combination of tense, aspect, and mood.
『英語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ギリシャ語とラテン語などを含む言語の伝統的な文法的解釈(一昔前の文法解説)では「時制 tense」もしくは「時制と同じ意味合いで使用される用語」が示しているのは「時制(tense)・相(aspect)・法(mood)」の組み合わせで表現される動詞とその変化形をひとまとめにしたグループのことである。』
Tense-aspect-mood – Wikipedia
そもそも「現在進行形」を continuous form / progressive form と呼ぶことは全く一般的ではありません。
複合時制をまとめて「時制」にして「特別な形である」とする解釈自体が、英語と相性があまりよくないんです。
英語は「時制・相・法(動詞パラダイム)」を別々の言葉を組みあわせて表現できるとても便利な言語です。
英語の動詞の機能(動詞パラダイム)について知りたい方はこちらをどうぞ。
be動詞 + 現在分詞 の形がうまれた経緯とは?
英語の歴史を振り返ってみると「be動詞」はカンペキに動詞として機能しています。
では最後に英語の歴史からみた「進行相の成り立ち」について Wikipedia を引用します。
The progressive aspect in English likely arose from two constructions that were used fairly rarely in Old and Early Middle English. The first used a form of beon/wesan (to be/to become) with a present participle (-ende) . . . The second used beon/wesan, a preposition, and a gerund (-unge).
「英語の進行相の表現は、おそらく古英語と初期中英語ではほぼ使われなかった2種類の文構造から誕生しました。1つ目は、 beon / wesan(現代英語では be動詞 や become に相当)と現在分詞(-ende)をつなげる形を使用したものです。(中略)2つ目は beon / wesan のあとに『前置詞+動名詞(-unge)』の形を使用したものです。」
Wikipedia – Continuous and progressive aspects
ちょっと古英語の表現があるのでわかりにくいかと思います。
というわけで現代英語の例文で言い換えると・・・
- ① I am running. (running ⇒ 現在分詞:形容詞)
- ② I am on running. (running ⇒ 動名詞:名詞)
- ① 私は = 走っている
- ② 私は = 接している+走ること(前置詞 on:継続イメージ)
現代英語の表現にすればわかりやすいですね!
この2つの形が混ざり合うようにして現代英語の形になったと言われています。
②の「前置詞+動名詞」の形はラテン語やフランス語でも似た構造があり、その影響をうけているとありました。
つい最近までヨーロッパのエリート層にとってラテン語は絶対的な必須教養だったので、ラテン語の表現が今でも学術的分野では多く使われています。
このように英語の歴史を見ると「be動詞」は昔も今も「動詞」として機能しています。
文法書にある「助動詞 auxiliary verb」の本来の解釈は「現在分詞(形容詞)」の「補助の動詞」という意味です。
現代英語で「助動詞」として習う will や can も元々は本物の動詞でした。
ホンモノの動詞として「動詞の原形(昔は名詞用法)」を助けることから「助動詞」とよばれていました。
つまり「動詞の変化形を助ける動詞」という意味だったんです。
この仕組みは be動詞にも当てはまります。
英語の「現在分詞」は形容詞ですから動詞として機能できません。
「分詞は動詞ではない」という原則にそって「補助の動詞」の be動詞を使います。
一般に「助動詞」と呼ばれる will や can は正確には「法助動詞 modal verb」として別グループになります。
現代英語の will や can は単独で「動詞」としての機能をもう失っているからです。
そのため英語の「法助動詞」はもはや「助動詞」といえなくなってきているんです。
英語の文章構造の原則は「1つの文章に動詞は1つだけ」です。
進行形に使われる動詞は「be動詞ただ1つ」です。
「現在分詞を補助する本物の動詞」だから be動詞は「助動詞」です。
シンプルに、カンタンに説明できる答えが存在しています。
そしてそれは英語の歴史から見てもちゃんとバランスの取れた解釈です。
英文法には2種類の解釈が存在する
とはいえ現在進行形の「be動詞」には2種類の解釈をとるアプローチがあるのは事実です。
このようなことが起きる理由は英文法をみる2つの視点にあります。
- 統語論文法 Syntax(ルール・システム重視の英文法)
- 意味論文法 Semantics(意味・ニュアンス重視の英文法)
この2パターンでの「現在進行形の解説」は後半へとつながります。
後半の内容はこちらからご確認ください。
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