英語の「疑問文」と「否定文」に戸惑ったことはありませんか?
もしそうなら be動詞と一般動詞でルールが違うことが理由かもしれません。
おそらく英語の基礎で最初に出会う動詞の分類がこの2つだと思います。
- be動詞(名称は原形 “be” に由来)
- be(原形)
- am, are, is(現在形)
- was, were(過去形)
- 一般動詞
- be動詞以外のすべての動詞
では実際に疑問文や否定文でどんな違いがあるのか確認してみます。
まず普通の文(別名:肯定文、平叙文など)であれば主語になる名詞と動詞を並べればそれでOKです。
- You are a teacher.(be動詞)
- You like apples.(一般動詞)
ここまでだと2つの動詞に差があるようには見えません。
にもかかわらず疑問文になると話が変わります。
- You are a teacher. → Are you a teacher?
- You like apples. → Do you like apples?
どこからともなく do が出てきたり、語順が変わったりとよくわかりません。
そして否定文でも not だけでなく do も唐突に割り込んでくるのは変わりません。
- You are a teacher. → You are not a teacher.
- You like apples. → You do not like apples.
否定文でも do が出るところをみるに、なにか not に一任できない裏事情でもあるんでしょうか?
そしてとどめは命令文です。
普通の命令文なら「動詞の原形 base form」から文を作ります。
- Eat it here.
- Be quiet in class.
しかし否定の命令文だと be動詞なのに don’t とペアを組みます。
- Do not eat it here.
- Don’t be quiet in class.
ここまで来ると『英語はもうめちゃくちゃ!』と思われてしまうでしょう。
英語をシンプルに理解したくても一般動詞と be動詞で仕組みが違うのはどうも納得がいきません。
とりあえず be動詞は一度無視して一般動詞に集中して do の仕組みをみていきましょう!
助動詞 do (do-support)
一般動詞の否定文や疑問文でいきなりでてくる do は「助動詞 auxiliary verb」と呼ばれます。
助動詞といえばみなさんおなじみ「未来表現や意志を示す will」や「能力・可能性を示す can」のことです。
ただ will や can などは正確には「法助動詞 modal auxiliary verb」と呼ばれます。
この「法 mood」はラテン語 modus(英語の mode)に由来する文法用語で「話し手の判断・認識を伝える方法」という意味です。
実例としては「仮定法 subjunctive mood」の「法 mood」があります。
そのため文法用語としての意味は「mood 気分」よりも「mode 方式」に近くなります。
ちなみにローマの公用語だったラテン語に由来する文法用語はヨーロッパ系言語で共通して使用されています。
それゆえ英語だけでなくドイツ語、フランス語など多くのヨーロッパ系言語の文法を学ぶのにとても便利です。
あえて「法 mood」が「助動詞 auxiliary verb」につく理由は、主語の行動ではなくて意図や可能性といった「話し手の判断・認識」を示すからです。
- will:未来への意志・意図
- can:能力・可能性
- may:選択肢・可能性
- shall:義務・使命
- must:必然性
一方で、疑問文や否定文の助動詞 do は「法 mood(話し手の判断・認識)」とは無関係です。
この助動詞 do をつかう英語の仕組みは「do-support」と呼ばれています。
Do-support, in English grammar, is the use of the auxiliary verb do (or one of its inflected forms e.g. does), to form negated clauses and constructions which require subject–auxiliary inversion, such as questions.
『英文法において do-support とは、助動詞 do (またはその変化形である does など) を使って否定文や、主語と助動詞の倒置を必要とする疑問文などの文構造をつくることである。』
Do-support – Wikipedia
この「do-support(助動詞 do による補助)」の仕組みは、英語の歴史の中で比較的最近になって一般動詞にだけ使われるようになりました。
事実、古英語には助動詞 do をつかった否定文や疑問文は存在しません。
もともと古英語の助動詞 do は「使役動詞 causative verb」のような仕組みに限定されていたようです。
Examples of auxiliary “do” in Old English writing appear to be limited to its use in a causative sense, which is parallel to the earliest uses in other West Germanic languages.
