ファイナルファンタジータクティクス獅子戦争で使われている古い英語表現をご紹介しています。
このブログは「続きの記事」になります。
最初の内容から興味のある方は【 Prologue 】からどうぞ。
ファイナルファンタジータクティクス獅子戦争の各章
【 Prologue 】
【 Chapter 1 – The Meager / 持たざる者 】
【 Chapter 2 – The Manipulative and the Subservient / 利用する者される者 】
【 Chapter 3 – The Valiant / 偽らざる者 】
【 Chapter 4 – In the Name of Love / 愛にすべてを 】
・この記事です
古い英語と英単語のご紹介
would that( that 省略可)
“Orlandeau: when you know who your enemies are, but this…ha! Would my good name were our only casualty.”
『オルランドゥ伯「味方が味方の監視をしながらでないと戦えんほどだ。わしの名も地に墜ちたものだな、はっはっはっ。』
文語表現である would that SV の that の省略です。
法助動詞 would は昔は完全な動詞として機能していて、現代英語だと動詞 wish にちかい使い方をします。
そして wish と同じく that 節の中の動詞に「仮定法過去形 subjunctive past」を使います。
実際に接続詞 that のあとが “my good name were” になっていることがポイントです。
動詞の形が「were」になっているので「仮定法過去」の意味になります。
しかし仮定法過去形になると「反事実(counterfactual)など」を意味します。
仮定法(subjunctive mood)の場合は「動詞の形」に注意して下さい。
さて会話の英文の前半部の意味は、そこから前の会話の流れを受けています。
「(以前の戦争は外敵に対する防衛戦だったのに対し、今回は内戦なので)敵味方が明白な時でも(戦は大変なのに)、今回は・・・」
後半の英文の意味はこうなります。
- Would my good name were our only casualty.
- 我が武名に傷がついたことだけが代償であればよいのだが・・・(それだけでは収まっていないだろう)
敬称 His Holiness
“Templar: And now you will die! Not by any order of His Holiness. I do this for Isilud!”
『神殿騎士メリアドール「フューネラル教皇猊下の命令ではなく死んでいった弟のためにあなたを討つッ!!』
現実世界だと His/Your Holiness はローマ教皇(Pope)の敬称になります。あとは Holy Father という場合もあります。
教皇は英語だと「Pope(Papa 父)」で中国では「教宗」と呼ばれます。
ちなみに「教皇」は日本のカトリック教会が長らく使用を希望していた用語で、メディアなどでも「法王」からの変更されることになりました。
ちなみに「法王」は「仏教のトップ」を表す言葉で、長い間「教皇」と「法王」の呼称はどちらがよいか割れていたようです。
ちなみに「天皇・上皇」が仏門に入り、出家すると呼ばれると「法皇」と呼ばれます。
仮定法現在 So be it
“Delita: My choice is made. If it means I must slay each of you to the man, so be it!”
『騎士ディリータ「わかっている! だから、貴様たちを皆殺しにしようとしているんだよ!』
動詞の原形を使った仮定法現在(subjunctive present)です。
古い表現ではあるものの、今でもイディオム的によく使われる表現です。
日本の英文法書ではなぜか「仮定法」を「仮定法過去」と「仮定法過去完了」だけで区別しています。
しかし本来は「仮定法過去 VS 仮定法現在」で区別するのが英語の動詞のシステムです。
この違いは古英語に由来する動詞の形なので、日本の英文法書の解説では理解できません。
さて仮定法過去は「もう起こらなそうなことを想定する動詞形」です。
そのため動詞の仮定法過去形は「反事実・実現しなそうな願望」などに使用します。
一方で、仮定法現在は「起こりそうなことを想定する動詞形」を表現する専用の動詞の形です。
つまり仮定法現在の形は「反事実」でない「これから起こりそう」な想定で使用します。
もともと仮定法は「願望法・祈願法 optative mood」など呼ばれる「想定を表現する形」から派生しています。
つまり、これから事実になるかもしれないことを「想定」する場合は「仮定法現在(動詞の原形)」を使います。
現代英語は「命令法」でも「動詞の原形」と使いますが、たまたま同じ形にまとまりました。
“so be it” が現代で使われる意味は「(ことの是非は別として、そうなるならば)それでいい」という感じです。
歴史的には howbeit とか sobeit(連結して一語) もあります。
今でも比較的よく使われているのは albeit(≒ although it be) です。
昔の英語は語順の決まりがゆるかったので “It be so(それはそのように存在せよ)” と捉えてよいと思います。
シェイクスピアの時代では “Know you not?(Don’t you know?)” とは割とよくあります。
現代英語でもこのような語順のフレーズはよく残っています。
- You are very good at it, and so am I.”
- なかなかうまいじゃないか、そしてわたしも同様だ(負けてはいないぞ)。
- ⇒ わたしも「そう so」なんです
また英文は「皆殺しにせねばらんというのであれば、そうするまで!」ぐらいの感じです。
ちなみに to the man はどう調べてもわかりませんでした。
そこでカナダ人の友達に尋ねたら「確かに文法はすこし変だよね。意味はたぶん to the (last) man だと思う」と教えてもらいました。
なるほど!「最後のひとりまで」ってことですか!さすがは英語ネイティブ!
