昔の英語の文が読めなくて苦労した経験はありませんか?
- English Literature(イギリス文学)
- American Literature(アメリカ文学)
私が留学していたアメリカの大学だと、主にこの2つが基礎コースにありました。
ただでさえ英語を理解するのに必死なのに、辞書や文法書をみてもどうにもならない文はお手上げです。
なんとしてでもイギリス文学よりも時代が新しいアメリカ文学のクラスを埋まってしまう前に取ろうと必死でした。
ところがちょんなことから英語の古い表現に出会うことになります。
現代英語の知識では読めない英語
留学時代にアメリカ人の友人がゲームをやっていたので、眺めているとこんなセリフがでてきました。
Doth thou desire the power?
この文の意味はお判りでしょうか?
これは Xenogears(ゼノギアス)というゲームにでてくるグラーフというキャラが問うセリフです。
私は日本にいたときに、同じゲームをやっていました。
なのですぐに意味は分かりました。
「うぬは、力が欲しくないか?」
その呼びかけに答えた弱キャラの敵をグラーフは一気に強化します。
またグラーフ当人も圧倒的に強く、ゼノギアスをプレーした人なら印象に残っていることでしょう。
そこへ加えて英語版グラーフは、私にとって日本語版よりもさらに強く印象に残っています。
- Doth thou ってなんやねん!?
- もしかして英語に『うぬ』の代名詞ってあるんか!?
この doth thou の衝撃は、今でも鮮明に覚えています。
その次はラストレムナント(Last Remnant)です。
このゲームにもまた古語が原因で苦しめられました。
中世ヨーロッパの世界観で、メインの登場人物たちにもブリティッシュアクセントで声があてられています。
主人公のパートナーと呼べる David は完全なエエとこの育ちっぽいイギリス発音です。
アメリカ発音に慣れている私にとって David のブリティッシュアクセントは、なんとも違和感があります。(世界的に見ると最強のモテ要素の一つでもあるんですが・・・)
Gae Bolg, I call upon thee!
「ゲイボルグ!アイコーラポンディ!」
これは Gae Bolg(ゲイボルグ)という武器を David が発動するときのセリフです。
- 戦闘中のセリフなので字幕はでません!
- はっきり発音する音でもありません!
- 日常会話で出てくる単語でもありません!
最初はなんのことかわからず非常にストレスがたまりました。
カタカナだと「アイコーラポンディ」にしか聞こえません・・・。
当時、ゲーム本編そっちのけで調べまくってやっとこさ目的格の you を古語で thee というところまで突き止めました。
もはや英語でゲームをやるにもある程度、古語の知識が必要だと痛感させれました。
さもないと中世ファンタジーなど到底、歯が立ちません!
そして、止めを刺すのようなゲームに出会います。
それが「ファイナルファンタジータクティクス 獅子戦争(Final Fantasy Tactics: The Wars of the Lions)」です。
このゲームは子供のころに日本語でやっていた、いまでも一番好きなゲームです。
そのリメイク版がでていたので、せっかくなので英語でやってみることにしました。
もともと中世ヨーロッパの世界観ではあるのですが、実際にやってみると「英語が読めない」んです!
そこら中に聖書かと思うような文章ばかりでてきます。
それもそのはず!あえて古い英語の表現が文法が使われていました。
この英語はより正確にいうと「初期近代英語 Early Modern English」と呼ばれます。
初期近代英語 Early Modern English
英語の区別は、歴史の中で英語が変化してきた特徴から大きく4段階に分類されています。
- Old English 古英語
- 時期:450-1150 AD
- 特徴:現在のドイツやデンマークから来たアングロサクソン人がブリテンに持ち込んだ。
- 古英語は現代英語よりもドイツ語に近い
- Middle English 中英語
- 時期:1150-1500 AD
- 特徴:フランスから来たノルマン人の支配(ノルマン人征服 1066 AD)によりフランス語の影響を受けた。
- Early Modern English 初期近代英語
- 時期:1500-1700 AD
- 特徴:ルネサンスの影響でローマやギリシャの古典への回帰が進み、ラテン語やギリシャ語から多くの単語が入って来る。
- (Late) Modern English (後期)近代英語・現代英語
- 時期:1700-現在
- 特徴:我々のよく知る英語にとても近いが、日々変化している。
これらの区別はきっちり決まっているものではありませんので、詳しくは英語 Wikipedia を参考ください。
英語の歴史については Duolingo の英語ブログもとても参考になります。
もし「初期近代英語 Early Modern English」を学びたくても「現代英語 Modern English」と区別するのは難しいかもしれません。
ところが初期近代英語の実例をみつけるのはカンタンなんです。
次の2つがその代表作とされています。
- ウィリアム・シェイクスピアの著作
- 欽定版聖書
このうち「聖書 the Bible」には時代ごとに様々なものがたくさんあります。
日本語では「欽定版」と呼ばれますが、英語では “King James Version” と呼ばれます。
それぞれの聖書のバージョンには略称があり “KJV” で検索すればカンタンに見つかります
では論より証拠!
実際に「Final Fantasy Tactics 獅子戦争」の英語を見ていきましょう!
Prologue
“Ovelia: O Father, abandon not Your wayward children of Ivalice, but deliver us from our sins, that we might know salvation.”
『オヴェリア「…我ら罪深きイヴァリースの子らが神々の御力により救われんことを。』
ゲーム開始のシーンからの引用になりますが、まあとんでもない文に見えますよね。
ここでひるまずに進めていきます!
