英語の “used to” の意味の見分け方に困った経験はありませんか?
おそらく熟語やイディオムとして文法問題で登場するのは次の2つです。
- 過去の習慣(used to)
- I used to wake up early.
- 私は以前は早起きをしていた。
- to の後ろは「動詞の原形 base form」
- 慣れていること(be used to)
- I am used to waking up early.
- 私は早起きをするのに慣れている。
- to の後ろは「ING形(動名詞 gerund)」
本来の動詞 use(使う)の意味からすればどうも納得がいきません。
それもそのはず!この2つはどちらも昔の英語に由来するもので、現代英語の文法で説明するにはムリがあるんです。
そのため固定表現 “used to” として成立しており、熟語やイディオムとして登場するんです。
詳しい成り立ちについては後述しますが、まずは暗記する必要のある表現です。
覚えるコツとしては両方が使用されている英文を暗記すれば、こんがらがった時に整理できます。
- He used to work by himself, but now he is used to working with a team.
- 彼は以前は一人で仕事をしていましたが、今ではチームで仕事をすることに慣れています。
ところが2つの固定表現 used to だけでは現実の英語に対処するには限界があります。
それは動詞 use(使用する)の過去形や過去分詞形も used になるからです。
そうなると固定表現 used to の丸暗記だけでは通用しないパターンが出てきます。
- This is used to do it.
- これはそれをするのに使用される(使用された)。
こうなってくると丸暗記で対処することはできません。
でもご心配には及びません!
ややこしいパターンにも意味を見分けるポイントがあります。
この際 used to が成立する全パターンをマスターしておけば、怖れることは何もありません。
というわけで、まず動詞 use の意味から探っていきましょう。
動詞 use に3つの意味
実はもともと動詞 use には「使用する」という意味のほか2つ意味がありました。
次の3つは英語 Wiktionary に載っている動詞 use の意味です。
- To utilize or employ
- 利用する、使用する
- 普通の動詞 use
- To accustom; to habituate
- 慣らす、習慣づける
- ⇒ 固定表現 be used to で使用する
- To habitually do; to be wont to do
- 習慣的に行う、〜するのが常である
- ⇒ 固定表現 used to で使用する
英単語 use には動詞と名詞の2つの品詞があります。
いずれも「ラテン語 Latin」そして「古フランス語 Old French」を通して「中英語 Middle English」の時代に現代英語に近い意味になりました。
英単語 use の意味と語源(etymology)は Wiktionary で確認できます。
英語の区別は、歴史の中で英語が変化してきた特徴から大きく4段階に分類されています。
- Old English 古英語(OE)
- 時期:450-1150 AD
- 特徴:現在のドイツやデンマークから来たアングロサクソン人がブリテン(現在のイギリス)に持ち込んだ。
- 古英語は現代英語よりもドイツ語に近い
- Middle English 中英語(ME)
- 時期:1150-1500 AD
- 特徴:フランスから来たノルマン人の支配(ノルマン人征服 1066 AD)によりフランス語の影響を受けた。
- Early Modern English 初期近代英語(EME)
- 時期:1500-1700 AD
- 特徴:ルネサンスの影響でローマやギリシャの古典への回帰が進み、ラテン語やギリシャ語から多くの単語が入って来る。
- 現代の英語でも古風や堅い表現として使用されるものがよくある
- (Late) Modern English (後期)近代英語・現代英語(ME)
- 時期:1700-現在
- 特徴:我々のよく知る英語にとても近いが、日々変化している。
概要としてこれぐらいの知識を押さえておけば良いかと思います。
もちろん年代ごとの区別には明確な線引きはなく、段階的に変化していきました。
詳しくは英語 Wikipedia を参考ください。
さて2つの固定表現 used to も動詞から派生した表現ということが分かりました。
ここから中英語(Middle English)の動詞 use の意味を参考に used to の仕組みを見切っていきましょう。
① used to do(過去の習慣)
まず「過去の習慣」をあらわす used to do です。
もともとの意味は「習慣的に行う」という動詞 use です。
英語 Wiktionary に注記が載っているので紹介します。
- Now chiefly in past-tense forms
- 現在の英語では主に過去時制形で使われる
- archaic or literary except in past tense.
