英文法の「態 ヴォイス Voice」能動態と受動態を解説

Phrase-verbal-paradigm-voice 英文法の仕組み

英語は「動詞」をつかって行動を表します。

しかし「動詞」だけでは単純なことしか表現できません。

そこで英語は「動詞」だけでなく「法助動詞」と「準動詞」を組み合わせていろいろな意味を示します。

法助動詞

一般的に助動詞と呼ばれる will や can などは正確には「法助動詞 modal (auxiliary) verb」といいます。

  • will / can / may / shall / must(現在形)
  • would / could / should / might(過去形)

「法」が入っている理由は「話し手の認識」を意味する文法用語である「法 mood」を発動する機能に由来します。

準動詞(動詞の変化形)

英語には動詞を変化させて使うパターンが存在します。

この「動詞の変化形」を「準動詞 nonfinite verb」といいます。

英語の準動詞(動詞の変化形)は次の3種類です。

  • to do(不定詞)
  • doing(動詞のING形)
  • done(過去分詞)

「準動詞」の一番大切な機能は「相 Aspect」という「行動の進行度」を表すことです。

そして「態 Voice」という「行動がする / される」を切り替える表現も担当します。

なぜなら英語では、準動詞である過去分詞だけが「受動態」という「行動が~される(受け身)」を意味する機能を持つからです。

それゆえ「準動詞」は「相 aspect」と「態 voice」の2つ種類の機能を担当します。

そして「動詞法助動詞準動詞」を組み合わせれば、いろいろな意味を表すことができます。

  • I will have been doing it.
  • We might be going to have to do it.
  • It can be being moved.
  • You would have been gone.
  • This should have been done sooner.

この「動詞とその仲間たち」のチームプレーの仕組みやシステムのことを「動詞パラダイム」といいます。

動詞パラダイム Verbal Paradigm

英語の「動詞パラダイム」は動詞法助動詞準動詞(動詞の変化形)を連携させる仕組みです。

動詞パラダイムで表現できる内容は次の4つです。

  • 時制 Tense行動の起きる時を表す
  • 法 Mood話し手の認識を表す
  • 相 Aspect行動の進行度を表す
  • 態 Voice行動の「する / される」を区別を表す

では、英語の動詞パラダイムに関連する文法用語をみていきます。

  • 時制現在時制過去時制(未来時制なし)
  • 直説命令仮定助動詞
  • 未然進行完了
  • 能動受動

動詞パラダイムを理解することで英文法の可能性を最大まで引き出すことができます。

では英文法用語「態 ヴォイス Voice 」を詳しく解説していきます。

英文法用語の「態 Voice」の意味とは?

受動態は「過去分詞」のもつ機能の一部です。

この「受動態」を発動させるには「能動態」を知らなければなりません。

英文法の用語である「態(たい)」は英語で「voice ヴォイス」と言います。

文法用語で「態 voice」は「声」とは無関係なのでご注意ください。

わかりにくいのでカンタンにまとめてみます。

「態」とは動詞が「するのか?」それとも「されるのか?」を区別する用語

つまり、次のような理解ができます。

  • ~する(能動態)⇒ ~される(受動態)
  • ~させる(能動態)⇒ ~させられる(受動態)

日本語の受動態はカンタンですが、英語の例文でみていきます。

英語では目的語を主語にした構造を「受動態」と言います。

  • 能動態(S は ~する O を)
  • 受動態(O は ~される S によって)

そして英語では「受動態」は過去分詞だけがもつ機能です。

それゆえ過去分詞を使用して「受動態」を発動させます。

【 日本語 】

  • 能動態(する): 私は 書いた この小説を。
  • 受動態(される):この小説は 書かれた 私によって。

【 英語 】

  • 能動態(する): I wrote this novel.
  • 受動態(される):This novel was written (by me). 

