英語の「名詞 noun」とはなんですか?
この質問に正確に答えるのはとても難しいです。
一般的な「名詞の解説」はこのようなものが多いと思います。
『人や物の名前を表す言葉』
日本語の場合はこれで正解かもしれません。
しかし英語の「名詞 noun」にはもうすこし踏み込んだ理解が必要です。
名詞とは「英単語の種類」のこと
実際に英語の名詞の例を見ていきます。
- book 本
- water 水
- John(人名)
- Jane(人名)
- Japan 日本
- China 中国
- japan 漆器
- china 陶磁器
ここまでだと名詞は「人や物の名前」に見えます。
では日本語で次の3つの違いをみていきましょう。
- やさしい
- やさしく
- やさしさ
日本語では大きな違いがないように思います。
これらを英単語 kind(やさしい、親切な)をつかって対応させてみます。
- やさしい – kind
- やさしく – kindly
- やさしさ – kindness
日本語と同じく英単語にも変化が生まれました。
英語は英単語をグループ分けをしていて、これを「品詞」といいます。
全ての英単語には「品詞」が設定されているので、品詞を割り当てます。
- やさしい – kind(形容詞)
- やさしく – kindly(副詞)
- やさしさ – kindness(名詞)
英単語 kindness (やさしさ、親切さ)の品詞は「名詞」になります。
人や物の名前っぽくなくても「名詞」
日本語だと「やさしさ」は「状態・性質」を意味しています。
ですので一見すると「状態・性質」は「形容詞 adjective」っぽく思えます。
しかし英単語の「品詞」は言葉の意味で決まるものではないんです。
英語の「名詞 noun」は「人や物の名前」というより「英単語の種類」のことなんです。
ほかにも「名詞っぽくない名詞」をご紹介します。
- bravery 勇気
- beauty 美
- novelty 斬新さ
- uncertainty 不確実性
これらの名詞には対応する「形容詞」が存在します。
- bravery(名詞)⇔ brave(形容詞)
- beauty(名詞)⇔ beautiful(形容詞)
- novelty(名詞)⇔ novel(形容詞)
- uncertainty(名詞)⇔ uncertain(形容詞)
このように英単語の意味だけで品詞は決められません。
全ての英単語に設定されている「品詞」は辞書に載っています。
つまり「英単語」を適当に使うと意味が通じなくなるんです。
では「名詞の使用ルール」を見ていきましょう。
名詞の使用ルールは4パターン
英語の名詞は4つのパターンでつかうことができます。
- 主語(S)
- 補語(C)
- 目的語(O)
- 前置詞とペア
英文法では「前置詞とペア」だけ異なる使用ルールが適応されます。
これらを「文の要素 SVOC」に当てはめて整理します。
- 主語 ⇒ 文の要素(主語 S)
- 補語 ⇒ 文の要素(補語 C)
- 目的語 ⇒ 文の要素(目的語 O)
- 前置詞とペア ⇒ 文の要素に入らない(おまけ要素 M)
これを図にまとめてみます。
文の要素は「動詞」が決定する「英文の基本構造」のことです。
英単語は「品詞」ごとに「文の要素」と「おまけ要素」のどちらで使うか決まりがあります。
副詞や前置詞は「おまけ要素」で使います。
① 名詞とつながって「副詞のまとまり」に変化する
② 副詞に変化した「前置詞+名詞」は「おまけ要素 M」で使用する
つまり前置詞と名詞をつなげれば自由に名詞を使うことができます!
「文の要素」と「品詞」の関連を詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
ではここから名詞の使用ルール4パターンの例文に進みます。
名詞の使用ルールを例文で解説
① 名詞を「主語 Subject」で使用する
- Family comes first.
- 家族は 来る 最初に。
- ≒ 家族が一番大切だ。
- Our secret is out.
- 我々の秘密は 存在する 外に。
- ≒ 我々の秘密はバレている。
② 名詞を「補語 Complement」で使用する
- Victory is ours.
- 勝利は = 我々のもの。
- ≒ 我々の勝利だ。
- Arthur and Agatha are siblings.
- アーサーとアガサは = きょうだい。
- ≒ アーサーとアガサはきょうだいです。
③ 名詞を「目的語 Object 」で使用する
- We got serious problems.
- 我々は 得た 深刻な 問題を。
- ≒ 我々は深刻な問題を抱えた。
- We know nothing.
