英語の「形容詞 adjective」に戸惑ったことはありませんか?
一般的な「形容詞」の説明は次のようなものが多いと思います。
『状態や性質を表す言葉』
ところが英語の形容詞はこれだけでは説明できないんです。
英語の形容詞は日本語にはない仕組みを持っています。
形容詞とは「英単語の種類」のこと
まず英語の「形容詞」の例を見ていきましょう。
- fine すてきな
- pretty かわいい
- kind 親切な
- safe 安全な
- patient 我慢強い
形容詞には「状態・性質」を表す言葉が並んでいるように見えます。
ところが「状態・性質」を意味する英語であっても形容詞とは限りません。
- kind やさしい(形容詞)
- kindly やさしく(副詞)
- kindness やさしさ(名詞)
- patient 我慢強い (形容詞)
- patience 我慢強さ、忍耐力(名詞)
このように英単語の意味では品詞は決まりません。
では、さらに視点を変えてみます。
- April paid $100 fine.
- エイプリルは100ドルの罰金を支払った。
- 名詞 fine:罰金
- Phebe had a pretty bad accident.
- フィービーはかなりひどい事故に遭った。
- 副詞 pretty:かなり、とても
- Racheal knows some kind of trick.
- レイチェルは何かしらの類(たぐい)の裏技(コツ)を知っている。
- 名詞 kind:種類
- Irene bought a huge safe.
- アイリーンは巨大な金庫を買った。
- 名詞 safe:金庫
- Laura was treating a malaria patient.
- ローラはマラリアの患者を治療していた。
- 名詞 patient:患者
見た目が同じなのに、意味が違うものがたくさん出てきました。
形容詞に限らず英単語の意味は見た目ではわからないんです。
英語は英単語をグループ分けをしていて、これを「品詞」といいます。
英単語の「品詞」は言葉の意味で決まるものではないんです。
英単語には2つ以上の「品詞」がセットされているものが多くあります。
適当に英単語をつかうと全く意味が通じなくなってしまいます。
つまり英単語の「品詞」は「英単語の使い方」で決定されます。
形容詞の使用ルールは2パターン
英単語を「形容詞」にしているのはあくまで「使い方」です。
さきほどの例を挙げると次のようになります。
- fine を名詞の使用ルールで使う ⇒ 罰金
- fine を形容詞の使用ルールで使う ⇒ すてきな
このように「形容詞」の使用ルールを知ることで「形容詞」をマスターできます。
「名詞」の使用ルールの確認はこちらをどうぞ。
日本語の形容詞にはない使用ルールが英語の形容詞にはセットされているので確認します。
英語の形容詞の使用ルールは2パターンだけです。
- 名詞を説明(修飾)する
- 補語 C になる
実際の使い方を形容詞 old をつかってみてみます。
- That old man is Mr. Curry.
- Mr. Curry lives in an old house.
- Mr. Curry is old.
- Mr. Curry doesn’t look old.
形容詞はこの2つの使いかたが基本となります。
「文の要素 SVOC」の1つである「補語 Complement」は日本語の文法には存在しません。
「補語ってよくわかってないかも・・・?」という方は「文の要素」と「品詞」の関係をご確認ください。
形容詞の使用ルールの2パターンにはちゃんと文法用語が存在します。
- 名詞を説明する ⇒ 限定用法(attributive)
- 補語 C になる ⇒ 叙述用法(predicative)
辞書などでは「限定」や「叙述」と注釈がある場合があります。
これは形容詞の意味や使用法が「限定」と「叙述」で変わるケースを区別するために使います。
このような使い分けをする形容詞はごく一部なので、あまり心配しなくてもOKです。
形容詞の使用ルールが見抜けるようになってから、すこしずつ覚えていくとよいと思います。
実際に形容詞を使用した英語の例文を見ていきます。
形容詞の例文:名詞を説明する(限定用法)
形容詞で「名詞を説明する」パターンは2通りあります。
- 前から説明する形容詞(Prepositional adjective)
- 後ろから説明する形容詞(Postpositional adjective)
この2つは形容詞を置くポジションの違いです。
- Prepositional:(名詞の)前に置く
- Postpositional:(名詞の)後に置く
英語の形容詞は前後どちらでも説明を名詞に加えることが可能です。
なぜなら「形容詞は名詞につながる」という機能があるからです。
英語やドイツ語そしてオランダ語などは「前から説明」が基本パターンです。
そして英語は「ゲルマン語 Germanic Languages」の仲間になります。
スペイン語などは「後ろから説明」が基本パターンになります。
フランス語は形容詞の性質によって使い分けがあります。
イタリア語もどちらからでも可能ですが、意味が少し変わります。
ラテン語はどちらでも可能ですが、形容詞の種類や意味によって方向が決まる場合があります。
ラテン語やスペイン語などは「ロマンス語 Romance Languages」の仲間になります。
このように言語ごとに違いはありますが、形容詞は「名詞にひっついていく力」を持ちます。
例えるなら形容詞は名詞にひっつく「磁石」のようなものです。
磁石が鉄にひっつくのに上下左右の方向は関係ありません。
では実際にこの2パターンをみていきましょう。
① 前から名詞を説明する(基本)
英語で一番よく見るパターンです。
日本語の形容詞と同じ感覚で使えばうまくいきます。
- a cute kitty:かわいい子猫
- good people:いい人たち
- a funny joke:おもしろい冗談
英語はこちらが基本なので「後ろから説明」になるケースだけ知っておくとうまくいきます。
② 後ろから名詞を説明する(特殊)
英語の形容詞は「前から説明」が基本です。
英語では時折「後ろから説明」になるケースもあるので確認していきます
②-A:2語以上のまとまりでつながる
- There is so much information available to us now.
