備前焼の町である伊部(いんべ)をボランティアの方々に案内していただきました。
備前は六古窯(six ancient klins)のひとつで備前言えば焼き物というぐらい有名です。
この町一体が備前焼の窯元が集まっており、町のいたるところで備前焼の装飾を見ることができ、とてもユニークな街並みを楽しむことができました。
普通に歩いているだけでは見落としてしまいそうなことや何気ない風景の一部にもちゃんとした歴史や意味を解説して頂けるのでとてもありがたかったです。
特に北、南、西にある大窯跡には江戸時代に焼かれた備前焼のかけらがそこらに落ちています。
もちろん持って帰ることは禁止されているのですが、手に取ってみることはできるそうで、備前焼の歴史を直接感じることができます。
備前焼の土

今までまったく知らなかったのですが備前焼に使われる土は非常に特殊で急激な温度変化に弱く、釉(うわぐすり)を使うとすぐに割れてしまうそうです。
土自体にも不純物が多く含まれるため、砕いて水に何度もさらして焼き物に適した土を作るそうです。
この土は田んぼからとるため昔は農閑期の副業だったとのこと。
備前焼は釉薬をつかわない

備前焼は釉薬を使わずに文様を付けます。
下の写真は藁をまいてその灰で文様をつけるタイプと炭を窯の中で近くにおくことで炭が激しく燃えて文様をつけるというタイプのものです。
釉薬が使えないからこそ、制約条件の中で様々な試行錯誤をして自分たちの独自スタイルを確立していく。
職人さんたちの築いた伝統からは学ぶことがたくさんあります。
急な温度変化に弱く、収縮性も高いために釜の中でゆっくり焼き上げるそうです。
焼く時間はほか地方の焼き物よりも長くかかるものの固く丈夫な焼き物が出来上がるそうです。
このようにして焼き上げられた備前焼の器は保水性が高く、生け花が長く持ったり、魚が長生きしたりするそうです。
備前焼の神社

町を案内してもらっている途中に天津神社 Tenshin Shrine といって非常に珍しい神社を案内していただきました。
備前焼の狛犬をはじめ神社の境内にあるいろいろなものが備前焼で出来ていました。
焼き物でできた狛犬をもつ神社さんは日本にいくつかありますが、ここは備前焼の本場の神社さんです。
いろんな神社にいったことがある人ほどユニークな雰囲気を感じられていいと思います。
せっかくですから備前に来られたら一度、ご参拝されてはいかがでしょうか。
江戸時代の備前焼の欠片が足元に

天津神社さんから裏手にすすむと、昔の備前焼を廃棄していたところがあります。
足元をよくみると石ころのような備前焼の破片が落ちています。
無造作にそこらからみつかるといっても江戸時代のものです。
文化財の指定を受けているものなのでお持ち帰りは厳禁となります。
天保時代の登り窯

こちらは天保窯 (Tempo Kiln) といって江戸時代に使われていた共同の登り窯だそうです。
ここを備前の窯元みんなで一緒につかうため、誰の作品かわかるように窯元ごとの「しるし」をつくり識別できるようしたとのことです。
いまでこそ覆いや看板もありますが、一昔前までは文化財でもなんでもなく子供の遊び場だったようです。
実際になかに入って、窯の中まで覗くことができます。
備前焼・陶芸に関する英語表現

備前焼: bizen ware
ware は「器」という意味です。土器は earthenware といいます。
釉薬を使わずに: unglazed
glaze は「光沢、ツヤ」を意味します。
unglazed は動詞 glaze(つやを出す、釉薬をつかう)を過去分詞にして使っています。
低い耐火性: low fire resistance
「耐」は resistance で「防」は proof をつかいます。
fire-proof は「防火」となります。
高い収縮性: high shrinkage
粘土: clay
高温での焼き: high temperature firing
保水性: water preserving quality
固さ: hardness
金属イオンの濃度が高いと「硬水 hard water」と呼ばれます。この「硬度」も hardness で表現します。
陶片: ceramic shard
陶芸: pottery
陶工のことを potter といいます。
英語の名字には職業に由来したものが多くあり、ハリー・ポッターの Potter も「陶工」に由来します。
穴窯: tunnel kiln
轆轤: potter’s wheel
轆轤は「ろくろ」と呼びます。