- 我々は 知っている ゼロのこと。
- ≒ 我々は何も知らない。
④ 名詞を「前置詞とペア」で使用する
名詞を前置詞とペアにすると品詞は「まとめて副詞」として使います。
和訳するときは「前置詞+名詞」をまとめるとうまくいきます。
前置詞とペアの名詞の和訳
- in his house(彼の家の中で)
- on the bridge(その橋の上で)
- by that river(あの川のそばで)
- for this purpose(この目的のために)
- from this point(この点から)
前置詞とペアの名詞の使用ルール
英語では「副詞 adverb」は「文の要素に入らない(おまけ要素)」になります。
基本的には名詞であっても前置詞とつながると「おまけ要素」で使用してください。
ではここから例文を見ていきます。
- That is not bad for your first time.
- それは = 悪くない あなたの初回としては。
- ≒ 君が初めてやったにしては悪くはない。
- It is a race against time.
- それは = 競争 時間に対する。
- ≒ それは時間との競争だ。
使い方によって「① 回数」と「② 時間」の2通りあるので注意ください。
ここまでで「名詞の使用ルール」はわかりました。
しかし英単語には「多義語 polysemy」といって見た目は同じなのに意味が2つ以上ある英単語があります。
このような多義語には品詞が2以上セットされていることがほとんどです。
多義語であっても「名詞」の使用ルールをつかって見抜くことができます
名詞は英単語のポジションをみればわかる
名詞には4パターンの使用ルールがセットされていました。
- 主語(文の要素)
- 補語(文の要素)
- 目的語(文の要素)
- 前置詞とペア(おまけ要素)
ということはこの4パターンに入る英単語は「名詞」ということです。
ためしに「主語」に○○を入れてみます。
- ○○ is right.
- 〇〇 = 正しい。
このケースでは○○が主語になるので○○は名詞扱いです。
ほんとにそうなるのかいろんな英単語を入れてみます。
- He is right.
- 彼は=正しい。
- 彼は正しい。
- Might is right.
- 力は=正しい。
- ≒ 強いものが正義だ。
- It might be right.
- それは(選択肢として)= 正しい。
- ≒ それは正しいかもしれない。
いかがでしょうか?
主語に入る英単語には「名詞」としての品詞ルールが強制されます。
英文法では名詞だけでなく英単語は品詞の使用ルールに従うのが基本です。
つまり英単語の使用ルールを知っていれば「品詞を特定できる」ということです。
名詞の使用ルールからわかる範囲はこちら。
- ① 主語 ⇒ 「名詞」
- ② 目的語 ⇒ 「名詞」
- ③ 補語 ⇒ 「名詞」もしくは「形容詞」
- ④ 前置詞とペア ⇒ 「名詞」
この名詞を使用ルールから品詞を特定するのは多義語で有効です。
しかし一番効果を発揮するのは「動詞の変化形(準動詞)」のケースです。
動詞の変化形を名詞の使用ルールで見切る
英語には3種類の「動詞の変化形(準動詞 non-finite verb)」があります。
- 不定詞:to do / to be / to have
- 動詞のING形:doing / being / having
- 過去分詞:done / been / had
この動詞の変化形の品詞は「動詞」ではなくなるんです。
だから不定詞や動詞のING形を「動詞」として使うことはできません。
その代わりに「別の品詞」がセットされます。
では動詞の変化形の品詞の一覧をみていきます。
動詞の変化形の中で「名詞」として使用できるのは2種類です。
- 動名詞 gerund
- 不定詞(名詞用法)nominal infinitive
では残りの変化形もあわせて確認します。
① 動詞のING形の品詞
動詞のING形は3種類ありますが異なる用語がついています。
歴史の流れの中で同じ形になるまで別々のモノだったことが理由です。
- 動名詞 gerund
- 現在分詞 present participle
- 分詞構文 participle clause
現代英語ではみんな同じ見た目の「ING形」です。
これらを品詞ルールで見分けがつくように言い換えます。
- 動名詞 ⇒ ING形 名詞用法(nominal)
- 現在分詞 ⇒ ING形 形容詞用法(adjectival)
- 分詞構文 ⇒ ING形 副詞用法(adverbial)
② 不定詞の品詞
不定詞(infinitive)は「to + 動詞の原形」をつかう用法です。
もともと「動詞の原形」だけで「動詞を名詞として使う用法」がありました。
現代英語では「to do / to be」の形で「ひとまとまり」で扱います。
- 不定詞の名詞用法(nominal infinitive)
- 不定詞の形容詞用法(adjectival infinitive)
- 不定詞の副詞用法(adverbial infinitive)
では「動名詞」と「不定詞の名詞用法」を見切ってみましょう。
動名詞と不定詞の名詞用法の例文
「名詞用法」の見分け方はカンタンです。
ING形や不定詞のポジションを見ればいいだけです。
- 主語
- 目的語
- 補語
- 前置詞とペア
それでは、1つずつ見ていきましょう。
動名詞と不定詞の違いの和訳
動名詞と不定詞の名詞用法はニュアンスが少し違います。
- 動名詞:実行していること ⇒ 事実
- 不定詞:実行していないこと ⇒ 予定
このニュアンスを踏まえて、和訳は次のようにセットします。
- 動名詞:すること(事実)
- 不定詞:する方向(予定)
このようなニュアンスの違いは必ず発動するわけではありません。
ぼんやりとしたイメージとして持っていただけるとよいと思います。
詳細はこちらをご参考ください。
① 主語に「動名詞」と「不定詞」を入れる
- Running isn’t an option now.