- 存在する そんなに多くの情報が(←利用可能な)我々にとって 今。
- ≒ 今の我々にとって利用できる情報はほんとうにたくさんある。
- We have over 100 patients sick with the virus.
- 我々は 持っている100を超える 患者(← 病気の) そのウイルスで。
- ≒ そのウィルスの症状がでた100名を超える患者を我々は抱えている。
②-B:some- / any- / no- / every- の代名詞につながる
- They need the help of someone strong.
- Let him try anything unique.
- I noticed nothing strange about the man.
- Everything new is available on the internet.
②-C:ほかの言語に由来する表現
ラテン語やフランス語に由来する表現には「名詞 ← 形容詞」でつかうものがあります。
ロマンス語の形容詞は全体的に見ると「後ろから説明」のほうがメインになります。
そのため英語の歴史の中で採用された定型フレーズ表現がそのまま残っているパターンもあります。
- attonery general:司法長官(米) / 検事総長(日)
- battle royal:バトルロイヤル
- court martial:軍法会議
- time immemorial:太古の昔(記録が残っていないほどの時代)
このほかにもたくさんありますが、比較的「お堅い」表現として理解すると良いかもしれません。
形容詞の例文:補語 C になる(叙述用法)
形容詞を「補語 Complement」で使用する場合は2パターンあります。
- 第2文型 SVC
- 第5文型 SVOC
形容詞は「名詞」につながる力があります。
たとえ「補語」として使われても「形容詞」は「名詞」につながろうとします。
- 第2文型 SVC(主語の名詞とつながる補語の形容詞)
- 第5文型 SVOC(目的語の名詞とつながる補語の形容詞)
実際に例文をみていきます。
① 主語を説明する補語(SVC)
このパターンでの補語の役割は「主語の説明」です。
第2文型 SVC をとる動詞の後にセットされて「主語の説明」を行います。
- We are sorry.
- 我々は = 謝罪・同情している。
- ≒ (グループで)ごめんなさい / お悔やみ申し上げます。
- You are welcome.
- あなたは = 歓迎されている。
- ≒ どういたしまして(Thank you などへの返答として)
- My door is always open.
- 私のドアは = いつも 開いている。
- ≒ 私はいつでも君を受け入れるよ。
- I feel bad for him.
- 私は 感じる 悪い 彼に。
- ≒ 彼に申し訳ないと感じる。/ 悪い気がする。
- This curry tastes good.
- このカレーは 味がする 良い。
- ≒ このカレーはおいしい。
- We got busy today.
- 我々は 得た 忙しい 今日。
- ≒ 今日、私たちは忙しくなった。
英語では be動詞をつかうパターンが SVC でよく使われます。
ほかの SVC をとる動詞でも同じよう仕組みで使うことができます。
② 目的語を説明する補語(SVOC)
第五文型 SVOC の補語に入る形容詞です。
ここでの補語の役割は「目的語の説明」です。
「目的語+補語」をまとめて動詞の「目的語」として理解するとうまくいきます。
- Your friends make you happy.
- あなたの友人たちは つくる あなた=幸せ。
- ≒ あなたの友人たちがあなたを幸せにしてくれる。
- Come inside. We can keep you safe.
- 来て なかに。我々は(可能性として)保つ あなた=安全に。
- ≒ 中に入って。君を僕らは守ってあげられる。
- I found my battery dead.
- 私は 見つけた 私のバッテリー = 死んでいる。
- ≒ 私は自分のバッテリーがダメになっているとわかった。
このように形容詞はどんな形でも「名詞につながる」という機能があります。
別の言い方をすると「名詞につながるもの」は「形容詞」と呼ばれます。
この英単語の使用ルールで「品詞」がセットされることを覚えておいて下さい。
形容詞句と形容詞節の意味は使用ルール
英文法には「形容詞句」と「形容詞節」という用語が出てきます。
これも「形容詞」の使用ルールに合わせた文法用語であることに変わりはありません。
形容詞の使用ルールを踏まえて「句」と「節」を確認です。
- 句 phrase:2つ以上の英単語のまとまり(文章 SV を含まない)
- 節 clause:2つ以上の英単語のまとまり(文章 SVを含む)
カンタンに言い換えるとこうなります。
- 句:フレーズをひとまとめで使う時の呼び方
- 節:文章をひとまとめで使う時の呼び方
英語は「英単語」だけでなく「句」と「節」もひとまとめで形容詞のように扱えます。
- 形容詞句 adjectival phrase
- 形容詞節 adjectival clause
「フレーズ(句)」を形容詞の使用ルールに合わせると「形容詞句 adjectival phrase」と呼ばれます。
- 「フレーズ」で名詞を説明する ⇒ 形容詞句
- 補語に「フレーズ」を入れる⇒ 形容詞句(もしくは名詞句)
この仕組みは「文章(節)」でも同じです。
「文章(節)」を形容詞の使用ルールに合わせると「形容詞節 adjectival clause」と呼ばれます。
- 「文章」で名詞を説明する ⇒ 形容詞節
- 補語に「文章」を入れる⇒ 名詞節(✖ 形容詞節)
補語で使う場合は「名詞」と「形容詞」の両方が可能です。
名詞の使用ルールもあわせてご確認お願いします。
このように「フレーズ」や「文章」も形容詞の使用ルールを基準にして文法用語が決定されます。
形容詞の「状態を表す英単語」という参考情報は「句」や「節」のときは一旦忘れてしまうのが良いと思います。
形容詞を英文法の「仕組み」として理解すると、新たな視点で英語が見えると思います。
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