- 過去時制でない用法は古風または文語的。
ここが普通の動詞でなく熟語やイディオム扱いになる理由です。
つまり現代英語では過去時制形 used と不定詞 to do を連結する形で使うことになります。
こまかなニュアンスとしては「過去に習慣的、継続的にやっていたが現在はもうやっていない行動」とを意味します。
そのため単純な過去時制にはない意味を表現することが可能です。
では例文をいくつか確認します。
- I used to study Greek in high school.
- 私は 以前学んでいた ギリシャ語を 高校時代に
- He used to live near the Eiffel Tower.
- 彼は かつて住んでいた エッフェル塔の近くに
- She used to eat croissants for breakfast.
- 彼女は よく食べていた クロワッサンを 朝食に。
- Prague used to be the capital of the Holy Roman Empire.
- プラハは かつて~だった 首都 ← 神聖ローマ帝国の。
これらの表現は「過去時制」に限定した動詞 used を使用しています。
ところが昔の英語では普通の動詞だったので現在時制 use でも使用していました。
英語 Wiktionary には1764年の英語の例文が載っているのでご紹介します。
I do not use to let my wife be acquainted with the secret affairs of my state:
『私は妻に国家の秘密事項を知らせないようにしています。』
1764, Horace Walpole, The Castle of Otranto, section II
このように元々の「過去の習慣 used to do」の構造は「過去時制の動詞 + to do(不定詞)」として理解すれば大丈夫です。
ところが used to は文法書などでは「助動詞」に分類されている場合もあるかと思います。
ここから日本でよくみる「助動詞の誤解」を解きながら進んでいきましょう。
used to が助動詞になる理由
まずここでよくある「助動詞」についての誤解を解いておきます。
日本の英語解説では「動詞を助ける品詞」と呼ばれることが多いですが、実際の意味は「助ける動詞」です。
さらに正確に言うと「(動詞以外の品詞として扱う)分詞や不定詞を助ける動詞」という機能を表しています。
実際に昔の英語では will や can なども元々は普通の動詞と同じように使っていました。
英語の表記はいくつかありますが「助ける動詞」であるのは共通です。
- auxiliary verb(補助的な動詞)
- helping verb(助ける動詞)
- helper verb(補助者である動詞)
- verbal auxiliary(動詞による補助)
どれも「動詞を助ける品詞」と解釈するには無理があるのは一目瞭然です。
そのため「助ける動詞」という解釈は英語だけでなくドイツ語やフランス語などでも共通です。
英語と日本語の助動詞の解説をみていると解釈に違いがあるので、絶対にしっかり区別してください。
- 助ける動詞(英語などヨーロッパ系言語で共通の助動詞の意味)
- 動詞を助ける(日本語でよくみる助動詞の解説)
英語の助動詞が「助ける動詞」である理由の解説はこちらをどうぞ。
実際のところ「動詞」と「助動詞」の区別はとても曖昧です。
英語 Wikipedia を引用してみます。
Definitions of auxiliary verbs are not always consistent across languages, or even among authors discussing the same language. … In the case of English, verbs are often identified as auxiliaries based on their grammatical behavior.
『助動詞の定義は、言語間で、または同じ言語について議論する著者間でさえ、必ずしも一貫しているわけではありません。(中略)英語の場合、動詞は、それが文法的に果たす役割に基づいて助動詞として識別されることがよくあります。』
Auxiliary verb – Wikipedia
used to の場合も、もともとは完全な動詞でしたが、そこから過去時制形に固定されてしまいました。
英語の場合は「動詞の原形」を直接つなげる動詞は、よく「助動詞」に分類される傾向があります。
例えば同じく「助動詞」に分類されることが多い「ought to ~すべき」も元々は動詞から派生しています。
- We ought to do it.(私たちはそれをやるべきだ)
- 英語の動詞 owe の古い過去形 ought で固定
使用法が限定されていても「助ける動詞」であることに変わりはありません。
- 動詞 ⇒ 動詞
- 助動詞 ⇒ 助ける動詞(結局は動詞!)
