「現在進行形の解説」は前編・後編の構成です。
このブログは「後編」になります。前編の内容はこちらからご確認ください。
現在進行形と呼ばれる文章は「現在時制+進行相」のことです。
英語の歴史をみると「be動詞 + ING形」では「動詞 = be動詞」と解釈できます。
ではここから「現在進行形」と丸暗記する危険性について話を進めます。
よくある英語の文法解説では、次の文の「動詞」はどれになっていますか?
・Melissa is going.
おそらく一般的な話は下のどちらかになると思います。
- ① going = 動詞(* be動詞 = 助動詞)
- ② be動詞 + going をまとめて動詞
日本の英文法は「動詞」の解釈が大きく違うようです。
このような違いが生まれる理由は「英文法をみる視点」にあります。
意味論文法 VS 統語論文法
英語に限らず文法には大きく2通りの解釈があります。
それぞれ「意味論文法 semantics」と「統語論文法 syntax」と言います。
【 意味論文法 Semantics 】
・英文の意味やニュアンスを重視した英文法
【 統語論文法 Syntax 】
・英文のルールやシステムを重視した英文法
ではこの2つの文法解釈が「英文法」にどう影響しているのでしょうか?
あくまで個人的な感想ですが、比べてみたいと思います。
【 英語で書かれた英文法 】
- 「意味論文法 Semantics」と「統語論文法 Syntax」の2種類ある
- 「品詞」の使用ルールやほぼ全ての文法用語に明確な定義がある
- 「相 aspect」の解説もよく見る
- 「相」と「時制」を分離するため「英語に未来時制がない」という解説もよく見る
【 日本でよくみる英文法 】
- 「意味論文法 Semantics」のほぼ独占状態(≒ 和訳原理主義)
- 「品詞」の使用ルールよりも「日本語らしい訳」が優先される
- 「相 aspect」の解説はほぼ存在しない
- 「相 aspect」が「時制 tense」の一部として扱われている(複合時制)
- 「~形」の用語に統一性がない(例:進行形、未来形、原形、現在形、過去分詞形など)
日本の一般的な英文法は「意味論文法 Semantics」なので、その場の都合で和訳がつけられがちです。
それゆえ英文と和訳をいくら覚えたところで、正確に英語の仕組みを理解する助けにはなりません。
また〇〇形という日本の英文法用語の整合性は崩壊レベルです。
- 現在進行形 ⇒ 古い文法解釈で「複合時制」の一つ。「現在時制+進行相」が現代文法の解釈。
- 未来形 ⇒ 英語の動詞は未来形に変化しません。存在しない「形」を使う理由が分かりません。
それゆえ、ここから英語の文法用語を正確に使用し、統語論文法で文構造を的確に分析していきます。
では「現在時制+進行相(現在進行形)」を「意味論文法」と「統語論文法」で比較していきます。
【 例文 】
- She is having lunch there.
- 彼女はそこで昼食を食べている。
- ≒ 彼女は = とっている 昼食を そこで。
「意味論文法 Semantics」は意味やニュアンスを重視するので、文法をゆるく解釈します。
それゆえ「現在分詞 having」を『動詞』とします。
もちろん英語の英文法解説でもこのように解釈しているものも多くあります。
一方「統語論文法 Syntax」では「現在分詞 having」に「補語 C」と「動詞 V’」の2つの役割があります。
その理由は「現在分詞」が「形容詞 adjective」と「動詞 verb」の2つの機能をもつからです。
『形容詞であり動詞?』なんのこっちゃ?