呼びかけ O Father
意味は「おお、父(なる主)よ」です。
日本語は「神々」ですが、欧米圏は一神教なので、こう言った表現のほうが自然に見えるのだと思います。
大文字 Your
英語では God は常に G を大文字にします。ここでは Father がそれに相当します。
だから「あなた」と呼びかける代名詞をつかっても、文の途中でも Your になります。
実際にはゲーム中に登場する信仰は一神教として扱われてはいませんが、英語圏ではキリスト教っぽい感じのほうが自然なのでしょう。
否定の語順 abandon not
これは do not abandon という意味です。
昔の英語は語順の制約がユルい傾向があります。
聖書とかもそうですが “Know you not? ” とか平気で出てきます。もちろん意味は “Don’t you know?” です。
疑問文や否定文などで使う助動詞 do / does / did は英語で do-support と呼ばれ、昔の英語には存在しませんでした。
助動詞 do を使わないのは、古い英語だけでなくフランス語やドイツ語も似たような仕組みです。
ゲーム中のスクリプトを見るに SVO の語順など無きが如くといって差し支えないでしょう。
動詞 deliver
ここでは「届ける」ではなく「救う」という意味です。
聖書ではよくみる表現なので、知っておくとよいと思います。
接続詞 that we might know
日本の英文法でもよく見る so that S may/might do の形で「~できますように」という文です。
この文は (so) が省略される形と理解するとよいと思います。
もともと接続詞 that はいまよりもかなりゆるく使われていて、このパターン以外でも単に文を接続するために使用することが可能でした。
Wiktionary から例文と解説を引用しておきます。
- He fought that others might have peace.
- 彼は他の人々が平和を得られるように戦った。
(dated) Introducing a subordinate clause that expresses an aim, purpose or goal (“final”), and usually contains the auxiliaries may, might or should: so, so that, in order that.
『(古い用法) 目的、意図、または最終的な目標 を表す従属節を導く。通常、助動詞 may、might、should: so、so that、in order that が含まれます。
https://en.wiktionary.org/wiki/that
不規則変化動詞 rend – rent – rent
“It was a bitter war of succession that rent the land of Ivalice in two.”
『イヴァリースを二分して争われた後継者戦争は・・・』
「引き裂く、引きちぎる」という意味の動詞で活用は rend-rent-rent です。
ゲーム中では装備品が破壊されると「Rent」と表示されます。(日本語は「ブレイク」そして英語オリジナル版は「Broken」 )
装備が無くなったこともさりながら英語表記に最初、面食らってしまいました・・・。
副詞 hithertofore
“Here we first find mention of Delita Heiral, a hithertofore unknown young man, the hero who would draw the curtain of this dark act of our history.”
『・・・一人の無名の若者、ディリータという名の若き英雄の登場によって幕を閉じたとされている…』
副詞で「今までは、今までのところは」という意味です。
古語というわけではないようですが、あまり見ない表現だと思うので載せておきます。
敬称 Majesty & Highness
“Ovelia: I’ll not be much longer, Agrias.”
“Agrias: Your escort has already arrived, Majesty.”
“Elder: Please, heed the good lady’s words, Highness. You must hurry.”『オヴェリアと呼ばれた娘「もう少し待って、アグリアス…。』
『アグリアスと呼ばれた女騎士「すでに護衛隊が到着しているのです。』
『神父「姫様、アグリアス殿を困らせてはなりませぬ。さ、お急ぎを…。』
古語ではありませんが、王侯貴族に対する敬称なので紹介します。
- Majesty: King と Queen に対する敬称
- Highness: Prince と Princess に対する敬称
つまり、王女オヴェリアに対するアグリアスの呼びかけの Majesty は間違っているようです。
敬称 ser
“Agrias: Gaffgarion, you forget yourself, ser!”
『騎士アグリアス「なんだと、無礼な口を!』
これは古語ではありません。
なんと Oxford Dictionary にすら載っていません!
ですが、そこはさすが Wiktionary には載っていました。
“(in some fantasy novels) An address or courtesy title to any person, especially if their gender and/or form of address are unknown.”
Wiktionary
ファンタジー小説などはいろんな生物とか種族とかが登場するので、なんと呼べばよいか不明な場合に使うもののようです。
つまり性別を気にせず sir や madam (ma’am) ように使える敬称ということです。
便利な単語があるもんですね!そのうち正式な英語になるやもしれません。
フランス語やドイツ語などと違って、現代英語は男性名詞と女性名詞の区別をしなくても運用できます。
つまり現代英語は比較的ジェンダーを気にしなくても使える言語なので、世界共通語に向いていると言えるかもしれません。
副詞 mayhap
“Gaffgarion: Mayhap bowed heads would less offend.”
『ガフガリオンと呼ばれた剣士「これでいいかい、アグリアスさんよ。』
これは perhaps や maybe のように使います。
この文だと「まあ、おそらく・・・頭を下げとったら少しは無礼さがマシになりますかいな」という感じです。
名詞 knave
“Agrias: I see even the noble Order of the Northern Sky cannot rid itself of vulgar knaves.”
『騎士アグリアス「誇り高き北天騎士団にも貴公のように無礼な輩がいるのだな。』
古語で「不良、ならず者」という意味です。
ちなみに、この vulgar は「無礼な」という訳ですが、言語学用語だと「(一般民衆・平民による)口語表現」という意味で使います。
例としては「vulgar Latin(俗ラテン語、口語ラテン語)」などがあります。 文書で残っている言葉とは別の会話表現という意味です。
不規則変化動詞 seethe – sodden – sodden / ought not
“Gaffgarion: A guard captain in these rain-sodden hinterlands ought not expect chivalry.”
