英語を学んでいて「動詞」の意味に戸惑ったことはありませんか?
英文法にでてくる「動詞」を英語で verb といいます。
日本語の動詞では「行動を表す言葉」という理解ができます。
ところが英語の verb には日本語の「動詞」よりも広い機能があります。
動詞とは「英単語」の種類のこと
英単語 like は動詞で「好き」を意味することができます。
さっそく例文をみていきます。
- I like him.
- I am like him.
これらを和訳してみます。
- 私は彼が好き。
- 私は彼と似ている。
同じ英単語 like をつかったのに全然違う意味になりました。
なぜなら英単語 like には動詞以外の使用法もあるからです。
- 動詞 like:好き
- 前置詞 like:~のような
英単語の品詞にはそれぞれ使用ルールがセットされています。
そのため英単語 like がどのように使用されているかを見抜く必要があります。
そのヒントとして英語の「動詞」の使用ルールを見ていきます。
- I am like him.
- 私は ~である 彼のように
be動詞 “am” が「動詞」なので “like” は「動詞になれない」のです。
それゆえ like を「前置詞」として機能させます。
英文の基本は「1つの文章に動詞はひとつだけ!」という仕組みを覚えておいてください。
では次に「動詞の変化形」について確認していきます。
- I walk here
- I am walking here.
- I like walking here.
それぞれ和訳をしてみます。
- I walk here.
- 私はここで散歩をする。
- I am walking here.
- 私はここで散歩をしている。
- I like walking here.
- 私はここで散歩するのが好きだ。
ここで重要ポイントの確認です。
動詞の変化形 “walking” の品詞が「動詞」になる可能性はゼロです。
英語の仕組みでは動詞は変化すると「動詞」ではない品詞に変わってしまうんです。
- I am walking here.
- 動詞 am の補語に入る「現在分詞」
- 現在分詞 ⇒ ING形を形容詞として使う時の用語
- I like walking here.
- 動詞 like の目的語に入る「動名詞」
- 動名詞 ⇒ ING形を名詞として使う時の用語
このような「動詞の変化形」のことを「準動詞」といいます(詳しくは後述)
実は「動詞の変化形」を「意味上は動詞」とする考え方も存在しています。
なぜなら英文法にも大きく2通りの基準があるからです。
- 意味論文法 Semantics:意味・ニュアンス重視の英文法
- 統語論文法 Syntax:ルール・システム重視の英文法
日本でよく見る英文法は意味論文法が圧倒的な割合を占めていると思います。
しかし統語論文法で見た場合「動詞の変化形は動詞ではなくなる」ことを覚えておいてください。
動詞の変化形の文法解釈について知りたい方はこちらをどうぞ。
統語論文法は「英単語の使用ルール」を重視して英語をとらえます。
ここからは「動詞」を「品詞 + 文の要素」の視点から解説してまいります。
英語の Verb は「動詞」と「動語 V」
ここまで「品詞」としての「動詞」を紹介させていただきました。
そして「動詞」は「文の要素 SVOC」でも使われている用語です。
- S 主語 subject
- V 動詞 verb
- O 目的語 object
- C 補語 complement
どうも「動詞」の機能がたくさんありすぎるようです。
そこで「品詞」と「文の要素 SVOC」の2点に分離して考えます。
まず文の要素と品詞の意味を確認されたい場合はこちらをどうぞ。
英語の Verb は「品詞」と「文の要素」のどちらでも使われます。
日本語の「動詞」の使い方と比べて確認します。
まず日本語の英文法用語の「動詞」が使われるケースです。
- 品詞:名詞、動詞、形容詞、副詞、前置詞
- 文の要素:主語、動詞、目的語、補語
日本の文法用語には1つの決まりが見えます。
- 品詞:○○詞のグループ
- 文の要素:○○語のグループ
日本語の「動詞」は「〇〇詞」と「〇〇語」のどちらにも使われています。
これらを英語の英文法用語に切り替えて確認します。
- 品詞(parts of speech)
- noun 名詞
- verb 動詞
- adjective 形容詞
- adverb 副詞
- preposition 前置詞
- 文の要素(sentence elements)
- subject 主語
- verb 動詞
- object 目的語
- complement 補語
英語 verb だと「〇詞 / 〇語」の区別はありません。
日本語でも「動詞」が文の要素である「〇〇語」グループに混じってしまっています。
しかし事実として「動詞 Verb」は「品詞」でも「文の要素」でもどちらにも登場します。