『古英語の文書における助動詞 do の使用例は、主に使役の意味に限定されているようです。これは、他の西ゲルマン語(≒英語の親戚の言語)における最も初期の用法と同じようになっています。』
Do-support – Wikipedia
このような経緯があるので文法学者のみなさんにとってはちょっと扱いに困るのが do-support の構造なんです。
ですが英語そのものを正確に運用することが重要なのであれば、大きな心配はいりません。
シンプルに考えて「助動詞 do」なのですから will や can のような「法助動詞」と同じカラクリで使えばいいんです。
そのために少しだけ視点を変える必要があるので、実際に見ていきましょう。
強調 emphasis の助動詞 do
我々がよく見る英語の解説では、一般的によく使用される表現を重視しています。
これは英語圏で使用される英文法書でも同じような傾向があるかと思います。
そのため次の3つが並ぶことが多いです。
- You know it.(肯定文)
- Do you know it?(疑問文)
- You do not know it.(否定文)
これだと疑問文と否定文にいきなり do が登場するように見えます。
やはりこう並ぶと結局なんだかよくわからないので丸暗記になりがちです。
それなら表現の使用頻度は一旦横に置いて、英文法の仕組みにおける「助動詞 do の機能」に焦点を当ててみます。
そのために、まず「肯定文」のことを「助動詞を使わない文(元の文)」として設定します。
もうこれは法助動詞でやっているのでわかりやすいです。
- You make it.(元の文・助動詞なし)
- You will make it.(法助動詞 will 肯定文)
- Will you make it?(法助動詞 will 疑問文)
- You will not make it.(法助動詞 will 否定文)
この will と同じように「助動詞 do」を元の文に追加します。
肯定文に追加された「助動詞 do」は「強調 emphasis」の機能を発動します。
- I do appreciate your help.
- 私は 強く感謝する あなたの助けに。
- She does understand the problem.
- 彼女は ちゃんと理解している その問題を。
- He did finish his homework on time.
- 彼は きちんと終わらせた 宿題を 時間通りに。
きれいに日本語に直訳できるものではないので、私の和訳はニュアンスをとらえる感じで理解して下さい。
この「強調の助動詞 do」は高校レベルの英文法書だと「倒置・強調・挿入」といったカテゴリーにまとまることが多いかと思います。
そういった分類は英文法書の書き手の判断によるものですし、実際の英文法書の分類が一様であるべき理由はありません。
では先ほどの視点で「助動詞 do の仕組みと機能」を見ていきましょう。
まず元の文を基準にして強調を加えるようにします。
- 元の文(一般動詞を使用)
- 強調 emphasis
- 疑問 question
- 否定 negation
これを実際にやってみると「法助動詞」と同じカラクリが見えてきます。
- You make it.(元の文)
- You do make it.(強調 emphasis)
- Do you make it?(疑問 question)
- You do not make it.(否定 negation)
ではここから助動詞 do と法助動詞 will の文構造を比べてみましょう。
- You do make it.
- You will make it.
疑問文も同じ仕組みです。
- Do you make it?
- Will you make it?
もちろん否定文も同じカラクリです。
- You do not make it.
- You will not make it.
ここで注意ですが、あくまで「助動詞 do」をつかうのは一般動詞のときだけです。
もちろん be動詞の場合は、教科書でよくみる分類で正常に機能します。
- You are there.(肯定文)
- Are you there?(疑問文)
- You are not there.(否定文)
一般動詞だけ「強調 emphasis」の助動詞 do を追加する構造を覚えておいてください。
そうなればあとは法助動詞 will や can と同じ仕組みで対応できます。
助動詞 do は「助ける動詞」
まずここでよくある「助動詞」についての誤解を解いておきます。
日本の英語解説では「動詞を助ける品詞」と呼ばれることが多いですが、実際の意味は「助ける動詞」です。
さらに正確に言うと「(動詞以外の品詞として扱う)分詞や不定詞を助ける動詞」という機能を表しています。
実際に昔の英語では will や can なども元々は普通の動詞と同じように使っていました。
英語の表記はいくつかありますが「助ける動詞」であるのは共通です。
- auxiliary verb(補助的な動詞)
- helping verb(助ける動詞)
- helper verb(補助者である動詞)
- verbal auxiliary(動詞による補助)
どれも「動詞を助ける品詞」と解釈するには無理があるのは一目瞭然です。
英語では機能に応じて2種類の助動詞があります。
- 第一助動詞 primary auxiliary verb
- be:現在分詞と過去分詞を助ける
- I am opening the door.