『剣士ガフガリオン「辺境の護衛隊長殿には十分すぎるほど紳士的なつもりだがね…。』
これは「煮え立つ、渦巻く」という意味の動詞 seethe の過去分詞で古い活用形です。
- seethe – sodden – sodden
- seethe – seethed -seethed(現代英語)
ゲーム中では雨が降っているので「雨でびしょびしょになった辺境の地」という意味です。
ちなみに ought ですが ought to になっていません。
Wiktionary によると ought だけでつかうパターンもあったようです。
ただゲーム内のスクリプトは「ought + 動詞の原形」になったものが過半数です。書き間違いではないのでご心配なく。
助動詞相当句 ought も元は動詞 owe の古い活用です。
- owe – ought – ought
- owe – owed – owed(現代英語)
英語の「助動詞」と呼ばれるものは「不定詞や分詞を助ける動詞」という意味です。
日本でよく見る「動詞を助ける」は英語やフランス語の助動詞の意味ではないので注意してください。
省略表現 ‘Tis
“Dilita: Forgive me. ‘Tis your birth and faith that wrong you, not I.”
『ディリータ「悪いな…。恨むなら自分か神様にしてくれ。』
“it is” の短縮形で文語表現です。
全体としては「不当に扱う」を意味する動詞 wrong を使って強調構文になっています。
Not I になっているのも I wrong you を強調構文にした場合、It is not I that wrong you. となるからです。
Chapter 1
副詞 anon
“Zalbaag: We will be able to recall our forces in Zeltennia anon.”
『聖騎士ザルバッグ「鴎国軍がゼルテニアから撤退するのも時間の問題でしょう。』
「まもなく、そのうち、もうすぐ」を意味する古語の副詞です。
前置詞+関係代名詞 to whom
“Argath: The very same. And to whom do I owe my gratitude?”
『剣士アルガス「ああ、そうだ。おまえらは……?』
これ自体は古語というわけではありませんが、現代の英語では気にならないルールが少しあります。
- 前置詞は「名詞の前に置く品詞」なので、文末に置くのはダメ!
- 関係代名詞の目的格 whom が使えるときに主格 who は使わない!
この2つは普段の英語では気にしなくても構いません。(もちろん気にする人もいますが・・・)
つまり “Who do I owe my gratitude to?” でも今の時代ではあまり気にしなくなってきているってことです。
この時点でアルガスは主人公たちに救出されているので「誰に対して感謝すればええんかな?」 と英語スクリプトでは返答しています。
仮定法現在 truth be told
“Argath: Well, truth be told, I am a knight apprentice…as are you, if I’m not far mistaken.”
『剣士アルガス「…いや、騎士見習いさ。なんだよ、おまえらだって一緒じゃねぇか。』
これは動詞の原形をつかった「仮定法現在 subjunctive present」と呼ばれるものです。
英文法の「法 mood」は「話し手の認識・想定」を伝えるときに使用される用語です。
いわゆる普通の文章は「事実モード=直説法 indicative」がデフォルトで発動しています。
ここでは the truth is ではなく the truth be になるのがポイントです。
現代英語では “(if) truth be told” はイディオム的に使われる表現です。
意味は「(黙っとってもええけど、あえて)本当のことを言ってまうと・・・」ぐらいでしょうか。
接続詞省略 Should he be
“Argath: We must act quickly if he is to remain so. Should he be killed, I will lose everything…”
『剣士アルガス「早く手を打たないと侯爵様がやつらに殺されちまう! そうなったら、オレはいったい…。』
これは “If he should be killed” が「if の省略と倒置」になっています。
現代でも使う用法で大学受験の文法問題にもあるので、形は知っている方も多いと思います。
接続詞 save
“Delita: The Corpse Brigade would not take a man alive save there were value in keeping him so.”
『剣士ディリータ「骸旅団だって、誘拐したからには何か狙いがあるはずだ。何かの要求があったかもな。』
接続詞の save で「~であることを除いて」となります。
文法上は、前置詞の save に 接続詞 that の組み合わせと考えることもできます。except と似ている使い方です
詳細は Weblio英語辞書 の save の「接続詞」の箇所に載っています。
save 以下は there were value ~ となっています。
文構造は「仮定法過去 subjunctive past」を使った副詞節になっています。
その意味は「生かしたまま誘拐することに(よくわからないが何かしらの)価値がないのであれば」という話し手の想定を表します。
her affairs(国の代名詞)
“Dycedarg: You are not a man of Gallione. Leave her affairs to those of us who are.”
『ダイスダーグ卿「ここは貴公が暮らす土地ではない。ガリオンヌのことは我らに任せておくことだ。』
もともとヨーロッパ系の言語の名詞は、男性名詞と女性名詞そして中性名詞と分類されて扱われます。
現代でもフランス語やドイツ語などは完全に別の文法ルールを男性名詞と女性名詞に当てはめて運用します。
英語も少し前までは国や自然の代名詞を she や her など女性形で受けることがありましたが、どうも現在は it が主流のようです。
ちなみに「船」は女性形で受けますが、これはいまでも同じです。
なのでアメリカ海軍の航空母艦 George Washington や Abraham Lincoln など男性名がついている艦船でも「女性の代名詞 she」で受けます!
なかなかに違和感があるので Wikipedia を読めば載っているはずなので興味のある方はどうぞ!(多少編集されても she や her はゼロにはならないと思います)
接続詞 lest
“Dycedarg: Let me remind you, Argath, lest you forget your place.”
『ダイスダーグ卿「身分をわきまえぬか、アルガス殿!』
接続詞で「~しないように、~するといけないから」という意味で使います。
和訳をみればわかりますが lest は「実際にまだやっていない話」が続く接続詞です。
それゆえ、この接続詞 lest に続く文では、仮定法現在の動詞をつかい、 lest he (should) be のように使います。
この法助動詞 should はイギリス英語で後から加わったもので、もともとは「動詞の原形」を使った「仮定法現在 subjunctive present」の形になっていました。
動詞 would that(仮定法過去 could)
“Zalbaag: Would that we could speak at greater leisure, but there are duties that require my attendance. Rogues do not catch themselves.”
