英語に未来時制はない?法助動詞 will が未来表現になる理由を解説

英語には「未来形」と「未来時制」という文法用語があります。

一般的に「未来形」と呼ばれるものは、次の2つの形で表現されます。

① 助動詞 will

  • We will go there again.
  • 我々はもう一度そこにいくつもりだ。

② be going to

  • They are going to come here again.
  • あの連中、もう1回ここにやってくるだろう。

次に「未来時制」にでてくる「時制 tense」をみていきます。

よく見るのはこの3種類の時制だと思います。 

  • 現在時制 present tense
  • 過去時制 past tense
  • 未来時制 future tense

では「未来形」と「未来時制」の違いはご存じですか?

おそらくあいまいなケースがほとんどだと思われます。

ですがご心配には及びません!英語を学ぶのに「未来形」も「未来時制」も全く覚えなくてOKです。

英語には「未来形」も「未来時制」も存在しない

英語には「未来形」も「未来時制」も存在しません。

では英語の Wikipedia の「Future tense(未来時制)」の引用をみていきましょう。

“English does not have an inflectional future tense, though it has a variety of grammatical and lexical means for expressing future-related meanings. These include modal auxiliaries such as will and shall as well as the futurate present tense.”

『英語には未来時制を表す形が存在しません、とはいえ未来に関連することを表現したい場合、文法的な方法でも語彙的な方法でも様々なアプローチが取れます。これらのアプローチには will や shall のような法助動詞(modal auxiliaries)と使うことや、現在時制で未来を示すことが含まれます。』

*grammatical:(言葉の意味というより)文を構成する機能(例)be going to

*lexical:言葉を見れば明確に意味がわかる(例)will shall など

Future tense – Wikipedia

英語の Wikipedia に「未来時制は存在しない」と書いてあります。

さらに英語と同じゲルマン語(Germanic Languages)の仲間であるドイツ語にもオランダ語にも「未来形」や「未来時制」はありません

The Germanic languages (which include English) have present (non-past) and past tenses formed morphologically, with future and other additional forms made using auxiliaries.

ゲルマン語(英語を含む)には、動詞の形を変化させて表す現在時制(非過去)と過去時制があります。そして未来やさらに別の形などは助動詞を使用することで表します。』

Grammatical tense – Wikipedia

英語 Wikipedia の「future tense 未来時制」と「Grammatical tense 時制(文法)」の2つのページは同じことを言っています。

一方で日本語の英文法には「未来形」や「未来時制」がそこら中に出てきます。 

なぜそうなるかというと「未来形」や「未来時制」はラテン語文法に存在しているからです。

これはラテン語だけでなくフランス語、イタリア語、スペイン語などロマンス語と呼ばれるグループも同じです。

The Romance languages (descendants of Latin) have past, present and future morphological tenses, with additional aspectual distinction in the past.

ロマンス諸語(ラテン語を先祖とする言語)には、動詞の形を変えて表す過去時制、現在時制、未来時制が存在します。そして過去時制には「(完了、未完了などの)相 アスペクト」によるさらなる分類が存在します。』

Grammatical tense – Wikipedia

ラテン語はローマの共通語だったため学術用語や法律用語に今でも使用されています。

歴史上、そのラテン語の文法用語を翻訳して英文法用語をつくったため、ラテン語をベースに英文法が解釈されていた経緯があります

つまり英文法用語はラテン語から借りた用語が多く使用されており、その一つが「未来時制」なんです。

未来時制の存在しないゲルマン語である英語に「未来時制」を押し付けた文法解釈をそのまま多くの日本の英文書は使っているというわけです。

そのズレを修正するため英語(とゲルマン語)では非過去 non-past」を「現在」のより的確な時制表現として使おうとしています。

ただこのようなズレが一段とひどくなっている原因は日本語の英文法用語の「形」だと考えています。

では「形」をつかった文法用語の比較を見ていきましょう。

  • 進行 progressive (form)
  • 完了 perfect (form)
  • 未来 future (form)