そう思われるのも無理はありません。この「動詞 verb」という用語は混乱を招きやすいんです。
なぜなら「動詞 verb」には「品詞」と「文の要素 SVOC」の2つの意味があるからです。
英語の Verb は「品詞」と「文の要素」の2つの意味
日本でも英語でも「動詞 verb」という用語はややこしいです。
さらに「文の要素」と「品詞」の「動詞 verb」が区別されていない英文法解説も多いです。
一応、文の要素としての「動詞 verb」には「述語動詞」という表現もありますが、「述語」は英語に無くてもよい用語なのであえて使いません。
そこで「動詞」と「動語」という2つの用語をつかって区別することにします。
「動語」の命名の理由はカンタンです。
- 品詞グループ ⇒ 〇〇詞(名詞、形容詞、副詞など)
- 文の要素グループ ⇒ 〇〇語(主語、補語、目的語など)
つまり「詞」と「語」で区別できるんです。
- 名詞、動詞、形容詞、副詞
- 主語、動語、目的語、補語
というわけで、あるま・まーた用語で「文の要素としての動詞」を「動語 V」とします。
では「動詞」と「動語」を図でみていきましょう。
英語の Verb も日本語の動詞と同じように区別します。
- 品詞の Verb ⇒「動詞」
- 文の要素の Verb ⇒「動語 V」
「動語 V」は「主語 S」「目的語 O」「補語 C」の仲間になります。
ではこの違いをより詳しくみていきましょう。
これで「動詞」と「動語 V」が区別できました。
【 動語 V の役割 】
- 「動語 V」だけが英語の文型(5文型)を決める機能をもつ
- メインの文章の「動語 V」の品詞は「動詞」でなければならない
- メインの文章の「動語 V」の「動詞」が「時制 tense」を決定する。
このように「動語 V」に入る品詞は「動詞」だけ!というルールがあるんです。
準動詞は「動詞」ではなくなるが「動語 V」の機能を持つ
ここからは準動詞(動詞の変化形)のもつ機能に進みます。
【 準動詞(動詞の変化形) 】
- 不定詞(to do / to be など)
- 動詞のING形(doing / being など)
- 過去分詞(done / been など)
「相 aspect」もそれぞれに設定されています。
【 準動詞と相(aspect) 】
- 未然相 ⇒ 不定詞(to do / to be など)
- 進行相 ⇒ 動詞のING形(doing / being など)
- 完了相 ⇒ 過去分詞(done / been など)
次に「品詞の変化」です
【 不定詞の品詞変化 】
- 名詞用法(名詞)
- 形容詞用法(形容詞)
- 副詞用法(副詞)
【 動詞のING形の品詞変化 】
- 動名詞(名詞)
- 現在分詞(形容詞)
- 分詞構文(副詞)
【 過去分詞の品詞変化 】
- 過去分詞(形容詞)
- 分詞構文(副詞)*being 省略と解釈も可
- have + 過去分詞 *例外用法:動詞の一部)
昔々、過去分詞はちょっとムチャをやって「have + 過去分詞」の例外用法が生まれました。
しかし動詞の変化形が単独で「動詞」として「 動語 V」になることはありません。
では図を使って「品詞の変化」を確認しましょう。
いろいろ出ましたけど、動詞の変化形の「品詞」と「動語 V の機能」は覚えておいてください。
【 動詞の変化形の特徴 】
- 動詞の変化形の「品詞」は「動詞」ではなくなる
- 動詞の変化形は「サブ動語 V’(V ダッシュ)」の機能を持つ
では先ほどの「現在分詞(ING形の形容詞)」の例文をつかって再確認します。
現在分詞などの「動詞の変化形」は「動詞」ではなくなるんです。
しかし「動語 V」としての機能を発動できます。
それゆえ “having” は “lunch” を”サブ目的語(O’ = Oダッシュ)にできるんです。
【 統語論文法の解釈 】
・She is having lunch there.
