英語の「過去分詞」に戸惑ったことはないでしょうか?
- be + 過去分詞 ⇒ 受動態
- have + 過去分詞 ⇒ 現在完了
よくみるのはこの2パターンですが「過去分詞」のナゾは3点あります。
- 「過去分詞」と呼ばれるのに「過去時制」と関係がない!
- 「受動態」と「現在完了」では意味が全然違う!
- 「現在完了」は「過去時制」との違いがわかりにくい!
おそらく英文法の中でも、一番、本質をとらえにくいのが「過去分詞」だと思います。
わかりにくい過去分詞でも「have のあり・なし」を分けることで一気に本質が見えてきます。
過去分詞の使い方は「基本」と「例外」の2つ
まず過去分詞の使いこなすための重要なポイントがあります。
これは実はカンタンなことで「現在完了」を「例外ルール」として理解するだけです。
もともと英語の「分詞」には「相」と「態」という2つの機能があります。
- 相 アスペクト Aspect:行動の進行度を表す用語
- 態 ヴォイス Voice:行動が「する / される」を区別する用語
この2つの機能が過去分詞そして現在分詞に発動しているんです。
- 過去分詞の2つの機能
- 完了相 perfect aspect
- 行動がすでに実現している
- 受動態 passive voice
- 主語と行動の関係が「~される」を意味する
- 完了相 perfect aspect
- 現在分詞の2つの機能
- 進行相 progressive
- 行動がまだ進行している
- 能動態 active voice
- 主語と行動の関係が「~する」を意味する
- 進行相 progressive
また英語の「分詞 participle」は「動詞の形容詞変化形」という意味です。
- 基本ルール:be + 過去分詞(be動詞+形容詞)
- It is used.(使用された)
- a used car(使用された ≒ 中古の)
ところが have + 過去分詞の場合は「まとめて動詞」としてセットで扱います。
- 例外ルール:have + 過去分詞(まとめて動詞)
- I have used it.(使用した)
このように have があると「受動態」を発動しない使い方ができます。
一般的には「現在完了」と習いますが、重要なポイントは「過去分詞に受動態が発動しない」ことです。
この形は「現在形 have」を「過去形 had」に変化させて「過去時制」を発動できます。
- I have used it.(現在時制+完了相*受動態なし)
- I had used it.(過去時制+完了相*受動態なし)
実はこのようなことをするのは現代英語の特徴でヘンてこな使い方なんです。
過去分詞の使用法を見切るのに必要な知識は「have のあり・なし」だけです。
- have なし(単独用法)
- ⇒ 受動態・完了相の形容詞
- have あり(連携用法)
- ⇒ 完了相の動詞(受動態から能動態に切り替わる)
過去分詞はこの2つのパターンで運用が大きく変わります。
① have なし(単独用法)
- My job is done.
- 私の仕事は = 終わらせられた(完了した)
- 意味:受動態と完了相
- 品詞:形容詞
このパターンは現在分詞などと同じく基本ルールで機能します。
そのため「動詞が変化した形容詞」と理解すればOKです。
② have あり(連携用法)
- I have done my job.