過去分詞をつかう受動態では「be動詞+過去分詞」が一般的です。

これは過去分詞が「形容詞」に変化した動詞であることが理由です。

過去分詞の意味をまず理解したい方まずはこちらをご覧ください。

ではここから英語の「態」にさらに踏み込んでいきます。

「目的語」があるから「能動態」が生まれる

ほんとうは英語の受動態は「する ⇒ される」という理解だけではダメなんです。

英語の場合は、受動態にできる動詞は「能動態 Active Voice」にできる動詞である必要があります。

では英語 Wikipedia から「能動態 Active Voice」を引用します。 

“(Active voice) is the unmarked voice for clauses featuring a transitive verb in nominative–accusative languages, including English and most other Indo-European languages.”

『(能動態)は、英語や他のほとんどのインド・ヨーロッパ語族を含む対格言語の他動詞をもつ文章の通常の形の「態」のことです。』

Active_voice – Wikipedia

この他動詞というのは「目的語」をとる動詞のことです。

つまり「目的語」をとる「SVO」の文型が「能動態」ということなんです。

【 能動態 Active Voice 】 

他動詞が目的語をとる機能のこと

つまり「能動態」は他動詞にしか発動しないのです。

「受動態」をつくるときも「能動態」が基準になります。

ですので「能動態になる / ならない」の2パターンを区別することが大切です。

他動詞は「能動態」そして自動詞は「態なし」

この「目的語のあり / なし」で動詞を区別する用語があります。

  • 自動詞(Intransitive Verb):目的語が取れない動詞
  • 他動詞(Transitive Verb):目的語が取れる動詞 

英語の動詞は5パターンあります。いわゆる五文型です。

  • ① SV ⇒ 目的語なし ⇒ 態なし
  • ② SVC ⇒ 目的語なし ⇒ 態なし
  • ③ SVO ⇒ 目的語あり ⇒「能動態」
  • ④ SVOO ⇒ 目的語あり ⇒「能動態」
  • ⑤ SVOC ⇒ 目的語あり ⇒「能動態」 

五文型を「自動詞」と「他動詞」にわけて区別してみます。

  • 自動詞:目的語が取れない動詞( SV / SVC )
  • 他動詞:目的語が取れる動詞( SVO / SVOO / SVOC )
自動詞と他動詞:目的語・5文型・過去分詞の受動態動態
自動詞と他動詞:目的語・5文型・過去分詞の受動態

ここで注意なのですが「態」は動詞ごとに決まってセットされているわけではありません。

動詞が目的語をとる場合だけ「態」が発動します。

多くの動詞は2つ以上の文型をとることができるので、臨機応変に対応が必要です。

では例文をみていきましょう。

【 動詞 walk 】

  • I walk here. 
  • 「私は 歩く ここで」
  • (第1文型 SV:態なし) 
  • I walk my dog here. 
  • 「私は 散歩させる 私のイヌを ここで」
  • (第3文型 SVO:能動態)

【 動詞 get 】

  • She got busy. 
  • 「彼女は 得た 忙しい状態 ≒ 彼女は忙しくなった」
  • (第2文型 SVC:態なし)
  • She got an idea.
  • 「彼女は 得た 一つのアイデアを ≒ 彼女には考えが浮かんだ)
  • (第3文型 SVO:能動態)

このように「目的語」があるからこそ「能動態」になります。 

さらに「能動態」だからこそ「受動態」にできるんです。

逆の言い方をするとこうなります。

  • 目的語のない動詞は能動態にできません
  • 能動態にならない動詞は受動態にできません

そもそも「能動態」でないと「受動態」にはできない

つまり「能動態 Active Voice」が存在するからこそ「受動態 Passive Voice」を作ることができるんです。

【 能動態 】 

・I make curry.

 【 受動態 】

・Curry is made (by  me).