- The door is opened.
- have:過去分詞を助ける
- I have opened the door.
- be:現在分詞と過去分詞を助ける
- 法助動詞 modal auxiliary verb
- will, can, may, shall, must(現在形グループ)
- would, could, might, should(過去形グループ)
- 直後に置かれる「動詞の原形」を助ける
ここで注意なのは、法助動詞のあとに続く「動詞の原形」の機能です。
もともと1000年ほど前までの英語(古英語 Old English)では動詞の原形は「名詞用法(~すること)」でした。
そのため will や can の後ろの動詞は「名詞」として扱われていました。
この名詞用法の動詞の原形が本来の「不定詞 infinitive」と呼ばれる形です。
つまり私たちが「原形不定詞 bare infinitive」として知っている「不定詞」こそが古英語から受け継ぐ正統派の不定詞なんです。
そして「to 不定詞」も前置詞 to がついた名詞用法の不定詞が由来になっています。
つまり昔の英語だと次のような構造で使われていました。
- will make
- 動詞 + 動詞の原形(名詞用法)
- 意図する つくること
- to do
- 前置詞 + 動詞の原形(名詞用法)
- ~に向けて つくること
現代英語の不定詞は英語の歴史上ややこしい話が絡んでいるので、こちらのブログを参照ください。
法助動詞の本来の意味は「法を発動し、動詞の原形を助ける動詞」となります。
これは古英語だけでなくドイツ語やオランダ語の法助動詞も同じカラクリです。
では法助動詞の語源を見ていきましょう。
このように法助動詞が似ている理由は、これらの言語が「ゲルマン語の仲間 Germanic laguages」という同じグループに所属するからです。
英語の仲間にはいろいろな「助動詞」は存在しますが、普通の動詞の機能を利用した「助ける動詞」なのは共通です。
さて現代英語の法助動詞は普通の動詞のように使えません。
とはいえ文法用語としてみると動詞が助ける対象が次の2つであれば「助動詞」となります。
- 分詞(英語の場合は現在分詞と過去分詞)
- 動詞の原形(英語以外の言語では不定詞と呼ばれるのが普通です)
ここまでの話を踏まえて、助動詞 do の例文を再確認します。
- 強調 emphasis
- You do know it.
- She does know it.
- You did know it.
- 否定 negation
- You do not know it.
- She does not know it.
- You did not know it.
- 疑問 question
- Do you know it?
- Does she know it?
- Did you know it?
こう見ると助動詞 do が普通の動詞と同じように「時制」や「主語の単数・複数」で変化するのが分かります。
この主語や時制によって形が定まる動詞のことを「定形動詞 finite verb」と言います。
英語に限らずヨーロッパ系言語では「定形動詞」が文構造の中心として機能します。
定形動詞の詳しい解説は次のブログをご覧ください。
そしてそのあとに「動詞の原形 know(昔の不定詞)」がつながっています。
もちろん昔の英語では助動詞 do につづく動詞の原形も名詞用法でした。
これが助動詞 do が「助ける動詞」であることの証明になります。
詳しい言い方だと「(文構造の中心となる定形動詞として)不定詞を助ける動詞」となります。
ここで注意ですが、そもそも「助動詞」の分類はきっちりしておらず、議論が分かれる場合もあります。
実際に英語 Wikipedia を引用してみます。
Definitions of auxiliary verbs are not always consistent across languages, or even among authors discussing the same language. Modal verbs may or may not be classified as auxiliaries, depending on the language. In the case of English, verbs are often identified as auxiliaries based on their grammatical behavior.
『助動詞の定義は、言語間で、または同じ言語について議論する著者間でさえ、必ずしも一貫しているわけではありません。 法助動詞は、言語に応じて助動詞として分類される場合と分類されない場合があります。 英語の場合、動詞はその文法的動作に基づいて助動詞として識別されることがよくあります。』
Auxiliary verb – Wikipedia
実際に「動詞」と「助動詞」の区別はあいまいになりがちです。
- 動詞 ⇒ 動詞
- 助動詞 ⇒ 助ける動詞(結局は動詞!)