そのため used to do も「中英語の動詞 use の過去形(習慣的に~していた)」に由来すると理解しておけばうまくいきます。
過去の習慣 used to を助動詞として分類していない英文法書ももちろんありますし、その解釈でも問題ありません。
全体的に英語の助動詞はかなりゆるい定義で分類されているのは知っておいてください。
used to の疑問文と否定文
さて used to が「助ける動詞」なのであれば、正直に動詞として扱いたいところです。
なぜなら現実に必要なのは「過去時制+to do で固定すればいい!」という知識だけですし。
・・・と言いたいところなんですが、やはり一筋縄ではいかない状況になっています。
それが疑問文と否定文の used to なんです。
実際に英語 Wiktionary を引用してみます。
With did as an auxiliary verb (as in the negative and interrogative), use to is considered standard in American English…. In British English, used to may also be acceptable with did as an auxiliary.
『アメリカ英語では、did を助動詞(否定文や疑問文)として使用する場合、use to は標準的とされています。(中略)イギリス英語では助動詞 did を used to と使っても許容される場合があります。』
https://en.wiktionary.org/wiki/used_to
英語の一般動詞の否定文と疑問文は助動詞 do does did を使用します。
これは現代英語の時代になって正式ルールになった比較的新しい仕組みです。
助動詞 do(do-support)の仕組みと成り立ちについて詳しく知りたい方はこちらをどうぞ
さて固定表現 used to の場合、アメリカ英語とイギリス英語などの地域性そして時代によって表現にブレがあるようです。
実際に「used to の疑問文」を見てみましょう。
- Did you use to read many books?(主にアメリカ英語では標準)
- Did があると原形 use になる
- Did you used to read many books?(主にイギリス英語では許容されうる)
- Did があっても過去形 used で固定されたまま
- Used you to read many book?
- 初期近代英語(Early Modern English)に近い使い方
まあこうなると「どれでもええからはっきりしてくれよ」とグチりたくなる状況です。
ちなみに発音は use to でも used to でもどちらも「yust(ユーストゥ)」のような感じなので、会話ではいくらでもごまかしがききます。
さて次に「used to の否定文」を見ていきます。
否定文には短縮形もあるので、疑問文に輪をかけて混沌の様相を呈しています。
- used to not
- used not to
- did not use to
- did not used to
- usen’t to(短縮形)
- usedn’t to(短縮形 )
- didn’t use to(短縮形)
これらのうちどれも使われていて、はっきりと正式・誤用の共通見解があるわけではないようです。
どこをみても喧々諤々の議論になっていて下手にかかわってもいいことは無さそうです。
もちろん否定文のパターンでも use to と used to の発音は区別されないのでごまかしがききます!
ここで我々が学べることが一つあります。
- 過去の習慣 used to の疑問文と否定文はできれば避けたい!!
となると「過去の習慣」の代用表現がもとめられます。
used to do の代用表現
過去の習慣 used to の代用表現では would (often) が良く紹介されています。
ところが法助動詞 would があまりにも広い意味で使うので、逆に使い勝手が悪いかと思います。
ちょっと会話表現よりになるものもありますが、いくつか手段はあります。
- 過去時制+頻度表現を使う
- I often played outside when I was young.
- Did you often play outside when you were young?
- I didn’t often play outside when I was young.
- 否定語 never を使う
- I never used to platy outside.
- 疑問文を分離する
- You used to play outside. Am I right?
そもそも「過去の習慣 used to」を必ず使用するべき理由はありません。
単純に過去時制に頻度の副詞 usually や often を組み合わせても使えます。
否定文や疑問文は助動詞 did を発動させないパターンでうまく逃げることもできます。
状況に応じて臨機応変に対処するパターンはあらかじめ自分の頭に入れておきましょう。
② be used to doing(慣れている)
次に「慣れている」をあらわす be used to doing に進みます。
これは中英語 use の「慣れさせる」からは派生した表現です。
英語 Wiktionary に注記が載っているので紹介します。
- Now common only in participial form.
- 今の時代では分詞形でのみ一般的に使われている
動詞の過去形 used と同じ形で「分詞」になるのは「過去分詞」だけです。
文法用語の「分詞 participle」は動詞を形容詞(adjective)として使用するものです。
それゆえ「過去分詞 past participle」の品詞も形容詞として機能します。
過去分詞について知っておくべきことがいくつかあります。
- 品詞が「形容詞 adjective」になる
- 基本的に「完了相 perfect aspect」を発動できる
- 行動が実現していることを示す
- 他動詞から変化した場合は「受動態 passive voice」を発動できる
- 目的語が主語として使われていることを示す
日本でよく見る過去分詞の解説は「受動態」ばかり注目されますが「完了相」も同様に重要です。
たとえば “a used car” の過去分詞 used が「中古の(もうすでに使用された)」となるのと同じカラクリです。
過去分詞の「完了相」と「受動態」はどちらかが優先される場合もありますし、両方の意味をとる必要があることもあります。
- This is already used.