能動態をつくっているのは動詞 make ではありません。

能動態をつくるのは名詞 curry の「目的語 object」です。

なぜなら目的語がなければ、「能動 ⇔ 受動」の関係そのものを作れないからです。

英語では「受動態」は過去分詞にしかセットされていません。

それゆえ「受動態」と「過去分詞」は切りなせないんです。

しかし「過去分詞」は「受動態」にくわえて「完了相」を発動できます。

【 相 Aspect 】

  • 行動の進行度(0~100%)を示す用語
  • 英語の「相」は3種類

【 相(アスペクト)の種類 】

  • ① 未然 Prospective(0%)
  • ② 進行 Progressive(1~99%)
  • ③ 完了 Perfect(100%)

動詞の変化形(non-finite verbs 準動詞)が担当

  • ① 未然相:to do(不定詞)
  • ② 進行相:doing(動詞のING形)
  • ③ 完了相:done(過去分詞)

過去分詞は「完了相」と「受動態」を同時に発動できるので確認していきます。

英語の不定詞・現在分詞・過去分詞の「相 aspect」と「態 voice」
英語の不定詞・現在分詞・過去分詞の「相 aspect」と「態 voice」

「相 Aspect」と「態」が同時に発動するのはラテン語も同じです。

「不定詞」の代わりにラテン語には「未来分詞」という表現があります。

文法用語の「不定詞 infinitive」とは「動詞の原形で使う品詞」という意味です。

つまり「未来分詞」とは「未然相専用の分詞がある」という意味です。

ラテン語の未来分詞・現在分詞・完了分詞の「相 aspect」と「態 voice」
ラテン語の未来分詞・現在分詞・完了分詞の「相 aspect」と「態 voice」

分詞には「相 aspect」「態 voice」の両方がセットされています。

  • 現在分詞:能動態 + 進行相(doing / speaking など)
  • 過去分詞:受動態 + 完了相(done / spoken など)

では「過去分詞」をつかった「受動態」と「完了相」の例文をみていきましょう。

【 現在時制 + 受動態・完了相 】

  • The project is completed.
  • 「この計画は(現時点で)完成させられた」

【 過去時制 + 受動態・完了相 】

  •  The project was completed.
  • 「この計画は(過去の時点で)完成させられた」

どちらも時制と関係なく「相+態」を表現しています。

過去分詞をみるときは「相」と「態」の両方を意識してください。

自動詞の過去分詞には「態 Voice」は発動しない

最後に「受動態」が発動しない「過去分詞」を見ていきます。

英語の過去分詞の「態」
  • 「能動態」をもたない動詞の過去分詞は「受動態」を発動できない
  • 「能動態」をもつ動詞の過去分詞は「受動態」を発動できる

どのように考えればよいか確認します。

まず「能動態をとる動詞」を区別します。

  • 自動詞(intransitive verb)・・・目的語をとらない動詞(態なし)
  • 他動詞(transitive verb)・・・目的語をとる動詞(能動態あり)
自動詞の文型(態なし)
  • 第1文型(SV) “Adam lives in a garden.” 
  • 第2文型(SVC)”Benjamin is happy.”
他動詞の文型(能動態あり)
  • 第3文型(SVO)”Chris saved people.” 
  • 第4文型(SVOO)”David gave him a stone.” 
  • 第5文型(SVOC) “Eve made him angry.”

ここから・・・

  • 自動詞 ⇒ 能動態をつくれない!
  • 他動詞 ⇒ 能動態をつくれる!

なので・・・

  • 自動詞の過去分詞・・・「完了相」のみ発動!
  • 他動詞の過去分詞・・・「完了相」と「受動態」が発動!

他動詞の過去分詞は「受動態」が優先されて使われる場合もたくさんあります。

ですが「完了相」が完全に消えると言える理由はありません。

【 過去分詞の理解 】

完了相(デフォルト)受動態(オプション)

この2つを状況に応じて「片方のみ / 両方」と使い分ける感じです。

このような理解でちょうどよいかと思います。

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