実際にはこの程度の分類でしかないんです。
英語の助動詞の場合は「第一助動詞」と「法助動詞」の2つの分類が基本軸になります。
この2種類の助動詞のくわしい解説は次のブログをご覧ください。
さて「助動詞 do」についてもキチンと分類するには難しい立ち位置にあります。
そのため次の2点を覚えておいてください。
- 法を発動しないので第一助動詞に分類されることが多い
- be や have と違って、分詞とペアを組むことができない
- 実際の使い方は法助動詞と同じでよい
- 「法 mood」の機能ではなく強調・疑問・否定を表す
このように2種類の助動詞のどちらかに「助動詞 do」を割り振ることは難しいです。
英語の Wikipedia に “do-support (助動詞 do)” の解説が詳しく載っているので参照ください
助動詞 do の成り立ち
英語の歴史をみると助動詞 do は比較的最近になってルール化されたものでした。
そのため be動詞の使い方とうまくかみ合っていない部分があります。
では昔の英語はどんな構造をしていたのでしょうか?
英語の区別は、歴史の中で英語が変化してきた特徴から大きく4段階に分類されています。
- 古英語 Old English: 450-1150 AD
- 現在のドイツやデンマークから来たアングロサクソン人がブリテン(現在のイギリス)に持ち込んだ。
- 古英語は現代英語よりもドイツ語に近い
- 現代英語の基本的な単語ほどドイツ語とよく似ている
- 中英語 Middle English: 1150-1500 AD
- フランスから来たノルマン人の支配(ノルマン人征服 1066 AD)によりフランス語の影響を受けた。
- 現代英語にもフランス語を経由してラテン語の単語がたくさん入っている
- 初期近代英語 Early Modern English: 1500-1700 AD
- ルネサンスの影響でローマやギリシャの古典への回帰が進み、ラテン語やギリシャ語から多くの単語が入って来る
- ゲルマン語とロマンス語の両方の影響をうけた独特の特徴を持つ言語
- 現代英語 Modern English: 1700-現在
- 我々のよく知る英語になるが、日々変化している。
- 実質的な世界言語として世界中の人たちが使用している
概要としてこれぐらいの知識を押さえておけば良いかと思います。
もともと古英語の時代には do が使役動詞のように使われていました。
さて否定や疑問に使用する助動詞としての do は「中英語 Middle English」から「初期近代英語 Early Modern English」にかけての変化が見られます。
英語 Wikipedia を参照して助動詞 do が使用されてきた経緯をみていきましょう。
The auxiliary verb do makes no apparent contribution to the meaning of the sentence so it is sometimes called a dummy auxiliary. Historically, however, in Middle English, auxiliary do apparently had a meaning contribution, serving as a marker of aspect (probably perfective aspect, but in some cases, the meaning may have been imperfective). In Early Modern English, the semantic value was lost, and the usage of forms with do began to approximate that found today.
助動詞 do は文の中で明確な意味をもつものには見えないため、ダミー助動詞と呼ばれることがあります。 しかし、歴史的に中英語では、助動詞の do は明らかに意味に寄与し「相 aspect」を示すものとして機能していました (おそらくは完結相を意味していたはずですが、未完結相であった可能性もあります)。 初期近代英語では、その意味が失われ、do を含む形の使用法が今日見られるものに近づき始めました。
Do-support – Wikipedia
中英語の時代の助動詞 do の意味として「相 aspect」がでてきました。
この「相 aspect」とは「行動の実現度」を意味する文法用語です。
現代英語を例にとると2つの分詞が発動する2つの相があります。
- 進行相 progressive aspect
- 行動が実行中である
- 現在分詞で発動する
- 例:doing, being, speaking など
- 完了相 perfect aspect
- 行動が実現済である
- 過去分詞で発動する
- 例:done, been, spoken など
現代英語の「進行相」と「完了相」は分詞の機能なので、中英語の助動詞 do の「完結相」とは区別をお願いします。
それにしても Wikipedia の記事の肝心な部分になんとも歯切れの悪い表現が使われています。
『 おそらくは完結相を意味していたはずですが、未完結相であった可能性もあります。』
実際にもう使われていない英語ですからネイティブスピーカーに教えてもらうわけにはいきません。
そのため助動詞 do の語源や由来に関しては諸説あり、決め手がない状況のようです。
しかたがないので「完結相」と「未完結相」の意味をとりあえず探っていきましょう。
英語の分詞の持つ「相 aspect」の機能については次のブログを参照ください。
まず用語の注意点ですが、英語の「完了相 perfect」は継続する動作も表現できます。
- I have been here all day.