- 私は 終わらせた 自分の仕事を
- 意味:完了相のみ(受動態は消える)
- 品詞:have とペアで1つの「動詞」
このパターンは例外ルールです。
昔の英語ではもうすこしまともな文法でした。
ヘンテコな「have+過去分詞」は、こちらで英語の歴史を踏まえて解説しています。
では、ここからは「基本ルールの過去分詞(have なし)」に話を進めます。
過去分詞は「完了相」と「受動態」の形容詞
過去分詞で重要なポイントは4点あります。
- 時制:なし / 該当しない(Not Applicable)
- 品詞:形容詞(Adjective)
- 相:完了相(Perfect Aspect)
- 態:受動態(Passive Voice)
過去分詞は「過去」とは関係ありません。
過去分詞は誤解を招きやすい名前をしています。
過去分詞は「動詞の過去形」と同じ形をしていることからついた名称です。
次のブログでは「過去分詞」の用語の由来などを簡潔に説明しています。
過去分詞とおなじく現在分詞の用語の由来もこちらで解説しています。
「過去」と「完了」の違いは「相 aspect」にある
ではここから「過去分詞」の基本ルールを本格的に解説していきます。
過去分詞の機能は「完了 perfect」です。
英文法における「過去」と「完了」は一見よくにています。
- 過去 Past: 過去に起こったこと
- 完了 Perfect:もうすでに実現したこと
この2つは似ているようにみえますが、英語ではきっちりと区別されます。
過去と完了の区別
- 過去 Past ⇒「時制 tense」のカテゴリー
- 完了 Perfect ⇒「相 aspect」のカテゴリー
日本であまりみない「相 aspect」は「行動の進行度(0~100%)」を表す文法用語です。
では「時制」と「相」の違いを確認します。
時制 tense
時制とは「行動がいつ起こるのか?」を表す用語です。
そして時制は「動詞の形を変化させる」ことで表現します。
英語の時制は2つだけです
- 過去時制 past tense
- 現在時制 present tense
- 未来時制なし
ここで注意ですが、厳密には英語に未来時制は存在しません。
英語はドイツ語などと同じくゲルマン語グループに入り、未来形の動詞変化がありません。
未来時制をつくる形が英語やドイツには無いので「未来時制」は存在しません。
詳しく英語に未来時制が存在しない理由を知りたい方はこちらのブログをどうぞ。
相 aspect
あまり日本の英文法では知られていませんが、昔から存在する文法用語です。
相とは「行動の進行度(0~100%)」を表します。
英語で必要になるのは次の3種類です。
- 未然相 prospective:やる予定(まだやっていない)
- 進行相 progressive:やっている(まだおわっていない)
- 完了相 perfect:やりおえている(いつ終えたかは関係ない)
これを図で表現してみます。
英文法でよく見る「○○形」の正体は「時制+相」の組み合わせです。
- 現在時制+進行相
- She is doing it.
- 過去時制+進行相
- She was doing it.
- 現在時制+完了相
- He is gone.
- He has done it.
- 過去時制+完了相
- He was gone.
- He had done it.
have + 過去分詞は「例外ルール」ですが一般的な用法なので紹介します。
不定詞 to do が作る未然相はちょっと複雑な構造をしています。
詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
英語は「時制 tense」+「相 aspect」の組みあわせで、いろんな文を表現できます。
ところが日本の英語教育では「相 aspect 」はあまり目にしません。
なぜなら「現在進行形」や「未来完了形」のように「すべて時制にまとめる」という解釈をとるからです。
この「未来も完了も含めた時制」を「複合時制 composite tense」といいます。
英語を習いはじめの人には複合時制のほうがわかりやすいかもしれません、
英語をより正確に理解したい場合は「時制(動詞で表す)」と「相(分詞で表す)と考えるとより仕組みがわかりやすいです。
このような動詞を変化させていろいろな機能を発動する仕組みを「動詞パラダイム verbal paradigm」といいます。
英語の動詞パラダイムの仕組みをカンペキに理解したい方はこちらをどうぞ。
英語で「受動態」を作れるのは過去分詞だけ
過去分詞は「受動態」をもちます。
では「態 voice」をざっくり解説します。
・態(voice)とは何か?
「主語(S)と目的語(O)の関係が『する』のか『される』のかを区別する文法用語」
日本語の能動態・受動態
- 能動態(する): 私は 書いた この小説を。
- 受動態(される):この小説は 書かれた 私によって。
英語の能動態・受動態
- 能動態(する): I wrote this novel.
- 受動態(される):This novel was written (by me).