英語の仕組みは「品詞」と「文の要素」が混ざってしまうとうまく機能しません。
そこで日本語の「動詞」と英語の「verb」を区別をして英語を理解していきます。
英語の Verb を理解するポイントは2つです。
- 品詞としての Verb
- 文の要素としての Verb
実際に英語の英文法用語 “Verb” は「品詞」と「文の要素 SVOC」の両方を意味します。
この2つを区別して英文法の仕組みを見ていきます。
実は日本語の英文法用語のほうが英語よりも便利なところもあります。
日本の英文法用語では「品詞」と「文の要素」には別々の用語が割り当てられています。
- 品詞は・・・○○詞のグループ
- 文の要素は・・・○○語のグループ
日本語の「動詞」だけでは英語の Verb の2つの役割を区別できなくなります。
そこであるま・まーたでは「文の要素」を表す用語として「〇〇語」を使って区別します。
- 「動詞 verb」⇒ 品詞の verb
- 「動語 verb」⇒ 文の要素の verb
こうすることで英語の verb の2つの意味を明確に識別できるようになります。
英語の verb には「品詞」と「文の要素」の両方の意味があります。
英語の英文法書や Wikipedia などで英文法を学ぶ時はこの点に注意してください。
というわけで「動語 V」は「文の要素としての動詞」の機能を表す用語としてご理解ください。
日本の英文法用語「述語動詞」に注意
日本の英文法で文の要素 V を「述語動詞」と呼ぶケースがよくあります。
しかし「述語」の解釈にブレがみえるので少し整理をしてみます。
英語の文法用語の「述語 predicate」には2通り解釈が存在します。
- phrase structure grammar(伝統的な解釈)
- dependency grammar(近年の解釈)
現状として「そもそも述語とはなに?」という定義に2通りあるということです。
さらに「述語〇詞」は文の要素ではなく述語内の品詞を示す用語です。
それゆえ「述語」の定義次第でこんなことが起こります。
- 動語 V に入る動詞 ⇒「述語動詞 predicate verb」
- 目的語 O に入る名詞 ⇒ 「述語名詞 predicate noun」
- 補語 C に入る名詞 ⇒「述語名詞 predicate noun」
- 補語 C に入る形容詞 ⇒「述語形容詞 predicate adjective」
述語を使うことで「目的語」も「補語」も区別できなくなります。
また日本語の「述語」の使い方は英語とは大きく異なります。
日本語の「述語」の知識が英語の理解を遠ざけてしまう可能性も高いです。
このことを踏まえて「述語」の使用は混乱を広げる懸念があるので「動語 V」を使用します。
「動語 V」になれるのは「動詞」だけ
文の要素である「動語 V」の最も重要な機能は「五文型」のパターンを決めることです。
英語には「五文型 sentence patterns」という5パターンの文章の形があります。
英語の文章は「動詞 verb」を見ることでパターンが分かるようになっています。
実際の五文型の例文はこちらをご確認ください。
シンプルな英語の文章だと「動詞」と「動語」の違いは気にしなくてもOKです。
ところが英語には「動詞」と「動語 V」を分離できないと困るパターンがあります。
なぜなら「動詞」ではないのに「動語 V」の機能をもつ品詞が存在するからです。
それが ING形のような「動詞の変化形」のグループです。
動詞の変化形の品詞は「動詞」ではない
英文法用語で「動詞の変化形」のことを「準動詞 / 非定形動詞 nonfinite verb」といいます。
英語の「動詞の変化形」は3種類あります。
- 不定詞 infinitive:to do / to be / to have
- ING形 -ing form:doing / being / having
- 過去分詞 past participle:done / been / had
上の分類は「形(見た目)」を基準に行われています。
ここから「品詞」ごと別々の機能を発動させるので掘り下げていきます。
このグループには「動詞ではない品詞に変化する」という特徴があります。
つまり「動詞の変化形」は「動詞」ではないのです。
英語では品詞が変われば、使用ルールも変わります。
つまり動詞の変化形には「動詞ではない品詞」の使用ルールが適用されます。
では品詞の一覧を確認します。
動詞の変化形を「品詞」の使用ルールに視点を切り替えて分類していきましょう。
動詞の変化形が使用される「品詞」は3種類です。
- 名詞の使用ルール
- 形容詞の使用ルール
- 副詞の使用ルール
使用ルールで分類した「動詞の変化形」の英語の呼び方も確認しておきます。
- verbal noun(動詞を変化させた名詞)
- verbal adjective(動詞を変化させた形容詞)
- verbal adverb(動詞を変化させた副詞)