- これはもうすでに使用された。
- 完了相がメイン
- This is used by him.
- これは彼によって使用される。
- 受動態がメイン
この2つの違いは実際の英語でどちらともいえる場合が多くあります。
ですがヨーロッパ系言語の文法にはちゃんと区別する用語があります。
- 状態受動 stative passive
- 行動が完了したあとの状態を意味する
- 「完了相」が意味の主軸
- 動作受動 dynamic passive
- 受身の行動が行われることを意味する
- 「受動態」が意味の主軸となる
日本の英語解説では「状態受動 VS 動作受動」の区別はほぼ扱われないようですが、ドイツ語やスペイン語では区別します。
英語に限らずヨーロッパ系言語の過去分詞には2つの意味が状況にあわせて発動することを覚えておいて下さい。
英語の過去分詞の意味と使い方はこちらをご覧ください。
では普通の形容詞 nice と並べて文を確認してみましょう。
- He is nice to me.
- He is used to doing it.
- 過去分詞 used の品詞は形容詞になる
- be動詞から形容詞 nice と同じく過去分詞 used をつなぐ
さてこの be used to が過去分詞 used を使っていることはわかりました。
次に to doing ですが、この前置詞 to は動名詞 doing をつなぐために使われています。
それでは元々の「動詞 use(慣れさせる)」から考えるとわかりやすくなります。
英語 Wiktionary にはちゃんと例文が載っています。
- to use the soldiers to hardships and danger (now rare)
- 兵士を困難や危険に慣れさせること(現在ではまれな用法)
もともとは「use A to B」の形で「AをBに慣れさせる」という意味です。
be used to の代用表現 be accustomed to も全く同じ組み立てです。
過去分詞を動詞に戻すと「accustom A to B」の形で「AをBに慣れさせる」となります。
- I must accustom my ear to hearing French.
- 私は 慣らさねばならない 私の耳を フランス語を聞くことに
この to は前置詞なので hearing というING形(動名詞)にするのを忘れないで下さい。
この動詞を過去分詞にかえて「完了相」と「受動態」を発動させます。
- A is used to B
- A is accustomed to B
- A は慣れさせられている B に
ここで「完了相」と「受動態」が発動するので「慣れさせられた」となります。
さきほどの「状態受動(完了相メイン)」を採用して「もう完全に慣れ切った状態」とすればうまく解釈できます。
単純に「慣れさせる」を受身にして「慣れさせられる」とするより的確に英語が機能すると思います。
これが固定化して「慣れている」という意味の形容詞(もともと過去分詞だから)として解説されます。
では be used to の仕組みがわかったところで例文を確認しましょう。
- I am used to hearing people speak Italian around me.
- 私は 慣れている 聞くことに 周りの人々が 話す イタリア語を
- 前置詞 to + 動名詞 hearing
- Are you used to her French accent?”
- あなたは 慣れていますか 彼女のフランス語のアクセントに
- 前置詞 to + 名詞 her French accent
- I am not used to the hot summers in southern Spain.
- 私は 慣れていない 暑い夏に スペイン南部の
- 前置詞 to + 名詞 the hot summers
さらにギアをあげて「過去の習慣」との違いを動詞 use(使用する)とあわせて確認してみましょう。
- I used to use it.
- 私は以前それを使っていた。
- I am used to using it.
- 私はそれを使うことになれている。
基本はこれぐらいで大丈夫だと思います。
では次に be used to の応用に進みます。
be used to doing の派生表現
さて過去分詞は形容詞と同じように使用可能なので、いくつか表現にバリエーションがあります。
- be used to A
- 慣れている状態:一般的な表現
- get used to A
- 慣れてくる過程:変化重視表現
これは used to に限った表現ではなく通常の形容詞ならば何でも使えます。
- I was busy.
- 私は忙しかった。
- I got busy.
- 私は忙しくなった
もちろん be と get の使い分けは正真正銘の過去分詞(品詞は形容詞)でも使えます。
- The project will be completed soon.
- そのプロジェクトはすぐに完成されるだろう。
- The project will get completed soon.