態は「主語 ⇔ 目的語」の「する vs される」という関係性を示します。
英語の「能動態」はすべての動詞の初期設定になっています。
しかし「受動態」は目的語が主語に置き換わることをしまします。
つまり受動態を発動させるにはまず「目的語」が発動条件になるんです。
この目的語をとることができる動詞を「他動詞」といいます。
そして目的語をとることができない動詞を「自動詞」といいます。
英語の「受動態」は「他動詞の過去分詞」だけにセットされています。
つまり受動態は「目的語」を持たない自動詞の過去分詞には発動できません。
英文法の「態 Voice」から確認されたい方はこちらをどうぞ。
ヨーロッパ系言語の「過去分詞」はみんな似ている
過去分詞が「受動態 passive voice」を持つ理由はどこから来たのでしょうか?
これまた歴史的に「過去分詞」に昔からセットされているんです。
英語やラテン語、ヒンズー語、ペルシャ語を含む言語のグループにインド・ヨーロッパ語族(Indo-European Languages)があります。
このインド・ヨーロッパ語族の「過去分詞」は「受動態 passive voice」を発動できるんです。
英語だけでなくラテン語でも同じなので、図を見ていきましょう。
英語の過去分詞には「完了相」と「受動態」がセットされています。
ラテン語でも同じように完了分詞に「完了相」と「受動態」がセットされています。
分詞には「相 aspect」と「態 voice」の両方がセットされています。
- 現在分詞:能動態 + 進行相(doing / speaking など)
- 過去分詞:受動態 + 完了相(done / spoken など)
ラテン語などと違って、英語は「未来分詞」の代わりに「不定詞(to do)」を使います。
分詞を覚えるときは、ついでに「未然相 prospective aspect」も覚えておくと便利です。
- 不定詞(未来分詞):能動態 + 未然相(to do / to speak など)
では「過去分詞」の例文をみていきましょう。
【 現在時制 + 受動態・完了相 】
- The project is completed.
- この計画は(現時点で)完成させられた。
【 過去時制 + 受動態・完了相 】
- The project was completed.
- この計画は(過去の時点で)完成させられた。
どちらも時制と関係なく「相+態」を表現しています。
ここが「形容詞」と「過去分詞」が大きく違うところです。
次に過去分詞を文法的に正しく使うため「形容詞」の 「使用ルール」を再確認します。
過去分詞は形容詞と同じように使う
英文法用語の「分詞 participle」の意味は「動詞の形容詞変化形」です。
それゆえ過去分詞の使用ルールは「形容詞」に合わせて使います。
形容詞の使用ルールは全部で4パターンあります。
① 名詞を説明する(限定用法 Attributive)
- 名詞の前から(前置修飾 Pre-positional)
- 名詞の後ろから(後置修飾 Post-positional)
② 補語 C になる(叙述用法 Predicative)
- SVC(第2文型の補語 Complement)
- SVOC(第5文型の補語 Complement)
では図を見て確認します。
形容詞の使用ルールを詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
このように「過去分詞」も基本は4パターンで運用することになります。
過去分詞にはもう少し広い役割がありますが、基本は形容詞と同じ使い方でOKです。
過去分詞で「名詞を説明」する(限定用法)
まずは「名詞を説明する(限定用法)」で過去分詞と形容詞を並べて例文をみていきます。
名詞を前から説明
- ① He is an innocent man.(形容詞 innocent)
- ① 彼は = 一人の無実の男性
- ② He is a convicted man.(過去分詞 convicted)
- ② 彼は = 一人の有罪とされた男性
名詞を後ろから説明
- ③ She attacked someone innocent.(形容詞 innocent)
- ③ 彼女は 攻撃した 誰かを ← 無実の
- ④ She defended someone convicted.(過去分詞 convicted)
- ④ 彼女は 擁護した 誰かを ← 有罪とされた
注意として「後ろから説明(後置修飾)」は日本語にないので感覚がつかみにくいです。
過去分詞を「補語 C」に入れる(叙述用法)
では次に「補語 C」でつかうパターンをみていきましょう。
【 SVC 第2文型 】
- ① He is guilty.(形容詞 guilty)
- ① 彼は = 有罪
- ② He is arrested.(過去分詞 arrested)
- ② 彼は = 逮捕された
【 SVOC 第5文型 】
- ③ I found him guilty.(形容詞 guilty)
- ③ 私は 分かった 彼が 有罪と
- ④ I found him arrested.(過去分詞 arrested)
- ④ 私は 分かった 彼が 逮捕されたと
形容詞とまったく同じように過去分詞も使えます。
形容詞の使用ルールに合わせて過去分詞を使用すればOKです。
「受動態」と「完了相」のどちらが重要か?