ここから「品詞」と「形(見た目)」を組み合わせて「文法用語」に対応させます。
- 動詞の変化形(名詞)
- 不定詞の名詞用法:to do
- 動名詞:doing
- 動詞の変化形(形容詞)
- 不定詞の形容詞用法:to do
- 現在分詞:doing
- 過去分詞:done
- 動詞の変化形(副詞)
- 不定詞の副詞用法:to do
- 分詞構文(ING形の副詞用法):doing
- 分詞構文(過去分詞の副詞用法):done
品詞の使用ルールは次のブログで確認ください
名詞の意味と使用ルール
形容詞の意味と使用ルール
副詞の意味と使用ルール
英語には「見た目は同じ」で異なる品詞をもつ「多義語」がたくさんあります。
「動詞の変化形」も「多義語」と同じように品詞の使用ルールで見切る必要があります。
ところが「動詞の変化形」はほかの多義語にない「特殊機能」をもっています。
それは「品詞は動詞ではない」にもかかわらず「動語 V」の機能を持っていることです。
では「動詞ではないが動語 V」の実力を確認してみましょう。
動詞の変化形は「動語 V」の機能をもつ
この「動語 V」の機能の意味は「五文型を追加発動できる」ということです。
では百聞は一見に如かずでやってみましょう。
では「動名詞 gerund(ING形の名詞用法)」を例にとってみます。
- Cooking is simple.(主語)
- He is good at cooking.(前置詞とペア)
ここから動詞 cook(SVO)に「名詞 fish」を目的語で追加します。
- 動詞 + 動語 V: cook fish「料理する 魚を」
- 動名詞 + 動語 V: cooking fish「料理すること 魚を」
動詞のING形を「名詞」で使用して、そこから「五文型」を追加発動します。
- Cooking fish is simple.(主語)
- He is good at cooking fish.(前置詞とペア)
この2つを統語論文法 Syntax で図解してみます。
このように「動名詞」を「名詞+動語 V」として使うことができました。
「動詞」と「動名詞」の違いをざっくりご確認ください。
英語の Wikipedia の “Gerund” にもたくさん例が載っているので参考にどうぞ。
このような例は動名詞でなくても可能です。
せっかくなので3種類の「動詞の変化形」すべて使った例文でやって見ましょう。
- The secret of getting things done is to act.
- 物事を終わらせる秘訣は行動することである。
まず2点のポイントを確認します。
- 動詞+動語 V は1つの文での使用数は1つ。
- 動詞の変化形は「動詞以外の品詞+動語 V」なので使用数に制限なし。
さらに次の基準で色分けをしてみます。
- 動詞+動語 V
- ING形 doing
- 不定詞 to do
- 過去分詞 done
これを英文に対応させます。
- The secret of getting things done is to act.
- その秘密 ←(~の)得ること 物事が 完了された = 行動する方向。
- ≒ 物事を終わらせる秘訣は行動することである。
まず前置詞 of とペアになるのは「名詞」なので「動名詞 getting」です。
動詞 get のもつ「動語 V」の機能をつかって第五文型 SVOC を追加発動します。
- getting “V” :名詞(動名詞)+ 動語 V
- things “O”:名詞
- done “C” : 形容詞(過去分詞)
過去分詞は「受動態 + 完了相」を意味する「形容詞」です。
ここの過去分詞 done は「終えられた、完了した」と和訳します。
- getting things done
- 物事が 完了された のを得ること
過去分詞の「受動態」と「完了相」が気になるからはこちらをどうぞ。
次に不定詞 to act に進みます。
- The secret of getting things done is to act.
be動詞 “is” は第2文型 SVC をつくるので ○○ is to act で「補語 C」に入ります。
- 補語に入る品詞
- 名詞(不定詞の名詞用法)
- 形容詞(不定詞形容詞用法)
そこで2種類の品詞の候補がある場合は「意味」で判断します。
- 名詞:秘訣は行動しようとすること
- 形容詞:秘訣は行動しようとしている
2つの意味を比較して「名詞用法」とすることが適切と判断できます。
このように「動詞」と「動語 V」を区別することで英語の表現を広げることができます。
「動詞の変化形」も「品詞」の使用ルールに従って「動語 V」の機能を追加発動させればカンタンです。
英語の verb のもつ「品詞」と「文の要素」の仕組みがわかれば、複雑な英文も自然と組みあがっていくはずです。
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