前置詞 amidst
“Barich: Amidst the coming chaos, who could say how Duke Larg might meet his end?”
『神殿騎士バルク「毒による混乱のおかげでラーグ公を暗殺する方が簡単だろうな。』
前置詞 amid と同じで「~の最中に、~の真ん中に」という意味です。
ただ意味は同じでもニュアンスは文語調になります。
among も同様に amongst という表現があります。
名詞 apothecary
“Zalbaag: Excellency, are you harmed? Someone! Summon an apothecary at once!”
『聖将軍ザルバッグ「閣下、大丈夫ですか!!誰かッ! 薬師を呼べッ!!』
「薬屋」を意味する古語。
ちなみにFFシリーズを通して出てくる「職業」の「アイテム士」や「薬士」は Chemist となっています。
twain
“Larg: My head…it is as though it were split in twain. But I do not think it serious. I just need…some time.”
『ラーグ公「…頭が割れそうだ。胸がムカムカする……。だが、大丈夫だ……。しばらくすれば…、気分もよくなるだろう……。』
「two(2)」の古いスペリング。2は two だと思い込んでるところにこれですから・・・。
ただ two は too や to と発音が同じなので、リスニングは文法や文脈を理解し、よくいう言い回しになれておかないと痛い目を見ます。
- two too many(2つ多すぎる)
- ten to two(2時10分前)
早口言葉でも “I have two fish but I have to fish…” のような出だしの物があります。
そう考えると個人見解ではありますが two は twain でもいいかな?と思います。
far be it from me to do
“Elmdore: But far be it from me to turn away the one Beoulve to grace us with his presence!”
『エルムドア侯爵「貴様もこの墓地で朽ち果てるがいい!』
動詞の原形 be をつかった仮定法現在(subjunctive present)です。
am / are / is は原則「事実」を意味する「直説法 indicative mood」になります。
現代ではイディオム的に使われて “far be it from me to do” 「~することは私の真意ではない」 となります。
「私の真意とは遠い」⇒「(そう見える可能性は大いにあるが)そういう意図ではない」
原文は倒置になっているので語順を戻しますと・・。。
“It be far from me to do ~” となり、仮主語の it と真主語の to do で構成されています。
ただ Google で調べた限りでは “far be it ~” の形でほぼ固定されて使われているようです。
ところで、お分かりのように英語は日本語とかなり違っています。英文は・・・
“Elmdore: But far be it from me to turn away the one Beoulve to grace us with his presence!”
「あの(高貴なる)ベオルブ家の人間が(この戦いに)自ら花を添えようというのだ、この栄誉を無下にすることなど私にできようか(いや、できまい)!」
と、いう感じでしょうか。英語のほうが断然、雰囲気が出ています。
動詞 mislike
“Ramza: I mislike this. There is something familiar – yes. The battle with Cúchulainn, with Belias…”
『剣士ラムザ「……嫌な雰囲気がする。この気配は……、そうだ、キュクレインやベリアスと対峙したときのあれだ……。』
mislike は「dislike キライ」の古い言い方です。
現在完了 my patience is grown thin
“Folmarv: Refuse, and she dies ere the word leaves your lips. Are we of an understanding? My patience is grown thin.”
『神殿騎士ヴォルマルフ「言っておくが、貴様はこの要求を拒絶することはできん…。渡さぬときは妹の命はないと思え。さあ、私の言葉を理解したならさっさと渡してもらおうか…。』
第3章のブログ記事でご紹介した “I am come.” と同じで、自動詞の完了形は「be動詞+過去分詞」で表現します。
grow は SVC の第二文型をとりますが「目的語がない」ので「自動詞」扱いになります(厳密には「不完全自動詞」と呼ばれます)。
今回の意味だと現代では “My patience has grown thin.“ が一般的です。
文法構造の解説はこちらのブログをどうぞ。
Had I but
“Ultima: Had I but…more power…”
『聖天使アルテマ「モット……チカラヲ………』
スクリプト全体を通してよくみる 副詞 but を only と同じように使うものです。
“Had I” の部分は仮定法過去(subjunctive past)です。
倒置を元に戻すと “If I had but (≒ only) more power.” になります。
語順はともかく、意味としては現代でも使うように “If only ~” で「~であったならば・・・」という後悔・無念の表現だと思います。
倒置に関しては、現代でも似たような表現は残っていて、「have + 過去分詞のペア」で if の省略の時に運用するのが通例です。
- (倒置前) If I had done/been ~
- (倒置後) Had I done/been ~
これはラスボスの最後のセリフです。これでエンディングへ!
オリジナルとリメイクの英訳の比較もおもしろい
日本語版のスクリプトには変化がありませんが、英語版はかなり変わっています。
この方のブログ(英語)では Chapter 1 だけですが、2つのスクリプトを比較してコメントを書いています。
なかなかスルドイ指摘があって笑ってしまうものもたくさんあります。
英語を読むのが苦にならない方は、読まれてみるのはいかがでしょうか?
難しい英文を読むと成長できる
ゲームでも聖書でも難しい英文を読むと、意表を突かれてしまいます。
でもその分だけ、文構造や品詞に対して感性が研ぎ澄まされていきます。
日本の英語参考書だとイディオム扱いになっているものでも、原理を見抜くことにもつながります。