これら英語の表現には「形」に相当する言葉はなくてもかまいません。

もちろん英語で 〇〇 form と表記するケースもありますが、日本の文法書と比べると圧倒的に少ないです。

なぜなら「進行」は「現在分詞」、そして「完了」は「過去分詞」で表現するため特別な形と考える必要が無いからです。

また英語の場合 future も未来形ではありません。

なぜなら英語の動詞にどう考えたって未来形が存在しないからです。

日本語の英文法の「〇〇形」は全体的な整合性もなく使われているので、とんでもないことになっています。

気になる方はこちらでご確認ください。

ここから文法用語の「形」の意味を明らかにしつつ「未来」の本質に迫っていきます。

英語の英文法では「形 form」が重要なら「〇〇形」は意味を持つ

日本語の英文法用語の「形」が英語に存在しないケースを見てきました。

しかし英語の英文法の「形 form」にはちゃんと意味があります。

英単語の「形が変わる場合」には「形 form」が使われます。

まず名詞の「形 form」についてみていきます。

  • 単数 singular form: a pen
  • 複数 plural form: pens

これは「動詞の形 verb form」にも適応されるので「be動詞」を例に挙げます。

  • am are is(現在 present form
  • was were(過去 past form
  • be(原 base form

名詞の「形 カタチ」や動詞の「形 カタチ」を識別する場合に「形 form」がちゃんと意味を持ちます。

英語の英文法用語では「形 form」が意図されて使われています。

原則として「時制 tense」は動詞の「形 form」で表す

では次に「形 form」から「時制 tense」に話を進めます。

英語の Wikipedia から「Grammatical tense(文法用語の時制)」を引用します。

“In grammar, tense is a category that expresses time reference. Tenses are usually manifested by the use of specific forms of verbs, particularly in their conjugation patterns.”

時制とは(動詞が示す「行動」の内容が)いつのことなのかを表現できる文法上のカテゴリーです。 通常、時制は動詞のもつ変化形のパターンの中から特定の形の使用することよって明示されます。』

Grammatical tense – Wikipedia

英文法では「時制」は対応する「動詞の形」で表現します。

ではゲルマン語グループの英語のケースを見ていきます。

  • 動詞の現在形 ⇒ 現在時制(present tense) 
  • 動詞の過去形 ⇒ 過去時制(past tense)
  • 動詞の原形 ⇒ 時制なし(tenseless)

ここで注意なのが動詞の「原形 base form」は「時制と無関係(tenseless)」という使い方をします。

ですので「原形」で「時制」を表現することはできません。

さきほどの「be動詞」を例にとります。

  • am / are / is:現在時制
  • was / were:過去時制
  • be:時制なし(tenseless)

では「現在」と「過去」を表す例文をみながら「形」と「時制」の確認です。

現在時制:動詞 ⇒ 現在形

  • I am a student. 
  • 私は(現在=)学生
  • ≒ 私は学生です
  • I know the answer.
  • 私は 知っています その答えを

過去時制:動詞 ⇒ 過去形

  • I was a student. 
  • 私は(過去=)学生
  • ≒ 私は学生でした  
  • I knew the answer 
  • 私は 知っていた その答えを

このように「動詞の形 verb form」は「時制 tense」とリンクしています。

英語の「時制 tense」は「話の内容」ではなく「動詞の形」で決まってしまうんです。

英語の動詞は「未来形」に変化しないので「未来時制」も存在しない

それでは肝心の「未来形」および「未来時制」です。

それではよくみる「過去・現在・未来」の3パターンを並べてみましょう。  

  • ① Zack knows the answer. (現在)
  • ② Yusuf knew the answer.(過去)
  • ③ Xander will know the answer. (未来?
  • ④ Victor is going to know the answer. (未来?

③④のどちらの動詞も「未来形」に変化していません。

「未来形」の動詞の変化が存在しないので「未来時制」は存在しないことになります。

ではここから「英語の未来表現」の方法についてみていきます。

ブログの冒頭の英語の「Wikipedia」からの引用を再確認します。

“These include modal auxiliaries such as will and shall as well as the futurate present tense.”