- 私は いままでいる ここに まる一日。
このように英語の現在完了(現在時制+完了相)のユニークなポイントは「動作の継続」が表現できることです。
一方で「完結相 perfective」とは「動作が終わっていて、もうやっていない」という微妙な違いがあります。
念押しになりますが、現代英語には「完結 perfective」と「未完結 imperfective」に完全に対応する相はありません。
しかしフランス語やドイツ語では、過去分詞の機能が「完結相」に近いので、英語が現在完了を使用する継続動作は「現在時制の動詞」だけで表現します。
さらに古典語であるギリシャ語やラテン語などにも「完結 VS 未完結」の区別があるので注意ください。
助動詞 do に話を戻すと「完結相 perfective aspect」とは次のような感じだったと思われます。
もちろん中英語は語順やスペルも現代英語と違うので、あくまで参考でお願いします。
- I do know him.
- 私は した 知っていること 彼を
- 私は彼をもう知っていた。
このほかにも古英語から受け継ぐ使役動詞 have や make に近い使い方もあったようです。
意味は諸説あるにせよ、この形が「初期近代英語 Early Modern English」になれば、我々のよく知る助動詞 do に近づくことはわかりました。
ですがこの時代でも助動詞 do が正規ルールというわけではなく、使われたり、使われなかったりしています。
ということで初期近代英語の助動詞の do が使われていないパターンを見ていくとしましょう!
初期近代英語(EME)の疑問・否定・命令
まず大事なことをお伝えします。
現代英語の「一般動詞」はヨーロッパ系言語の中では「一般的」な特徴をもつとは言えない動詞です。
英語のすべての動詞の中でフランス語やドイツ語などの動詞と一番似ている仕組みをもつのは be動詞です。
初期近代英語のすべての動詞は現代英語の be動詞とほぼ同じ仕組みで使われていました。
実際に動詞 have だけ例外で初期近代英語の気風がいまでも残っています。
英語 Wikipedia を参考にしてみましょう。
The verb have, in the sense of possession, is sometimes used without do-support as if it were an auxiliary, but this is considered dated. The version with do-support is also correct:
- Have you any idea what is going on here?
- Do you have any idea what is going on here?
『所有の意味で使われる動詞 haveは、(現在完了に使用する)助動詞であるかのように do-support なしで使われることが時折ありますが、これは古い用法だと考えられています。do-support ありのバージョンも同様に正しいです。』
Do-support – Wikipedia
古風な響きがあるとはいえ、現代英語でもまだ使われるので知っておくとうまく対応できます。
もちろん否定文も同じように使えます。
- I have not any problem.(初期近代英語)
- I don’t have any problem.(現代英語)
これってどこかでみたような仕組みですよね?
我々はこの文のつくりを「現在完了 present perfect」として学んでいます。
- have(第一助動詞)
- 分詞を助ける動詞
- done(過去分詞)
- 完了相を発動する形容詞
これに加えて be動詞に現在分詞と過去分詞をつなぐパターンをならべてみましょう。
- You are doing it. (be + 現在分詞)
- You are done. (be + 過去分詞)
- You have done it. (have + 過去分詞)
まず疑問文に変えてみます。
- Are you doing it?
- Are you done?
- Have you done it?
それでは否定文にしてみましょう。
- You are not doing it.
- You are not done.
- You have not done it.