- 逃げること =でない 選択肢 今。
- ≒ 逃げることは今、選択肢には無い。
- To love oneself is the beginning of a lifelong romance.
- 愛する方向 自らを = 始まり(←)人生の長さのロマンスの
- ≒ 自分を本当に大切にすることが人生の長きにわたるロマンスの始まりである。
② 補語に「動名詞」と「不定詞」を入れる
補語に入る品詞は「名詞」と「形容詞」の2つです。
ここでは「名詞」の例文だけ紹介します。
- The best preparation for tomorrow is doing your best today.
- 最善の準備 明日に向けての = すること あなたの最善を 今日
- ≒ 明日に向けた最善の準備は今日、最善をつくすことだ。
- Our goal is to create ever-lasting business.
- 我々のゴールは = 生み出す方向 ずっと続いていく ビジネスを。
- ≒ 我々の目的は永続するビジネスを生み出すことである。
「進行形」や「be to 構文」として覚えなくていい理由はこちらをどうぞ。
③ 目的語に「動名詞」と「不定詞」を入れる
- I like seeing you in serious mode.
- 私は 好き みることを あなたを 真剣なモードの中に。
- ≒ 君がマジになっているのをみるのが好きだ。
- I didn’t mean to offend you.
- 私は 意図しなかった 不愉快にさせる方向を あなたを。
- ≒ あなたを傷つけるつもりはなかったんです。
④ 前置詞とペアに「動名詞」を入れる
不定詞は「前置詞とペア」にはできません。
私見ですがおそらく理由は2つあると思います(詳細ご存じの方がいればご教授ください)
- 不定詞の to が別の「前置詞」と重なってしまうから。
- 昔、動名詞はもともと「前置詞とペア」の専用の形だったから。
では例文を見ていきます。
- I was so close to giving up but I quit quitting.
- 私は(過去)=そんなに近かった あきらめることに しかし 私は やめた やめることを。
- ≒ あやうくギブアップするところだったけど、やめるのはやめた。
- You can’t blame gravity for falling in love.
- あなたは 可能性として 責任をかぶせられない 重力に 落ちることのために 恋に
- ≒ 恋に落ちることを重力のせいにはできないよ。
ING形と不定詞の名詞用法とは「名詞」の使用ルールで決まります。
和訳で区別する意味はあまりないので、英文法の仕組みが見極められればOKです。
名詞句と名詞節の意味は使用ルール
英語には「名詞句」と「名詞節」という用語が出てきます。
まず「句」と「節」を確認です。
- 句 phrase:2つ以上の英単語のまとまり(文章 SV を含まない)
- 節 clause:2つ以上の英単語のまとまり(文章 SVを含む)
カンタンに言い換えるとこうなります。
- 句:フレーズをひとまとめで使う時の呼び方
- 節:文章をひとまとめで使う時の呼び方
英語は「英単語」だけでなく「句」と「節」もひとまとめで名詞のように扱えます。
- 名詞句 nominal phrase
- 名詞節 nominal clause
「フレーズ(句)」を名詞の使用ルールに合わせると「名詞句 nominal phrase」と呼ばれます。
- 主語に「フレーズ」を入れる ⇒ 名詞句
- 補語に「フレーズ」を入れる⇒ 名詞句(もしくは形容詞句)
- 目的語に「フレーズ」を入れる⇒ 名詞句
- 前置詞とペアに「フレーズ」を入れる ⇒ 名詞句
この仕組みは「文章(節)」でも同じです。
「文章(節)」を名詞の使用ルールに合わせると「名詞節 nominal clause」と呼ばれます。
- 主語に「文章」を入れる ⇒ 名詞節
- 補語に「文章」を入れる⇒ 名詞節(✖ 形容詞節)
- 目的語に「文章」を入れる⇒ 名詞節
- 前置詞とペアに「文章」を入れる ⇒ 名詞節
補語で使う場合は「名詞」と「形容詞」の両方が可能です。
形容詞の使用ルールもあわせてご確認お願いします。
このように「フレーズ」や「文章」も名詞の使用ルールで文法用語が決定されます。
名詞は「人と物の名前」という理解はいったん忘れてしまうのが良いと思います。
名詞を英文法の「仕組み」として理解すると、新たな視点で英語が見えると思います。
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