『これらの(未来を表現する方法)には “will” や shall のような法助動詞(modal auxiliaries)と使うことや、現在時制で未来を示すことが含まれます。』

Future tense – Wikipedia

まとめるとこうなります。

英語の未来表現の方法

  1. 法助動詞 will と shall をつかう
  2. 未来を表現できる現在時制をつかう

ここで「法助動詞 modal auxiliary (verb)」という用語がでてきました。

よく「助動詞 auxiliary verb」とよばれている will や can などはより正確には「法助動詞」といいます。

これは文法用語の「法 mood」を発動する機能に由来します。

英文法の「法 mood」は「未来表現」に必要になるので「助動詞」を詳しく解説していきます。

助動詞には「法助動詞」と「第一助動詞」の2種類ある

英語の「助動詞 auxiliary verb」には役割の違う2種類の「助動詞」が存在します。

① 法助動詞 modal verb

(例)will, would, can, could, must など

第一助動詞 primary verb

(例)do, have, be動詞 など

英文法用語の「助動詞」は別名で「helping verb」とも呼ばれたり、いろんな言い方があります。

auxiliary 補助的な」という用語が中に入る場合もあります。

  • modal auxiliary verb
  • primary auxiliary verb

さらに「modal auxiliary」のように「verb 動詞」なしで「法助動詞」を意味する場合もあります。

まず「第一助動詞 primary verb」を見ていきます。

これは「動詞としても助動詞としても機能する」グループに所属します。

一部の英語の文法解釈では「第一助動詞」だけを auxiliary verb(助動詞)とし、一方で can や will などの「法助動詞」を modal verb(法助動詞)と区別している場合すらあります。

それほどまでに用法が異なるので、実際に例を見ていきましょう。

① 強調・疑問・否定
  • do know him.
  • Does she know you?
  • We did not know them. 

この「助動詞」の do は英語で “do-support” といいます。

昔の英語には do をつかって否定や疑問をつくるようになっていませんでした。

比較的、最近になって英語に取り入れられたものなので、ほかの「助動詞」とは違う使い方をします。

Do-support - Wikipedia
② be動詞+現在分詞:進行相をつくる
  • He is doing it.(現在時制+進行相)
  • He was being sick.(過去時制+進行相)

現在分詞を使用するために使う動詞です。

現在分詞の品詞は形容詞なので、本物の動詞として be動詞が「助ける動詞」で必要になります。

ここでは現在分詞の例を使っていますが、受動態&完了相を発動する「be動詞 + 過去分詞」でも同様の仕組みです。

過去分詞の品詞は形容詞なので、be動詞が「過去分詞を助ける本物の動詞」になります。

③ have + 過去分詞:完了相をつくる
  • She has done it.(現在時制+完了相)
  • She had been there.(過去時制+完了相)

have + 過去分詞のかたちは例外用法から生まれました。

過去分詞の機能は「受動態&完了相」ですが、動詞の have があることで「能動態&完了相」を発動することができます。

このあたりのカラクリはこちらをご覧ください。

さて助動詞とはよばれているものの「do / be / have」 には完全に動詞としての役割もあります。

なぜなら「助動詞」とは「動詞でないものを助ける動詞」という意味から来ています。

現在分詞や過去分詞は「動詞が変化した形容詞」になるため動詞として使えません。

つまり動詞になれない分詞をサポートする本物の動詞である be や have こそが本来の「助動詞」というわけです。

このあたりが時代が進むにつれて動詞の機能を失った「法助動詞」の will や can などと大きく違う部分になります。

法助動詞の意味する「法 mood」とは何か?

では「助動詞 will」が所属する「法助動詞 modal verb」に話を進めます。

一番重要なポイントは「法 mood」という文法用語です。

普通に英語を勉強していると「仮定法」でいきなり登場する「法」のことです。

法 mood モード」の語源はラテン語の modus(方法、形式)がフランス語の mood(気分)と合わさって生まれました。

英文法の「法 mood」が意味するのは「mode 表現方法、形式」ということです。

mood - Wiktionary

法 mood の定義

話し手の想定・認識を表現する形式(主観発動モード)

  • △ mood 気分・感情
  • 〇 mode 形式・方式

法 mood の表現方法

英語の「法」は「動詞」もしくは「法助動詞」で表現します。

  • 動詞(現在形・過去形・原形)
  • 法助動詞(現在形・過去形)