助動詞 have が be動詞と同じ仕組みで機能するのが分かると思います。
ちなみに動詞 have の後ろに形容詞の過去分詞を置ける理由はちゃんとあります。
現在完了の have の成り立ちと仕組みについてはこちらをご覧下さい。
現代英語でも使われるパターンがあるなら、初期近代英語の知識が少しでもあるほうが良いかもしれません。
初期近代英語を学びたくても現代英語と区別するのは難しいかもしれません。
ところが初期近代英語の実例をみつけるのはカンタンなんです。
次の2つがその代表作とされています。
- ウィリアム・シェイクスピアの著作
- 欽定訳聖書(King James Version)
このうち「聖書 the Bible」には時代ごとに様々なものがたくさんあります。
日本語では「欽定訳」と呼ばれますが、英語では “King James Version” と呼ばれます。
それぞれの聖書のバージョンには略称があり “KJV” で検索すればカンタンに見つかります。
ちなみにゲームの中にも「初期近代英語」のような文体が使われることもあります。
この「ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争(Final Fantasy Tactics: The Wars of the Lions)2006年」という中世ヨーロッパを舞台にしたゲームでは全編を通して、現代英語ではない文体で書かれています。
個人には思い入れのあるゲームなので英文の解説のブログを作っています。
それでは、初期近代英語と現代英語の違いをみていきましょう。
疑問文(初期近代英語 EME)
まずは聖書(欽定訳 King James Version)の引用から初期近代英語の疑問文を見ていきます。
He saith unto him the third time, Simon, son of Jonas, lovest thou me? Peter was grieved because he said unto him the third time, Lovest thou me?
『イエスはもう一度言われました。「ヨハネの子シモン。ほんとうにわたしを愛していますか。」三度こんな尋ね方をされたので、ペテロは心に痛みを感じながら答えました。』
John 21:17 King James Version
いきなり単語がちょっとわかりにくいかもしれません。
まず thou は二人称単数の主格の代名詞で、複数の ye と使い分けがありました。
- thou(現代英語では単数 you)
- ye(現代英語では複数の you)
そして lovest は thou に対応する動詞 love の変化形です。
二人称単数の代名詞についてはこちらをご覧ください。
次に現代英語で同じ引用部分をみてみましょう。
A third time Jesus said, “Simon, son of John, do you love me?” Peter was sad because Jesus asked him three times, “Do you love me?”
『イエスは三度目にこう言われました。「ヨハネの子シモン、あなたはわたしを愛していますか。」ペテロはイエスが三度も「あなたはわたしを愛していますか。」と尋ねられたので悲しくなりました。』
John 21:17 Easy-to-Read Version
ではこの2つの疑問文を並べてみましょう。
- Thou lovest me.(初期近代英語)
- ⇒ Lovest thou me?
- You love me.(現代英語)
- ⇒ Do you love me?
現代英語では助動詞 do が登場してきました。
ところが初期近代英語では be動詞のように SV が入れ替わります。
つまり be動詞の仕組みが「一般的」だったということです。
ちなみに英語と同じゲルマン語の仲間であるドイツ語も初期近代英語とよく似た仕組みです。
- Thou lovest me.(初期近代英語)
- Du liebst mich.(ドイツ語)
これを疑問文に変えてみます。
- Lovest thou me?(初期近代英語)
- Liebst du mich?(ドイツ語)
やはり be動詞のほうがドイツ語と比べても「一般的な動詞」なんです。
そうなると否定文の仕組みも気になるので見ていきましょう。
否定文(初期近代英語 EME)
否定文は日本でも有名な冒険小説「ロビンソン・クルーソー」の一節から引用します。
1719年に書かれているので初期近代英語に近い文を見ることができます。
As to the old one, I knew not what to do with him; he was so fierce I durst not go into the pit to him; that is to say, to bring him away alive, which was what I wanted.
『年老いたやつに関しては、どうしたらいいのかわからなかった。あまりに凶暴だったので、穴に入って行って、生きたまま連れ去る勇気はなかった。それが私の望みだった。』
Daniel Defoe, Robinson Crusoe
過去時制の動詞 knew のあとに not が続いています。
現在完了の have とよく似た形なのでわかりやすいですね。
- I knew not ~.(初期近代英語)
- I didn’t know.(現代英語)
こういった否定文でもドイツ語と初期近代英語で似た構造になります。
- I knew not what to do with him.(初期近代英語)
- Ich wusste nicht, was ich mit ihm machen sollte.(ドイツ語)
- ドイツ語は was(英語の what)以降は「SVを含む節」になっています。
ちなみに動詞 durst は現代英語では「あえて~する」という意味の動詞 dare の過去形(この時代は不規則変化動詞)です。
この時代では法助動詞 will や can なども不規則変化がのこっている動詞でした。
二人称 thou の不規則変化はこうなっていました。
- Thou:(二人称単数)
- wilt / canst / wouldst / couldst
- will / can / would / could(現代英語はこの形で固定)
このように thou に対応した形があるのは先ほど見た動詞 lovest も法助動詞 wilt や canst も同じでした。
しかし現代英語では法助動詞の形が固定されて使用されるようになっています。
しかし動詞 dare については現代英語でも2パターンあります。
- He dared not speak the truth.