『聖騎士ザルバッグ「ゆっくり話していたいところだが、これから盗賊狩りなんだ。すまんな。』
現代英語では would は法助動詞になりますが、もともとは「完全な動詞」の機能を持っていました。
歴史的には、もともと法助動詞 will も「動詞 willan(望む、願う)」から派生した言葉です。
動詞 wish のケースと同様に、仮定法過去の動詞を従属節で使います。
意味も wish と似たような感じで「~であればいいのだけど(実際はできない)」となります。
この would that の文は that の省略形もあるので要注意です。知らなきゃ絶対アウトのパターンです。
名詞+前置詞 naught but
“Argath: Why wouldn’t they? They’re naught but common footpads!”
『剣士アルガス「ばかな! やつらはただのならず者だ!』
naught は nothing の古語です。
ここでは “nothing but ~” で「~を除いてほかにない = まさにそのもの」となります。この場合の but は前置詞。
短縮表現 ’twas
“Delita: ‘Twas I forced Ramza to go.”
『剣士ディリータ「自分がラムザを無理矢理、誘いました。』
It was の短縮形で、文語表現。
全体としては It was I (that) forced Ramza to go の強調構文で that の省略になっています。
敬称 Your Grace
“Dycedarg: To coddle them is to do them disservice, Your Grace.”
『ダイスダーグ卿「…甘やかされては他の者たちに対してけじめがつきませぬぞ、ラーグ閣下。』
One’s Grace は「公爵 duke」に対する尊称です。古語ではありませんが、普段あまり見ない表現なので、ご紹介します。
ここでは相手に呼び掛けているので Your Grace ですが、三人称のときは His Grace となります。
前置詞 ere
“Dycedarg: Coordinated strikes are to be made on a number of their dens ere long. You will lead one of those assaults.”
『ダイスダーグ卿「…骸旅団せん滅作戦も大詰めだ。おまえたちの参加を許そう。』
前置詞や接続詞として「~の前に、~しないうちに」という意味の使います。
ここでは before long と同じように「まもなく、すぐに」という意味。
不規則変化動詞 work – wrought – wrought
“Brigade Mage: We mustn’t give in to despair! Not until the nobles answer for all they’ve wrought!”
『骸旅団白魔道士「そうですよ。やつら、貴族どもが我々に謝罪するまで続くんですッ!』
動詞 work の古い不規則変化の活用で work – wrought – wrought の形になります。
ここでの wrought(work の過去形)は「もたらした、引き起こした」という意味です。
英文は「彼らが我々に対して行ってきたことに責任を取るまで!」 の意味です。
would fain
“Milleuda: No god would fain forgive such sin, much less embrace it! All men are equal in the eyes of the gods!”
『剣士ミルウーダ「神がそのようなことを宣うものか!神の前では何人たりとも平等のはず!』
法助動詞 would と合わせて使うことが多く、fain は副詞で「よろこんで gladly」の意味になります。
日本語の「そのようなことを宣うものか!」は、英語だと「そのような罪を許さないし、まして擁護するなど尚更ありえない!」となっています。
不規則変化動詞 slay – slew – slain
“Zalbaag: Five among our guard are slain, and Tietra taken.”
『聖騎士ザルバッグ「5人程やられました…。ティータもさらわれてしまいました。』
ここでの slay は kill の古語で「殺す」の意味ですが、それとは別に「大笑いさせる」という意味もあります。
「爆笑させる」という場合の活用は slay – slayed – slayed になるようです。
動詞 begone
“Ramza: Begone from my sight! And do not think to return!”
『剣士ラムザ「僕の前から消えろ! 二度と現れるなッ!!』
命令文などで動詞として使うことで「失せる(失せろ)、いなくなる(いなくなれ)」という意味になります。
普段、こんなアグレッシブな言い方をすることはないですが、ゲームをやっているとたくさん出てきます。
ちなみに英語の「命令」は「まだ事実ではないこと」を表現します。
それゆえ「命令法 imperative mood」という特別な「法 mood」という用語が使われます。
これは「仮定法」や「直説法」と同じく「話し手の判断・認識を表す方法」を意味する文法用語「法 mood(意味は mode に近い)」に由来します。
命令法は「会話相手(二人称)に行動を期待する」感じで理解するとうまくいきます。
名詞 aught
“Delita: I would save Tietra with these hands, if aught were in my power to do.”
『剣士ディリータ「この手でティータを助けたいのに何もできやしない…。』
naught と同じように aught は anything の古語の形です。
“if aught were ~” なので反事実条件を示す「仮定法過去」の動詞を使用します。
英語の意味は「(実際はないが)もしティータを助ける力があれば」 です。
関係副詞・疑問副詞 whence
“Gragoroth: Back whence you came! Quick as shadows, or this one’s blood makes crimson snow!”