動詞の形で決める「法」

英語の動詞で表現する「法」は次の3種類です。

  • 直説法 indicative mood:事実であると伝えるモード
  • 命令法 imperative mood:聞き手に実行してほしいと伝えるモード
  • 仮定法 subjunctive mood:事実とはいえないと伝えるモード

直説法とはいわゆる普通の「過去形」「現在形」と習っている文章です。

英語は「直説法(事実モード)」がデフォルトなので気づきにくいのですが、とても重要なことです。

そして「法」と「時制」を同時に発動させるように英語の動詞の変化パターンはセットされています。

時制と法:直説法・仮定法・命令法・現在時制・過去時制

~ 仮定法の注意事項 ~

仮定法とは「話し手の主観や想定」を表す文法用語ですが「動詞の形」によって示されます。

よくある日本の英文法解説では「反事実の条件文」を「仮定法」とゴチャゴチャにしたものが相当数あります。

まず英語は「反事実条件をつくる if 文の中で動詞の仮定法過去形をつかう」という仕組みを持ちます。

ところがフランス語は反事実条件の if 文でも「直説法」の動詞を使います。

そしてフランス語の「接続法(仮定法のこと)」の動詞形は反事実条件とは関係ないところで使用します。

つまり反事実条件(counterfactual conditional)と仮定法接続法 subjunctive mood)は全く別の内容の文法用語なんです。

仮定法はあくまでも「動詞の専用形によって発動する想定モード」と理解します。この仕組みは命令法と同じです。

さらに困ったことに、仮定法の使い方も英語の歴史上、変化し続けており、初期近代英語(200年ほど前)と現代の英語では大きく異なった使い方になっています。

そのため仮定法には「反事実」「想定」「祈願」など意味が広く設定されていて、動詞の形も特別なパターンがあります。

また命令法と仮定法(祈願)では「動詞の原形」を使用するため区別がつきにくい場合もあります。

これは「命令」「想定」「祈願」などの表現が「こうだったらいいのにな~」という似たもの同士として扱われてきたことに由来します。

English subjunctive - Wikipedia

とりあえずここでは「動詞の形で法を発動する」という基本をつかむ感じでお願いします。

法助動詞で決める「法」

動詞のつくる「法」は上記の3種類です。

英語では法助動詞が「法」を表現する主役です。

  • 可能:can / may
  • 能力:can 
  • 意志:will / shall
  • 勧誘:will / shall
  • 許可:may / can
  • 祈願:may
  • 必然:must
  • 義務:shall / must

などなど・・・。

法助動詞はいろいろな「法 mood」を発動できます。

しかし英語は基本的には「直説法 indicative mood」がデフォルトで発動しています。

法助動詞に入る前に「直説法」の形を確認します。

法助動詞に入る前に「直説法」の形を確認します。

「事実モード」を表す「直説法 indicative mood」

あたりまえすぎて見逃しがちですが「法」は常時発動する動詞の機能です。

「時制」と同じく「法」は動詞のもつ機能なので動詞の「形」をみて判断します。

いわゆる普通の「現在時制」と「過去時制」の文は「直説法(事実モード)」です。 

現代英語の文章は「直説法」だけを使うように変化しているため、あまり触れられることはありません。

ところが少し古い英語や現代のフランス語やドイツ語などでは「直説法」と「仮定法(英語以外では接続法と呼ぶ)」を内容に合わせて切り替えて使います。

そのため「直説法」と「仮定法(接続法)」の両方の動詞の形を知らないとフランス語やドイツ語は理解できません。

本来、英語には動詞の形を「直説法・仮定法・命令法」など内容に合わせて切り替えて使う仕組みがあることを知識に入れておいてください。

この「動詞の形」が「時制 & 法」を意味する仕組みは英語の親戚のほとんどの言語に共通であることも知っておいてください。

直説法・現在時制

  1. form:現在形
  2. mood:直説法(事実モード)
  3. 時制 tense:現在時制
  • He is the leader, but I run things.
  • 彼がリーダーだが、私が物事を回している

直説法・過去時制

  1. form:過去形
  2. mood:直説法(事実モード)
  3. 時制 tense:過去時制
  • My adopted sister pretended to be happy, but she wasn’t really.
  • 養子になった私の妹は幸せそうなふりをしたが、実際はそうではなかった