- そのプロジェクトはすぐに完成されるだろう。
和訳に違いはないですが「通常(正式用法)」と「変化重視」のニュアンスの違いがわかるだけでよいと思います。
ここで「完了相(行動が実現済)」を発動する形(いわゆる現在完了)ならちょっと違いが大きくなります。
- I have been used to A
- 今まで A に慣れたままでいる
- 完了相の「動作の継続」の意味が一番うまくハマる
- I have got used to A
- 今は A に完全に慣れた
- 完了相の「結果・完了」が意味一番うまくハマる
また「進行相(行動が進行中)」の場合は「現在分詞 present participle」を使用します。
その場合は変化重視の getting を使うケースが多くなります。
- I am getting used to A.
- いまちょうど A に慣れてきている
現在分詞も過去分詞も「相 aspect」と「態 voice」の2つの機能を同時に発動します。
- 相:行動の実現度を示す
- 態:主語と目的語の関係が「する or される」のいずれなのかを示す
これはフランス語やドイツ語そしてラテン語の分詞でもほぼ同じ仕組みです。
英語の分詞(と不定詞)の「相と態」の機能は2つとも同時に受け取ってください。
では最後にあえて面倒な動詞 use(使用する)と合わせて例文をみていきましょう。
- Are you really used to using it?
- あなたは本当にそれを使うことに慣れていますか?
- She is getting used to using it.
- 彼女はそれを使うことに慣れてきている。
- Have you got used to using it?
- あなたはそれを使うことに慣れましたか?
もっとややこしい形もありますが、丸暗記せず基本を応用すればいいだけの話なので大丈夫です。
③ be used to do(標準用法)
さて、実は used to で一番難しいのがここからです!
- A is used to do
- used:動詞 use(使用する)の過去分詞
- to do:方向・目的などを意味する不定詞
さきほどの「慣れている be used to」の違いはカンタンです。
- A is used to do
- to 動詞の原形(不定詞)
- ~するために使われる、使われた
- A is used to doing
- to 動詞のING形(動名詞)
- ~するのに慣れさせられた
まずは to の直後をよく確認すれば大丈夫です。
では次に進んで be used to do の例文をみていきます。
- The spatula is used to flip the crêpes.
- ヘラは 使用される ひっくり返す方向へ クレープを
- The wine is used to cook the beef slowly.
- ワインは 使用される 料理する方向へ 牛肉を ゆっくりと
見た目が used to になっているだけでこれが一番普通の形です。
そのため used to の発音は「yuzd tu(ユーズドゥトゥ)」のようになります。
読むときはややこしいですが、聞くときはさほど苦労せずに区別できるはずです。
不定詞は「~する方向へ」という基本の理解がうまくハマります。
不定詞 to do の仕組みが気になる方はこちらをどうぞ。
これは固定表現ではなく「過去分詞+不定詞」の基本用法なので使用範囲がかなり広いです。
では例文を見ていきましょう。
- The aqueduct was used to bring water to Roman baths.
- その水道橋は 使用された もたらす方向へ 水を ローマの浴場に。
- その水道橋はローマの浴場に水を供給するために使われていました。
- The road seems used to connect Roman cities.
- その道路は 見える 使用された つなぐ方向へ ローマの都市を
- その道路はローマの都市を結ぶために使われていたようです。
この used は普通の過去分詞なので be動詞だけでなく seem のような「補語 C」につながる動詞とも使えます。
ですがここまでなら「慣れている」という意味の be used to や get used to にも可能です。
一方で標準用法の used to do(~するために使用される、された)の見切りがかなり難しくなるパターンがあります。
それは名詞への「後置修飾 postpositional attribution」です。
used to do の後置修飾に注意
過去分詞は「形容詞 adjective」として機能します。
ヨーロッパ系言語における形容詞とは「名詞へつながる品詞」という意味です。
ほぼすべての英文法用語はラテン語に由来するので語源を見るとよくわかります。
- nōmen adjectīvum(羅)
- added noun / addtional noun(英)
- 追加された名詞 / 付加的な名詞(日)
これはもともとラテン語文法では「形容詞が名詞の仲間」と考えられていたことに由来します。
形容詞が名詞に連結する方向には2種類あります。
- 前置修飾 prepositional attribution
- cold winter(寒い冬)
- 英語やドイツ語などはこちらが基本
- cold winter(寒い冬)
- 後置修飾 postpositional attribution
- something cold(冷たい何か)
- フランス語やイタリア語などはこららが基本
- something cold(冷たい何か)
この形容詞の仕組みが「過去分詞(もちろん現在分詞も)」に適用されます。
形容詞の仕組みについてはこちらを確認ください。
過去分詞 used to が名詞に後ろから連結するパターン(後置修飾)はおさえておく必要があります。
まずは2つの例文を確認します。
- The bridge used to connect the two towns was destroyed by the flood.
