ファイナルファンタジータクティクス獅子戦争で使われている古い英語表現をご紹介しています。
このブログは「続きの記事」になります。
最初の内容から興味のある方は【 Prologue 】からどうぞ。
ファイナルファンタジータクティクス獅子戦争の各章
【 Prologue 】
【 Chapter 1 – The Meager / 持たざる者 】
【 Chapter 2 – The Manipulative and the Subservient / 利用する者される者 】
・この記事です
【 Chapter 3 – The Valiant / 偽らざる者 】
【 Chapter 4 – In the Name of Love / 愛にすべてを 】
古い英語と英単語のご紹介
助動詞 doth
“Knight: Hmph. No sooner speak the devil’s name, than he doth appear.”
『騎士らしき男「フン。噂をすればなんとやらか…。』
三人称単数現在 does の古語表現が doth になります。
この文章自体は「悪魔の話をすると悪魔が現れる」という意味で「噂をすれば影」と同じ意味の諺(ことわざ)です。
倒置になっているので元に戻してみます。
“Speak the devil’s name no sooner than he doth appear.”
比較表現 “no sooner” は「もうこれより時間を短縮するのはムリ!」という意味です。
つまり、どちらが先かわからないぐらいのレベルで「すぐに」ということす。
そこから「間髪入れずに、瞬時に」⇒「~するかしないかのうちに」という意味になります。
さて thou に対しては、二人称の dost をつかいますが doth でもよいようです。
ちなみに be動詞 をつかう場合は thou art です。
語順 have you any idea
“Agrias: Have you any idea what you do?”
『騎士アグリアス「自分が何をしようとしているのか 貴様はわかっているのかッ!?』
今回は古語というわけではありません。
実は、動詞の have を文頭に持ってくるのは現代の英語でも使います。
- Have you no shame?
- 恥というものを知らんのか?
助動詞 do does did を疑問文でつかうのは比較的新しい仕組みなんです。
現在完了の疑問文で have を文頭に持ってきますが、本来はこの形でした。
動詞の have を文頭に持ってきた疑問文は、おそらく堅くは聞こえるはずですが、間違いにはなりません。
副詞 pray
“Mustadio: Pray understand – I cannot tell you. Not yet.”
『機工士ムスタディオ「すまない…。今はまだ話すことができないんだ…。』
副詞として扱われ Pray を命令文で使うことで「丁寧な依頼」にすることができます。
基本の使い方として pray は「祈る」を意味する動詞です。
また prayer は「祈り、祈りをささげる行為」を意味し、「祈る人」ではないので注意してください!
ちなみにカマキリのことを praying mantis といいます。「信者が両手を合わせて祈る姿」を連想させるのでしょう。
動詞 befall
“Delacroix: We will expose Duke Larg’s misdeeds, and ensure that no harm befall you, Princess.”
『ドラクロワ枢機卿「ラーグ公の不正を暴き、オヴェリア様の命が狙われることのないよう手を打ちましょうぞ。』
「~に降りかかる」という意味の動詞で文語表現。
この befall も ensure の後の that 節の中にあり、形も「befalls」になっていません。
それゆえ、まだ起こっていないことを示す動詞の原形を使った仮定法現在(subjunctive present)が使われています。
このような一部の動詞や形容詞からつながる that 節で「仮定法現在」をつかうのは古英語からの仕組みです。
現代でもフランス語はこの仕組みをより明確に持っています。
敬称 Your Eminence
“Mustadio: Thank you, Your Eminence.”
『機工士ムスタディオ「ありがとうございます、猊下。』
“Your/His Eminence” は枢機卿に対する敬称です。
「枢機卿」は英語で Cardinal といい、ローマ・カトリック教会だと教皇に次ぐ地位になります。
ゲーム内ではドラクロワ枢機卿も悪者ですが、三銃士(Three Muskteers)にもリシュリュー枢機卿(Cardinal Richelieu)が悪者として登場します。
ちなみに日本語の「猊下 げいか」は「高い座の下(にこちらがいる)」という意味で、仏教のトップに対する敬称です。
こういった高僧の座るところを「獅子座」といったりします。(もちろん星座ではありません)
お釈迦さまはその威厳などから獅子にたとえられます。
その獅子と同一視される中国の伝説の動物として「狻猊(さんげい)」がおり、この「猊」が由来です。「睨む(にらむ)」という字ではありません。
また、お釈迦様の教えのことを獅子が吠えたように力強く響くことから「獅子吼(ししく)」といったりします。
不規則変化動詞 write – writ -writ
“Gaffgarion: Blood is the price of progress! It is the ink in which history’s pages are writ!”
『剣士ガフガリオン「“犠牲”を支払わない限り、人は前へ進まない!歴史を作ることはできないッ!』
動詞 write(書く)の古い過去分詞です。write – writ -writ
ガフガリオンの英語セリフは「戦争で流れる血は時代が進むための代償だ!その血によって歴史ってのは書かれていくものなンだ!」ぐらいでしょうか。
whelp & aye
“Gaffgarion: You didn’t know? Aye, this little whelp is a son of the great House Beoulve.”
『剣士ガフガリオン「知らなかったのか、アグリアス。そうだ、その小僧の名はラムザ・ベオルブ。あのベオルブ家の一員さ。』
古語で「少年」や「若い男性」を意味する言葉です。
Oxford Dictionary によると “often as a disparaging (軽蔑する) form of address” とのことなので「小僧」の適訳かもしれません。
ちなみに aye も yes の古語で、 nay は no の古語です。“aye aye, sir” の aye です。
敬称 His Excellency
“Delita: His Excellency dispatched me to rescue the princess. And so I did, disguised as one of your own – a sheep in Lion’s clothing. Now I have returned.”
『騎士ディリータ「グリムス男爵の密命により王女を救出するために身分を偽り出兵。任務を果たし、帰還いたしました。』
会話の流れの関係から訳が対応していませんが、日本語だと「閣下」という意味で「主権国家の高官」の尊称として使います。
繰り返しになりますが、二人称の場合は Your Excellency になります。
続きは第3章へ
【 Chapter 3 – The Valiant / 偽らざる者 】