英語のもつ動詞の情報はこれだけあります。

  • (見た目)
  • (話し手の主観)
  • 時制(いつの話)

これらを区別して「法助動詞 will」に進みます。

法助動詞を使えば「事実モード」ではない「話し手の思い」を表現することができます。 

英語の未来を「法 mood」で表現する

では未来表現を担当する「法助動詞 will」に話を戻します。 

英語の未来表現では「事実モード」の直説法を使う必要はありません。

なぜなら「未来は不確定」だからです。

試しに漢文の書き下し文で「未来(みらい)」を読んでみます。

  • 未だ来ず(いまだこず)
  • 未だ来たらず(いまだきたらず)

どちらも「まだ起こっていない(事実ではない)」という意味です。 

そこで法助動詞 will をつかった場合、話し手の「意志」を示す「法(話し手の思い)」が発動します。

英語の Wikipedia の「Future tense 未来時制」を引用します。

“The nature of the future, necessarily uncertain and at varying distances ahead, means that the speaker may refer to future events with the modality either of probability (what the speaker expects to happen) or intent (what the speaker plans to make happen).”

『未来の性質そのものが、必然的に不確実であり、どの程度先のことなのかについても異なる距離感があるため、話し手は「見込み probability(話し手が起こると予期すること)」もしくは「意図 intent(話し手が起こそうと計画すること)」のいずれかの「法 modality(話し手の主観を示す文法用語)」をつかって未来の内容を示すことになりうる。』

Future tense – Wikipedia

英語の「現在形」と「過去形」は基本的には「直説法(事実モード)」です。

しかし未来は事実ではないので「直説法(事実モード)」でなくてもかまわないのです。

だから「法助動詞 will」で「未来」を表す場合は「現在(時制)+ 意志(法)」となります。

未来表現に法助動詞を使うのは英語などのゲルマン語グループの特徴です。

つまり現在時制が未来表現を含んだ時制と考えることができます。

それゆえ「現在時制」のことを「非過去 non-past」と表現するほうがより適切です。

English has only two morphological tenses: the present (or non-past), as in he goes, and the past (or preterite), as in he went. The non-past usually references the present, but sometimes references the future (as in the bus leaves tomorrow).

『英語には動詞で表す2つの時制しかありません。一つは「現在(または非過去)」と「過去(または点過去 )それぞれ “he goes” と “he went” のようになります。通常「非過去」は現在を示しますが、未来を示すこともあります。例を挙げると “the bus leaves tomorrow.” となります。』

preterite 点過去:英語では通常の「過去形」と同じ。単純過去 simple-past とも呼ばれる。

Grammatical tense – Wikipedia

そしてラテン語やロマンス語には「動詞の未来形変化」があります。

ではゲルマン語とロマンス語の時制をまとめてみましょう。

ゲルマン語グループの未来表現

  • 動詞の未来形変化なし
  • 法助動詞で未来を表現
  • 現在時制が未来を含むため「非過去 non-past」が適切な表現

(該当例)英語 /ドイツ語 /オランダ語・・・などなど

ロマンス語グループの未来表現

  • 動詞の未来形変化あり
  • 未来時制で未来を表現
  • 時制は3つ:現在・過去・未来

(該当例)フランス語 / ラテン語 / スペイン語 / イタリア語・・・などなど

せっかくなので比較してみましょう。

未来表現方法:法助動詞と動詞の未来形(英・独・仏・羅・世)
未来表現方法:法助動詞と動詞の未来形(英 独 蘭 仏 羅 世)

★注:エスペラント語は人工言語でロマンス語ではありませんが参考までに。

このように言語によっては「未来時制」をもつものもあります。

とはいっても「未来」は事実ではありません。 

未来は不確実なので「法 ≒ 話し手の意志」で表現してかまいません。

英語の法助動詞の代表的なものは will, shall, can,  may, must があります。

ゲルマン語仲間のドイツ語オランダ語も英語と同じ法助動詞のシステムを持っています。

意味はそれぞれ違うところはありますが、語源は同じですので一覧をみてみましょう。

法助動詞の語源:英語・独語・蘭語 will shall can may must
法助動詞の語源:英語・独語・蘭語 will shall can may must