- 法助動詞のような扱い(初期近代英語に近い性質)
- 動詞の原形を直後に置くので助動詞と解釈
- 法助動詞のような扱い(初期近代英語に近い性質)
- He did not dare to speak the truth.
- 一般動詞のような扱い(現代英語の性質)
- 目的語として to 不定詞をとるので動詞と解釈
- 一般動詞のような扱い(現代英語の性質)
この2文の dare が動詞あっても助動詞であっても、本質的には「動詞」であることに変わりがないのはここまでの解説からご理解いただけると思います。
やはり興味深いのは、動詞 dare は「初期近代英語 ⇒ 現代英語」へ変化する途中経過を見ることができます。
文法書は例文だけ見ていると混乱しますが、英語が変化していく歴史の視点があれば楽しく学べるかもしれません。
では最後の壁、命令文を乗り越えてしまいましょう。
命令文(初期近代英語 EME)
肯定の命令文の場合は教科書の例文通りで大丈夫です。
- Stay here.
- Be quiet.
この形はとくに変わりなく使われています。
しかし命令文はどうもヘンテコで強調の do も命令文に登場します。
- Please do sit down.
このような表現はシャーロックホームズのドラマなどを見ているとよく出てきます。
また否定文でも be動詞に “Don’t” を使用するという有様です。
- Don’t stay here.
- Don’t be quiet.
このパターンはさすがに例外として受け入れるしかないと思います。
これを踏まえて、初期近代英語の否定命令文はどのようなものだったのか見てみましょう。
例文は聖書にある「マタイによる福音書7章1節」から引用します。
Judge not, that ye be not judged.
『人のあら探しをしてはいけません。自分もそうされないためです。』
Matthew 7:1 King James Version
これまでと同じく「動詞 not」の並びで否定命令文も作れます。
すこし引用文についてですが、めんどうな that 節があり、その主語が ye になっています。
- thou(現代英語では単数 you)
- ye(現代英語では複数の you)
さらにややこしいことに that 節に「仮定法現在(もしくは接続法現在)present subjunctive」をあらわす動詞の原形 “be“ があるのでわかりにくいです。
いろんな意味で現代英語のバージョンがわかりやすいのでみてみましょう。
Don’t judge others, and God will not judge you.
『他人を裁かないでください。そうすれば God もあなたを裁こうとなさらないでしょう。』
Matthew 7:1 Easy-to-Read Version
実は現代英語でも否定命令文の古い形が使われることがあります。
- Fear not.(初期近代英語)
- Don’t fear.(現代英語)
どちらも「恐れることは無い」という意味でよく使う表現です。
ではドイツ語と初期近代英語を比べてみます。
- Stay not here.(初期近代英語)
- Bleib nicht hier.(ドイツ語)
ドイツ語と並べると初期近代英語に違和感がだんだんなくなってきます。
では次に be動詞の否定命令文です。
シェイクスピアの戯曲「テンペスト」から be動詞の否定命令文を引用します。
“Be not afeard; the isle is full of noises,
Sounds and sweet airs that give delight and hurt not.”
『恐れることはない。この小島はいろんな音に満ちている、喜びを与え、傷つけることのない音と甘い空気に』
William Shakespeare, The Tempest, Act III, Scene II
否定命令文の be動詞でも not を後ろに置けばOKです。
形容詞 afeard は afraid と同じような意味の古い英単語です。
では比べてみましょう。
- Be not afraid of that.(初期近代英語)
- Don’t be afraid of that.(現代英語)
初期近代英語では助動詞 do を使わないパターンがあることがお分かりいただけたと思います。
そして現代英語にも古い用法がまだいくつか残っていることもわかりました。
もちろんこのパターンでもドイツ語は初期近代英語はよく似ています。
- Be not quiet.(初期近代英語)
- Sei nicht still.(ドイツ語)
実はドイツ語の否定語 nicht を配置するルールはかなりややこしいのですが、基本の仕組みとしてご理解ください。
では最後にオマケになりますが「初期近代英語」と「現代英語」の高難度の応用課題に進みます。
否定 not をつかった英語ジョーク
このブログの締めとして初期近代英語を使った英語ジョークを見ていきます。
英語のジョークにはいろいろありますが、ここでは bar joke の一つを紹介します。
この bar joke では「〇〇がバーに入ると…」という設定に始まり、そこからオチにつながります。
この「〇〇がバーに入ると…ジョーク」に登場するのが、近代哲学の父と呼ばれるフランスの哲学者ルネ・デカルト(René Descartes)です。
ではそのジョークを読んでいきましょう。
René Descartes walks into a bar and orders a drink. When he’s done, the bartender asks him whether he wants another. Descartes says “I think not.” Poof! He disappears.