『騎士ゴラグロス「さっさと、ここを立ち去るんだッ! この娘がどうなってもいいのかッ!』
“from + where” のような表現で「~の場所から」を意味します。
このセリフを文字通りとると「もといたところに帰れ!」です。
昔は「from where?」のように「前置詞+疑問副詞」と使うことがダメでした。
前置詞は「名詞」とペアにしなければならないので whence が使われていたという経緯があります。
ここは関係副詞・疑問副詞のどちらでも解釈できると思います。
昔は whence のような「前置詞+場所の疑問詞」をあわせたような単語をもっとつかっていました。
ちなみにドイツ語ではこのような疑問詞の区別があります。
ちょっと使いわけを紹介するとこうなります。
- where ≒ in what place(どこで)
- wo(ドイツ語)
- whence ≒ from what place(どこから)
- woher(ドイツ語)
- whither ≒ to what place(どこへ)
- wohin(ドイツ語)
現代英語は昔に比べて副詞の使用ルールがゆるくなっている傾向があります。
名詞 wench
“Argath: Your lord brother’s orders, Ramza. What else? Would you have had us kneel before them, and offer up the Order‘s honor in exchange for the life of some common wench?”
『剣士アルガス「ラムザ、おまえの兄キの命令だぜ。何故はないだろ?それに、たかが平民の小娘のためにおまえは騎士団の誇りを捨ててあいつらの要求を飲むというのか!?』
「若い女性」を意味する言葉で、Oxford Dictionary によると”ARCHAIC • HUMOROUS” と注記がありました。ちょっと「小ばか」にしたいい方なのでしょうか?
英語セリフでは order(命令)と Order(騎士団)が使われています。
「ハリーポッターと不死鳥の騎士団」の原題が Harry Potter and the Order of the Phoenix なので「Order = 騎士団」も覚えておくとよいと思います。
多義語 order は「秩序」を軸にしたイメージを掴むことがポイントです。
Chapter 2
助動詞 doth
“Knight: Hmph. No sooner speak the devil’s name, than he doth appear.”
『騎士らしき男「フン。噂をすればなんとやらか…。』
三人称単数現在 does の古語表現が doth になります。
この文章自体は「悪魔の話をすると悪魔が現れる」という意味で「噂をすれば影」と同じ意味の諺(ことわざ)です。
倒置になっているので元に戻してみます。
“Speak the devil’s name no sooner than he doth appear.”
比較表現 “no sooner” は「もうこれより時間を短縮するのはムリ!」という意味です。
つまり、どちらが先かわからないぐらいのレベルで「すぐに」ということす。
そこから「間髪入れずに、瞬時に」⇒「~するかしないかのうちに」という意味になります。
さて thou に対しては、二人称の dost をつかいますが doth でもよいようです。
ちなみに be動詞 をつかう場合は thou art です。
疑問文の語順 have you any idea
“Agrias: Have you any idea what you do?”
『騎士アグリアス「自分が何をしようとしているのか 貴様はわかっているのかッ!?』
今回は古語というわけではありません。
実は、動詞の have を文頭に持ってくるのは現代の英語でも使います。
- Have you no shame?
- 恥というものを知らんのか?
助動詞 do does did を疑問文でつかうのは比較的新しい仕組みなんです。
現在完了の疑問文で have を文頭に持ってきますが、本来はこの形でした。
動詞の have を文頭に持ってきた疑問文は、おそらく堅くは聞こえるはずですが、間違いにはなりません。
副詞 pray
“Mustadio: Pray understand – I cannot tell you. Not yet.”
『機工士ムスタディオ「すまない…。今はまだ話すことができないんだ…。』
副詞として扱われ Pray を命令文で使うことで「丁寧な依頼」にすることができます。
基本の使い方として pray は「祈る」を意味する動詞です。
また prayer は「祈り、祈りをささげる行為」を意味し、「祈る人」ではないので注意してください!
ちなみにカマキリのことを praying mantis といいます。「信者が両手を合わせて祈る姿」を連想させるのでしょう。
動詞 befall
“Delacroix: We will expose Duke Larg’s misdeeds, and ensure that no harm befall you, Princess.”
『ドラクロワ枢機卿「ラーグ公の不正を暴き、オヴェリア様の命が狙われることのないよう手を打ちましょうぞ。』
「~に降りかかる」という意味の動詞で文語表現。
この befall も ensure の後の that 節の中にあり、形も「befalls」になっていません。
それゆえ、まだ起こっていないことを示す動詞の原形を使った仮定法現在(subjunctive present)が使われています。
このような一部の動詞や形容詞からつながる that 節で「仮定法現在」をつかうのは現代英語でも残っていて TOEIC にも出題されています。
敬称 Your Eminence
“Mustadio: Thank you, Your Eminence.”
『機工士ムスタディオ「ありがとうございます、猊下。』
“Your/His Eminence” は枢機卿に対する敬称です。
「枢機卿」は英語で Cardinal といい、ローマ・カトリック教会だと教皇に次ぐ地位になります。
ゲーム内ではドラクロワ枢機卿も悪者ですが、三銃士(Three Muskteers)にもリシュリュー枢機卿(Cardinal Richelieu)が悪者として登場します。
ちなみに日本語の「猊下 げいか」は「高い座の下(にこちらがいる)」という意味で、仏教のトップに対する敬称です。
こういった高僧の座るところを「獅子座」といったりします。(もちろん星座ではありません)
お釈迦さまはその威厳などから獅子にたとえられます。
その獅子と同一視される中国の伝説の動物として「狻猊(さんげい)」がおり、この「猊」が由来です。「睨む(にらむ)」という字ではありません。
また、お釈迦様の教えのことを獅子が吠えたように力強く響くことから「獅子吼(ししく)」といったりします。
不規則変化動詞 write – writ -writ
“Gaffgarion: Blood is the price of progress! It is the ink in which history’s pages are writ!”
『剣士ガフガリオン「“犠牲”を支払わない限り、人は前へ進まない!歴史を作ることはできないッ!』
動詞 write(書く)の古い過去分詞です。write – writ -writ
ガフガリオンの英語セリフは「戦争で流れる血は時代が進むための代償だ!その血によって歴史ってのは書かれていくものなンだ!」ぐらいでしょうか。
aye & whelp
“Gaffgarion: You didn’t know? Aye, this little whelp is a son of the great House Beoulve.”