このように「法」をつかって様々な表現をするのは英語とその仲間たちの基本システムです。

未来を「法助動詞」で表現するやりかたもドイツ語とオランダ語もほぼ同じです。

つまり「現在からの意志」という「法」を英語、ドイツ語、オランダ語は持っているんです。

English modal verbs - Wikipedia

実は「現在からの意志」という感覚はフランス語などロマンス語でも同じです。

動詞が「未来形」に変化するものの「現在からの未来へ」という意味が「未来時制」に込められています。

これはロマンス語の先祖であるラテン語からの流れをくむものです。

未来時制(ロマンス語)でも法助動詞(ゲルマン語)でも「未来」は「現在からの意志」なんです。

「未来への意志」の法助動詞 will のイメージと和訳

ここから英語の「法助動詞 will」を見ていきます。

未来形ではなく「現在形(非過去)」の will は「未来への意志(法 mood)」を表現します。

【 法助動詞 will 】

  • 形:現在形
  • 法:意志(未来への意志)
  • 時制:現在時制(非過去)

【 法助動詞 will の未来表現 】

will の意味はいくつかあります

  • ~するつもり(自分の意志) 
  • ~するだろう(他者の意志) 

法助動詞はあえて「大きな視点」でみるとうまくいきます。

では参考に can と must をつかってみます。

①参考:法助動詞 can

  • can できる(能力
  • can かもしれない(能力 ⇒ 可能性)

②参考:法助動詞 must

  • must 違いない(必然
  • must しなければならない(必然 ⇒ 義務)

法助動詞 will のおススメ和訳

  • イメージ:意志
  • 和訳:未来へ向かって

まず「意志 will」のイメージをつよくもちます。

そこから動詞に対して「未来へ向かって」と和訳をあてるとうまくいくことが多いです。

法助動詞は動詞とつなげる用法なので「ひとまとめで和訳」をするのがおススメです。

法助動詞 will でつくる表現と例文

ここから実際に法助動詞 will をつかった例文を見ていきます。

和訳はいろいろありますがイメージを「未来への意志」から派生させます。

  • ① I will do it tomorrow.
  • ① 私は 未来に向かってする それを 明日。
  • ⇒「私は明日、それをするつもりです」

たいていの場合は「未来にむかって○○する」でうまくいくはずです。


  • ② He will be well soon.
  • ② 彼は 未来に向かって= 健康な状態 すぐに。
  • ⇒「彼はすぐに、回復するだろう」 

be動詞の場合は「未来に向かって + イコール」とまとめるとわかりやすいです。

もしくは「未来に向かって ~である」とすればよいと思います。


  • ③ It will be rainy tomorrow.
  • ③ それは 未来に向かって= 雨が降る状態 明日。
  • ⇒「明日、雨が降るでしょう」 

天気は「て・き・と・うの it」と考えてください。

  • んき(天気)
  • ょり(距離・長さ)
  • (時間)
  • しろだおし(仮主語 dummy subject・仮目的語 dummy object)

とりあえず「 it = それ」とテキトーに訳しておけば、後から意味がわかります


  • ④ This door won’t open.
  • ④ このドアは 未来に向かって開かない
  • ⇒「このドアどうやっても開かへんわ」

物事の性質を示す「will」です。

あえて別の行動をさせようとしても「いうことをきかない」という感じです。


  • ⑤ You will pay for this.
  • ⑤ あなたは 未来に向かって支払う これに対して。
  • ⇒「いずれこの代償を支払うことになるぞ」

ちょっと脅しでつかうような表現です。

相手の「意志」よりも「君が~する方向に向かうよ」というニュアンスが強くなります。


  • ⑥ There will be another problem.
  • ⑥ 未来に向かって存在する  別の問題が。
  • ⇒「また別の問題が生じるだろう」

文頭に there is がくる形は「存在の強調表現」で主語は倒置されます。

法助動詞が入る場合も一気にまとめて理解するとうまくいきます。

  • there is S:「存在する 主語が」
  • there was S:「存在した 主語が」
  • there will be S:「未来に向かって存在する 主語が」

  • ⑦ I will now present the evidence.
  • ⑦ 私は 未来に向かって いま 提示する その証拠を 
  • ⇒「私がいまその証拠をこれから提示いたします」