” is ” ⇒『動詞』
- 品詞:動詞
- 文の要素:メイン動語(V)
” having “ ⇒『現在分詞』
- 品詞:形容詞
- 文の要素:サブ動語(V’ = Vダッシュ)
では「動詞」と「現在分詞」の違いを図で確認しましょう。
「意味論文法」では 「doing = 動詞」と捉えます。
しかしこれは「be動詞+現在分詞」の場合にしか機能しません。
では次に「意味論文法」が機能しない例をみていきます。
意味論文法では英文法の仕組みを説明できない
では意味論文法が破綻するケースをみていきます。
- ① She is driving a car.
- ② She seems driving a car.
どちらの文でも “driving” は現在分詞です。
まず確認ですが「be動詞」も「seem(~に見える)」も「第2文型 SVC」をとることができます。
- ③ She is nice.
- ④ She seems nice.
“nice” は形容詞ですので「補語 C」に入れることができます。
次に “walking” も「現在分詞」なので同様に「補語 C」に入れることができます。
- ⑤ She is walking.
- ⑥ She seems walking.
では最初に使った①②の例文を「意味論文法」で解釈します。
SVCをつくる “seem” がメインの動詞なので “driving” を形容詞(現在分詞)で解釈せざるを得ません。
やはり『”driving” =動詞』と解釈するのはムリが生じてくると思います。
be動詞のケースだけを例外扱いすると、そのほかの SVC パターンの動詞に応用できないジレンマに陥ります。
しかし「統語論文法 Syntax」では「動詞の変化形」の「品詞」と「動語 V’」の両方を活かして文を解釈できます。
現在分詞 “driving” の品詞は「形容詞」ですが「動語 V」として機能を持っています。
そこで “driving” は「形容詞 + サブ動語 V’」として「補語 C」に入り、そして “a car” は「サブ目的語 O’」 になります。
では次に同じ動詞のING形である「動名詞」との比較もしてみましょう。
現在分詞と動名詞も「統語論文法」ならよくわかる
ここまで「現在進行形」と呼ばれる英文を「統語論文法 Syntax」で解説してきました。
では「現在分詞(形容詞)」の仲間の「動名詞(名詞)」も解説していきます。
例文はブログの初めに紹介したものです。
- ④ My daddy is driving a car.
- ⑤ My hobby is driving a car.
- ④ 私の父は車を運転している。
- ⑤ 私の趣味は車を運転することです。
まずは「意味論文法」の解釈をみていきます。
主語が “hobby” と “daddy” の違いで、英文解釈がここまで違ってきてしまいます。
どちらも主語なので同じ名詞なのにヘンな話です。
名称も「進行形」と「動名詞」と文法用語のバランスが失われています。
しかし、実際に違うのは “driving” の品詞だけです。
まず「補語 C」について再確認です。
【 補語 C に使用可能な品詞 】
- ① 形容詞
- ② 名詞
- ① Naomi is tall. (tall = 形容詞)
- ② Oscar is a student. (student = 名詞)
【 補語 C に使用可能な “driving” の品詞 】
- ① 形容詞 ⇒ 現在分詞(動詞の形容詞変化形)
- ② 名詞 ⇒ 動名詞(動詞の名詞変化形)
以上の知識をもって「統語論文法」で再解釈を行います。
動名詞も現在分詞と同じように第2文型 SVC で解釈できます。
なぜなら動名詞は「動詞の変化形」の「名詞」であり「動語 V」の機能を持つからです。
「動名詞」と「動詞」の比較を図で確認しましょう。
動詞の変化形には「品詞」と「動語 V」の機能があるので、両方の意味を理解しながら英語を組み上げていくことができます。
これまでみてきたようにING形には3種類の「品詞ルール」が適応されています。
- 現在分詞 ⇒ ING形 の形容詞用法
- 動名詞 ⇒ ING形 の名詞用法
- 分詞構文 ⇒ ING形 の副詞用法
あえて「現在進行形」を特別扱いしないほうが、全体としてバランスの取れた英文法を機能させることができます。
和訳に便利な「意味論文法 Semantics」だけに頼ることなく「統語論文法 Syntax」の視点も同時に持つようにしていきましょう。
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