『剣士ガフガリオン「知らなかったのか、アグリアス。そうだ、その小僧の名はラムザ・ベオルブ。あのベオルブ家の一員さ。』
古語で「少年」や「若い男性」を意味する言葉です。
Oxford Dictionary によると “often as a disparaging (軽蔑する) form of address” とのことなので「小僧」の適訳かもしれません。
ちなみに aye も yes の古語で、 nay は no の古語です。“aye aye, sir” の aye です。
敬称 His Excellency
“Delita: His Excellency dispatched me to rescue the princess. And so I did, disguised as one of your own – a sheep in Lion’s clothing. Now I have returned.”
『騎士ディリータ「グリムス男爵の密命により王女を救出するために身分を偽り出兵。任務を果たし、帰還いたしました。』
会話の流れの関係から訳が対応していませんが、日本語だと「閣下」という意味で「主権国家の高官」の尊称として使います。
繰り返しになりますが、二人称の場合は Your Excellency になります。
Chapter 3
不規則変化動詞 forswear – forswore – forsworn
“Orlandeau: What see you in our plight that portends victory? Or have you forsworn the use of your eyes?”
『オルランドゥ伯「この状況のどこを見てそのように楽観的になれるのだ? 貴公の目は節穴ではないのか!』
文語表現で「誓ってやめる、偽誓する」という意味の動詞です。
forget も同じですが、for- が接頭辞辞の場合に「禁止」「除外」「無視」などを追加する場合があります。
英文は「貴公は自分の目の能力をわざわざ放棄したのか?」です。
仮定法現在(祈願)Fortune be with you
“Ramza: I see. Fortune be with you, then.”
『剣士ラムザ「そうか…。じゃ、気をつけて。』
シェイクスピアのころにはよく使われていた祈願文で、動詞の原形をつかって話し手の「期待・願望」を発動します。
もともと昔のゲルマン語(英語のご先祖様)では「願望法・希求法 optative mood」と呼ばれる専用の動詞の変化形がありました。
これが「仮定法現在 subjunctive present」の動詞の形に取り込まれるようになり、最終的に「動詞の原形」で話し手の想定や願望を表現するようになりました。
想定と願望では違うことのように思えますが「こうなったいいな~」という「事実ではない想定」という共通点があります。
いまでもよくみるのは “God bless America!” です。
現代では法助動詞 may を文頭に置くこともよくあり “(May) fortune be with you” となります。
この「May を使った祈願文」は文法書などではイディオム表現として扱われています。
ところが、もともとは「仮定法現在(動詞の原形)による祈願文」で、そこから現代英語になって may が付け足されるようになりました。
ちなみに「幸運の女神」という意味で fortune を使いますが、ローマ神話の女神フォルトゥナに由来します。
古英語の「仮定法 subjunctive mood」については英語 Wikipedia を参照ください。
不規則変化動詞 gird – girt – girt
“Wiegraf: Do not be deceived by his youth. He is a worthy foe. Gird yourselves well for battle!”
『神殿騎士ウィーグラフ「よいか、子供だと思ってなめてかかると痛い目にあうぞ! 用心してかかれッ!!』
文語表現で「巻く、締める」という意味の不規則変化動詞で gird – girt – girt と変化します。
ここでは gird oneself で「覚悟をする、準備する」という意味で使っています。
英語は動詞ごとに5文型がセットされているので、テキトーに目的語をつなげられません。
そのため「他動詞 ⇔ 自動詞」を切り替える構造をもちます。
- 自動詞+前置詞 ⇒ 他動詞
- 他動詞+再帰代名詞(oneself) ⇒ 自動詞
この仕組みをつかって「他動詞+oneself」の形で「自分で○○する」という風に変化させられます。
また「(帯などを)緩める」という意味で ungirt もありますが、こちらも同じく不規則変化で ungird – ungirt – ungirt になります。
名詞 ire
“The Stone: Your ire and despair, their call I heed. And so once more I ask: With me do treat.”
『聖石「汝の絶望と悲憤が我を喚びだした…さあ、我と契約を結べ…』
文語表現で「強い怒り」です。語源はラテン語の ira になります。
「with me do treat」は強調の助動詞 の「do」をつかった倒置っぽい語順です。
より現代っぽい語順に戻すと「Do treat with me」となります。
treat with で「取引する」となります。また名詞 treaty で「条約」を意味します。
感嘆詞 alas
“Belias: You hurry towards your end, alas too soon.”
『魔人ベリアス「あわてるな……楽しみは後にとっておけ……!』
感嘆詞で「悲しみや哀れみ」を示す表現です。Oxford Dictionary には ARCHAIC•HUMOROUS と注記がありました。
ここの英訳は「それほどまでに死に急ぐか!哀れなことよ!」ぐらいでしょうか。
形容詞 meet
“Ramza: For a man of his high station to so prey upon the weak – it is not meet.”
『剣士ラムザ「…………。』
形容詞の meet は古語で「適切な、ふさわしい」という意味があります。
原文の日本語には対応するセリフがないので、勝手に和訳をすると・・・
『高い地位にいる人間がそうやって弱者を食い物にしていいわけがない。』
というような感じでしょうか。
副詞 oft
“Their leaders give them no more than that for which they clamor. It is history’s oldest and most oft-repeated tale.”
『神殿騎士ウィーグラフ「そうした民衆が望むものを執政者たちが用意する…。歴史などその繰り返しにすぎん。』
「しばしば」という意味の古語で often の語源。
過去分詞と一体になり oft-repeated で「頻繁に繰り返された」となります。
ちなみにドイツ語 oft はそのまま英語の often と同じ意味の単語です。
現在完了 I am come
“Belias: I am come.”