『ルネ・デカルトがバーに入って飲み物を注文した。飲み終わると、バーテンダーはおかわりをするかどうか尋ねた。デカルトは「I think not.」と言った。パッと、彼は姿を消した。』
英文の “I think not.” が絶対的に重要なので、和訳せずそのまま英文になります。
もうここでオチが分かった方は西洋近代哲学の素養をお持ちかと推察致します。
ではここからしばらく解説が続きます。
まずデカルトの哲学思想を代弁するような言葉があります。
『我思う、故に我あり』
一般的にはラテン語で “Cogito, ergo sum” もよく知られています。
もともとデカルトはフランス語でこの表現をつかっており、英訳もフランス語と文構造と意味もほぼ同じです。
- I think, therefore, I am(英語)
- Je pense, donc je suis(フランス語)
- 私は考える、したがって私は存在する(和訳)
英語の be動詞(フランス語は être)の意味は「連結・存在 linking and extential」です。
現代英語では be動詞の「存在 existence」の意味は、動名詞 being(~であること)でよく使われます。
ではなぜデカルトの言う「考えること ⇒ 存在すること」につながるのかは西洋哲学の歴史をたどることで見えてきます。
デカルト以前の時代はキリスト教の価値観によって、真実が決まっていました。
つまり科学の知識よりも聖書の記述のほうに権威があったんです。
デカルトの「我思う・・・」というくだりは、聖書ではなく「自分自身こそ真実を探求する中心軸である」ということを意味しています。
ヨーロッパ文明と論理性の関係についてはこちらのブログをご覧下さい。
さて「我思う故に我あり」の知識を踏まえると、ジョークのオチが分かります。
では初期近代英語(EME)の否定文と並べてみましょう。
- I think therefore I am.
- 私は考える、それゆえ私は存在する。
- I think not therefore I am not.
- 私は考えない、それゆえ私は存在しない。
この前提がデカルトが消えたことにつながっています。
ジョークの該当箇所を再度引用します。
- Descartes says “I think not.” Poof! He disappears.
- デカルトは「I think not.」と言った。パッと、彼は姿を消した。
こうなるとそもそもデカルトが “I think not.” と言った理由が気になります。
そこに現代英語の文としての “I think not.” を同時に解釈する必要があります。
デカルトはバーテンダーから「もう一杯(おかわり)」を尋ねられたときの意図は次の通りです。
- I think not.(デカルトのバーテンダーへの返答)
- I think (I would) not (have another drink).
- 私はお酒をもう一杯をいただくつもりはないと考えている。
現代英語だけで解釈するなら、否定文は違う形になります。
- I don’t think.(現代英語の否定文)
- I think not.(初期近代英語の否定文)
あえて2番目を採用しているのは2つの要素をジョーク入れるためです。
- 初期近代英語の否定表現: “I think not.”
- デカルトの名言:“I think therefore I am”
ここから “I think not” につぎの2通りの解釈ができることで、このジョークは成り立ちます。
- お酒はもう飲まない
- 私は存在しない
・・・といったところがオチの解説になります。
実はこれに限らず英語ジョークは文法解釈をうまく利用したものも多いです。
最後に助動詞 do に関係ないところまで話が進んできましたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
助動詞 do は初期近代英語の疑問・否定・命令と大きなつながりを持つことはご理解いただけたかと思います。
英語を歴史からとらえる視点は、英語の理解力が広く、深く、細かくなればなるほど、きっとどこかで役に立つと信じています。
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