未来表現でつかう will は now(現在)と組みあわせても大丈夫です。

なぜなら「現在時制+意志」であることに変わりがないからです。


  • ⑧ Time will pass and seasons will come and go.
  • ⑧ 時は 未来にむかって過ぎる そして四季は 未来に向かって やってくる そして どこかにいく
  • ⇒「時は過ぎ、季節は巡る」

辞書で「習慣・法則」と載っている使い方で、時間的な感覚は弱い表現です。

物事が「そのようになる意志を持つ」と理解するとよいと思います。

*seasons:複数なので「四季」と取ります。季節が4つでない地域もあります。

*come and go:comeは「現れる」そして goは「過ぎゆく」のイメージを持ちます。日本語と違うので注意。

このように辞書をみると法助動詞 will にはいろんな和訳があります。

「意志」や「未来」からズレるように思えるケースに出会うこともあるでしょう。

基本としては「未来への意志」というニュアンスと動詞をつなぐイメージが良いかと思います。

法助動詞 will の過去形 would がつくる「未来」の理解の仕方

法助動詞 will の過去「形」は「would」です。

他の助動詞である can や may とならべてみましょう。 

  • can / could (現在 / 過去)
  • may  / might (現在 / 過去)
  • will / would (未来?? / 過去)

「will = 未来時制」なら「would = 過去時制」なのでつじつまが合わなくなります。

正しい理解を英語の Wikipedia から引用してみます。

‘The “future” expressed by the future tense usually means the future relative to the moment of speaking

『未来時制で表される「未来」は、通常は発話時点からみた相対的な「未来」を意味します』

Future tense – Wikipedia

つまり「話の時点(時制)」からみた「未だ来たらず」のことが「未来」です。

  • will : 現在時制からの「未来への意志」の法助動詞
  • would : 過去時制からの「未来への意志」の法助動詞

英文法では「未来完了進行形」などを「時制」としてとらえているものもあります。

これは分かりやすさを優先した「時制」のゆるい解釈で「複合時制 compound tense」と呼びます。

これは「完了相」や「進行相」という「相 Aspect」まで「時制」にねじ込んだ表現です。

ラテン語などはこのような理解でもよいのですが、英語は「法・時制・相」を区別できます。

別々の仕組みを「時制」でまとめるとどこかで無理が生じます。

  • 未来完了形 I will have done it. 
  • 仮定法過去完了 I would have done it.

こんな解説されたら英文法がイヤになりますよね。

法助動詞の will や would の「未来」は「法(意志)」の表現とご理解をお願いします。

直説法で「未来」を表現するパターン

ここまで法助動詞 will の未来表現を見てきました。

ですが「直説法現在時制」で未来を表現する場合もたくさんあります。

なぜなら「現在時制」は「非過去 non-past」なので「現在~未来」のながれを表現できるからです。

つまり「未来への意志」よりも「事実モード」が優先して発動することになります。

  • We go hiking tomorrow.
  • 我々は 行く ハイキングに 明日
  • The press conference starts at 5:30.
  • その記者会見は はじまる 5時半に」

このような「確定的な未来」の表現では、未来でも「事実モード」として話されていることになります。

現在時制で「確定未来」を表現するのはドイツ語やフランス語などでも同じです。

未来というのは「時間」よりも「話し手の認識」で決まってきます。

動詞の「形」に「時制」だけでなくて「法」の意味もしっかりとらえるようにしましょう。

そうすれば法助動詞 will が「未来表現 ≒ 現時点の意志」として使われる理由もよくわかります。

未来表現  be going to へ

最後に will とならんで「未来形」と呼ばれる be going to の紹介です。

この表現も「時制は動詞の形で決まる」という原則を適応します。

  • I am going to do it.(現在時制)
  • I was going to do it.(過去時制)

動詞を見れば「時制」が分かります。

be going to が「未来」になるのは「不定詞」が「未然相(これからやるつもり)」を持つからです。

この「未然相」は be going to だけでなく「不定詞」一般に言えることです。

be going to が未来を意味する仕組みを知りたいかたはこちらをどうぞ。

法助動詞 will の解説はお役に立てましたでしょうか?

未来表現も「時制」と「法」という文法用語でしっかりみきわめることができます。

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