『魔人ベリアス「待たせたな…。』
ご存じのように学校で習う範囲では “I have come.” です。
しかし、実は「自動詞の完了形」は昔は「have + 過去分詞」ではなく、「be動詞 + 過去分詞」なんです。
現代の英語でも “He is gone.” とか “I am done with you.” のように、聖書などの堅い文章に限らず、実はけっこうあるので注意してください!
フランス語でもドイツ語でもこの be/have の使い分けは基本文法です。
動詞 behold / 形容詞 fell
“Belias: The battle is now joined, Ramza Beoulve! Behold for true fell pow’r of the Dark!”
『魔人ベリアス「さあ、行くぞ、ラムザ! おまえに魔界の力を見せてやろうッ!』
動詞 behold は「よく見る、刮目する」という意味の古語、文語表現です。
ゲームをやっていると begone と behold は相当な頻度で聞くことになります。
- 形容詞 fell:邪悪な、凶悪な(文語表現)
- 動詞 fell:(木などを)切り倒す
同じく「落ちる」という意味の動詞も不規則変化で過去形が fell なので、混同しないように注意です。
- 切り倒す(規則変化)fell – felled – felled
- 落ちる(不規則変化)fall – fell – fallen
ベリアスのセリフで「the battle is now joined」とありますが、一騎打ちから仲間を加えた連戦へと移るシーンで使われているので、和訳と対応はしていません。
ちなみに “is now joined” の表現ですが、他動詞 join は「受動態」をとることができますが、同時に「現在完了」の意味も強く含んでいます。
Chapter 4
動詞 would that(仮定法過去 were)
“Orlandeau: when you know who your enemies are, but this…ha! Would my good name were our only casualty.”
『オルランドゥ伯「味方が味方の監視をしながらでないと戦えんほどだ。わしの名も地に墜ちたものだな、はっはっはっ。』
文語表現である would that SV の that の省略です。
法助動詞 would は昔は完全な動詞として機能していて、現代英語だと動詞 wish にちかい使い方をします。
法助動詞が普通の動詞の機能も持っているのはドイツ語も全く同じです。
そして wish と同じく that 節の中の動詞に「仮定法過去形 subjunctive past」を使います。
実際に接続詞 that のあとが “my good name were” になっていることがポイントです。
動詞の形が「were」になっているので「仮定法過去」の意味になります。
しかし仮定法過去形になると「反事実(counterfactual)など」を意味します。
仮定法(subjunctive mood)の場合は「動詞の形」に注意して下さい。
さて会話の英文の前半部の意味は、そこから前の会話の流れを受けています。
「(以前の戦争は外敵に対する防衛戦だったのに対し、今回は内戦なので)敵味方が明白な時でも(戦は大変なのに)、今回は・・・」
後半の英文の意味はこうなります。
- Would my good name were our only casualty.
- 我が武名に傷がついたことだけが代償であればよいのだが・・・(それだけでは収まっていないだろう)
敬称 His Holiness
“Templar: And now you will die! Not by any order of His Holiness. I do this for Isilud!”
『神殿騎士メリアドール「フューネラル教皇猊下の命令ではなく死んでいった弟のためにあなたを討つッ!!』
現実世界だと His/Your Holiness はローマ教皇(Pope)の敬称になります。あとは Holy Father という場合もあります。
教皇は英語だと「Pope(Papa 父)」で中国では「教宗」と呼ばれます。
ちなみに「教皇」は日本のカトリック教会が長らく使用を希望していた用語で、メディアなどでも「法王」からの変更されることになりました。
ちなみに「法王」は「仏教のトップ」を表す言葉で、長い間「教皇」と「法王」の呼称はどちらがよいか割れていたようです。
ちなみに「天皇・上皇」が仏門に入り、出家すると呼ばれると「法皇」と呼ばれます。
仮定法現在 So be it
“Delita: My choice is made. If it means I must slay each of you to the man, so be it!”
『騎士ディリータ「わかっている! だから、貴様たちを皆殺しにしようとしているんだよ!』
動詞の原形を使った仮定法現在(subjunctive present)です。
古い表現ではあるものの、今でもイディオム的によく使われる表現です。
日本の英文法書ではなぜか「仮定法」を「仮定法過去」と「仮定法過去完了」だけで区別しています。
しかし本来は「仮定法過去 VS 仮定法現在」で区別するのが英語の動詞のシステムです。
この違いは古英語に由来する動詞の形なので、日本の英文法書の解説だけだときちんと理解できないと思います。
ちなみにドイツ語では「接続法 I 式(仮定法現在)」と「接続法 II式(仮定法過去)」の2つの区別があります。
英語の仮定法に困ったら、ドイツ語文法を勉強するとうまく理解できます。
さて仮定法過去は「もう起こらなそうなことを想定する動詞の形」です。
そのため動詞の仮定法過去形は「反事実・実現しなそうな願望」などに使用します。
一方で、仮定法現在は「起こりそうなことを想定する動詞形」を表現する動詞の形です。
つまり仮定法現在の形は「反事実」でなくて「これから起こりそう」な想定で使用します。
もともと仮定法は「願望法・祈願法 optative mood」など呼ばれる「想定を表現する形」から派生しています。
つまり、これから事実になるかもしれないことを「想定」する場合は「仮定法現在(動詞の原形)」を使います。
現代英語は「命令法」でも「動詞の原形」と使いますが、たまたま同じ形にまとまりました。
“so be it” が現代で使われる意味は「(ことの是非は別として、そうなるならば)それでいい」という感じです。
歴史的には howbeit とか sobeit(連結して一語) もあります。
今でも比較的よく使われているのは albeit(≒ although it be) です。
昔の英語は語順の決まりがゆるかったので “It be so(それはそのように存在せよ)” と捉えてよいと思います。
シェイクスピアの時代では “Know you not?(Don’t you know?)” とは割とよくあります。
現代英語でもこのような語順のフレーズはよく残っています。
- You are very good at it, and so am I.”