過去分詞は「受動態」と「完了相」の二つの意味を持っています。
過去分詞を理解する際は、どちらかだけに限定できるわけではありません。
実際に日本語の「~された」も同じ感じです。
- (誰かに)~された(受動態)
- (もうすでに)~された(完了相)
実はこの2つはきっちり区別する文法用語があります。
- 動作受動 dynamic passive
- 受動態の動作を中心とする(受動態メイン)
- 状態受動 stative passive
- 行動の完了後の状態を中心とする(完了相メイン)
では例文を見ていきましょう。
- 動作受動(受動態が中心)
- The task is completed by him.
- そのタスクは = 完成された 彼によって
- 状態受動(完了相が中心)
- The task is completed by its due date.
- そのタスクは = 完成された 期限の日までに
過去分詞を見ると「完了相 & 受動態」の2つの機能が自然に含まれていますよね?
ドイツ語やスペイン語の場合は「動作受動」と「状態受動」を文法上区別できます。
しかし、実際の英語ではその区別はあいまいで文脈依存です。
日本の文法書の解釈では「be動詞 + 過去分詞は受身!」と意味を分離しているものが多いです。
でもそんなことは不可能で、片方の意味だけ切りとるよりも文脈をよくみる必要があります。
では実例として、先ほどの2つの例文を結合してみます。
- 完了相 & 受動態の両方を発動
- The task is completed by him by its due date.
- そのタスクは = 完成された 彼により 期限の日までに。」
さてこの文章では「受動態・完了相」どちらが優先なのでしょうか?
もちろん「受動態&完了相」の同時発動が一番適切です。
英語の場合「受動態」と「完了相」のどちらが主軸になるかは、過去分詞以外の表現に頼っています。
ここでは和訳を「~された」を基本として和訳しています。
もちろん受動態の意味だけをとらえて「~される」と訳したほうがいい場合もあります。
そのあたりは文脈や状況にあわせて適切に対応してください。
「態 voice」と「相 aspect」は過去分詞だけでなく不定詞や現在分詞もセットされています。
下のまとめの解説図が参考になるかと思います。
過去分詞は「完了相」と「受動態」をもつ形容詞です。
いつも両方の意味を把握するようにしておいてください。
自動詞の過去分詞は「完了相」のみ発動
受動態をつくれるのは他動詞の過去分詞だけです。
最後に「自動詞の過去分詞」の例文を少し確認します。
- 自動詞の過去分詞の機能
- 「受動態」を発動できない
- 「完了相」を発動できる
では例文をみていきます。
- The bridge is fallen.
- 橋は落ちてしまった。
最近の英語では「自動詞の過去分詞」は完全に形容詞になってきています。
そのため「完了の動作」にポイント当てるときは「have+過去分詞」を使います
- He is gone.
- 彼はどこかにいってしまった
- 今ここにいない状態をメインで表現する
- 彼はどこかにいってしまった
- He has gone.
- 彼はどこかにいってしまった
- 今ここからいなくなった動作をメインで表現する
どちらにせよ自動詞の過去分詞は受動態は関係ありません。
そのため「受動態」を切り離して「完了相の形容詞」として理解すれば機能します。
今回はカンタンな文ばかりですが、受動態の文法はトリッキーなものもが多いです。
次のブログではいろいろな受動態の文法構造を解説しています。
英語の「have + 過去分詞」が「現在完了」となるのは「例外ルール」でした。
次のブログで「have + 過去分詞」がうまれた理由と「現在完了」の正体を解説しています。
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