- なかなかうまいじゃないか、そしてわたしも同様だ(負けてはいないぞ)。
- ⇒ わたしも「そう so」なんです
また英文は「皆殺しにせねばらんというのであれば、そうするまで!」ぐらいの感じです。
ちなみに to the man はどう調べてもわかりませんでした。
そこでカナダ人の友達に尋ねたら「確かに文法はすこし変だよね。意味はたぶん to the (last) man だと思う」と教えてもらいました。
なるほど!「その最後の人まで全員」ってことですか!さすがは英語ネイティブ!
前置詞 amidst
“Barich: Amidst the coming chaos, who could say how Duke Larg might meet his end?”
『神殿騎士バルク「毒による混乱のおかげでラーグ公を暗殺する方が簡単だろうな。』
前置詞 amid と同じで「~の最中に、~の真ん中に」という意味です。
ただ意味は同じでもニュアンスは文語調になります。
among も同様に amongst という表現があります。
名詞 apothecary
“Zalbaag: Excellency, are you harmed? Someone! Summon an apothecary at once!”
『聖将軍ザルバッグ「閣下、大丈夫ですか!!誰かッ! 薬師を呼べッ!!』
「薬屋」を意味する古語。
ちなみにFFシリーズを通して出てくる「職業」の「アイテム士」や「薬士」は Chemist となっています。
数詞 twain
“Larg: My head…it is as though it were split in twain. But I do not think it serious. I just need…some time.”
『ラーグ公「…頭が割れそうだ。胸がムカムカする……。だが、大丈夫だ……。しばらくすれば…、気分もよくなるだろう……。』
「two(2)」の古いスペリング。2は two だと思い込んでるところにこれですから・・・。
ただ two は too や to と発音が同じなので、リスニングは文法や文脈を理解し、よくいう言い回しになれておかないと痛い目を見ます。
- two too many(2つ多すぎる)
- ten to two(2時10分前)
早口言葉でも “I have two fish but I have to fish…” のような出だしの物があります。
そう考えると個人見解ではありますが two は twain でもいいかな?と思います。
仮定法現在 far be it from me to do
“Elmdore: But far be it from me to turn away the one Beoulve to grace us with his presence!”
『エルムドア侯爵「貴様もこの墓地で朽ち果てるがいい!』
動詞の原形 be をつかった仮定法現在(subjunctive present)です。
am / are / is は原則「事実」を意味する「直説法 indicative mood」になります。
現代ではイディオム的に使われて “far be it from me to do” 「~することは私の真意ではない」 となります。
「私の真意とは遠い」⇒「(そう見える可能性は大いにあるが)そういう意図ではない」
原文は倒置になっているので語順を戻しますと・・。。
“It be far from me to do ~” となり、仮主語の it と真主語の to do で構成されています。
ただ Google で調べた限りでは “far be it ~” の形でほぼ固定されて使われているようです。
ところで、お分かりのように英語は日本語とかなり違っています。英文は・・・
“Elmdore: But far be it from me to turn away the one Beoulve to grace us with his presence!”
「あの(高貴なる)ベオルブ家の人間が(この戦いに)自ら花を添えようというのだ、この栄誉を無下にすることなど私にできようか(いや、できまい)!」
と、いう感じでしょうか。英語のほうが断然、雰囲気が出ています。
動詞 mislike
“Ramza: I mislike this. There is something familiar – yes. The battle with Cúchulainn, with Belias…”
『剣士ラムザ「……嫌な雰囲気がする。この気配は……、そうだ、キュクレインやベリアスと対峙したときのあれだ……。』
mislike は「dislike キライ」の古い言い方です。
現在完了 my patience is grown thin
“Folmarv: Refuse, and she dies ere the word leaves your lips. Are we of an understanding? My patience is grown thin.”
『神殿騎士ヴォルマルフ「言っておくが、貴様はこの要求を拒絶することはできん…。渡さぬときは妹の命はないと思え。さあ、私の言葉を理解したならさっさと渡してもらおうか…。』
第3章のブログ記事でご紹介した “I am come.” と同じで、自動詞の完了形は「be動詞+過去分詞」で表現します。
grow は SVC の第二文型をとりますが「目的語がない」ので「自動詞」扱いになります(厳密には「不完全自動詞」と呼ばれます)。
今回の意味だと現代では “My patience has grown thin.“ が一般的です。
文法構造の解説はこちらのブログをどうぞ。
仮定法過去の倒置 Had I but
“Ultima: Had I but…more power…”
『聖天使アルテマ「モット……チカラヲ………』
スクリプト全体を通してよくみる 副詞 but を only と同じように使うものです。
“Had I” の部分は仮定法過去(subjunctive past)です。
倒置を元に戻すと “If I had but (≒ only) more power.” になります。
語順はともかく、意味としては現代でも使うように “If only ~” で「~であったならば・・・」という後悔・無念の表現だと思います。
倒置に関しては、現代でも似たような表現は残っていて、「have + 過去分詞のペア」で if の省略の時に運用するのが通例です。
- (倒置前) If I had done/been ~
- (倒置後) Had I done/been ~
これはラスボスの最後のセリフです。これでエンディングへ!
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