- The bridge used to connect the two towns.
途中まで全く同じ構造ですね?
でも当然ですが意味は全然違います。
- The bridge used to connect the two towns was destroyed by the flood.
- 二つの町を繋ぐのに使われていた橋が洪水で破壊された。
- 名詞 the bridge を過去分詞 used が後置修飾(後ろから連結)
- 動詞 was がこの文の中心になる動詞(定形動詞 finite verb)
- 二つの町を繋ぐのに使われていた橋が洪水で破壊された。
- The bridge used to connect the two towns.
- その橋はかつて 2 つの町を繋いでいました。
- 過去の習慣の動詞 used(固定表現 & 定形動詞)
- その橋はかつて 2 つの町を繋いでいました。
この2つの文の場合、発音ならカンタンに区別できます。
- 使用された used to ⇒ yuzd tu(ユーズド トゥ)
- 過去の習慣 used to ⇒ yust(ユーストゥ)
読むときは絶対に used to を見た瞬間に意味を当てはめるのはやめてください。
主語になる名詞の直後の used to の意味がその場で確定できないパターンがあるのが現実の英語です。
used to と used for の違いに注意
ここまで used to がややこしいなら避けたくなるのも分かります。
というわけで be used to do(~するのに使用される)の代用表現もご紹介します。
目的を意味する不定詞 to do(~する方向へ)は「前置詞 for + 動名詞 doing」に置き換えても使えます。
- This app is used to help beginners learn French.
- This app is used for helping beginners learn French.
- このアプリは初心者がフランス語を学ぶのを助けるために使用されます。
どちらも同じ和訳になるのが分かると思います。
実は「古英語 Old English」の不定詞 to do はまさに for doing と同じような仕組みだったんです。
古英語の不定詞についてはこちらのブログで紹介しています。
この「前置詞 for + 名詞」がちゃんと使えることはとても大切です。
なぜなら固定表現 be used to(慣れている)との違いを見切る必要もあるからです。
- They are used for it.
- それらはそれのために使用される。
- They are used to it.
- 彼らはそれに慣れている。
このような前置詞 for と to の違いだけで文の意味が大きく変わることを知っておいて下さい。
さてここからさらに難易度をあげていきます。
不定詞の to と前置詞 to は見た目が同じです。
当然ですが古英語の時代の不定詞 to は前置詞として機能していたので、それが現代英語まで引き継がれています。
そうなると to の直後の品詞が区別できない場合はかなり困ったことになります。
英語は同じスペルなのに品詞と意味が違う「多義語 polysemy」がとんでもなく多い言語です。
実際の英単語だと fish が良い例になるので見ていきます。
- They are used to fish.
- 彼らは魚に慣れている。
- それらは魚釣りに使われる(使われた)。
実は上の2つの意味はどちらも成立しています。
もちろん前後の文があれば見分けられますが、この文だけではどちらでも解釈可能です。
では「多義語 fish」のカラクリを「仮置きの単語 XYZ」をつかって分析してみましょう。
- they are used to XYZ.
この文には2通りの解釈があり、大きく意味が変わります。
- 彼らは XYZ(名詞)に慣れている
- それらは XYZ する(不定詞)のに使われる(使われた)
そこに多義語 fish の意味を確認します。
- 名詞 fish:魚(複数でも fish)
- 動詞 fish:魚釣りをする
これを XYZ に当てはめてみます。
- They are used to (XYZ ⇒ fish).
- 彼らは「魚(名詞)」に慣れている。
- それらは「魚釣りをする(動詞 ⇒ ここでは不定詞)」のに使われる。
いかがでしょうか?
現実には多く出会うケースではないですが、この2つを見切る力は必要になると思います。
では逆に英語をアウトプットする視点で見てましょう。
こちらがスピーキングやライティングの時に明確に意味を分けたい場合はどうしましょうか?
そのようなケースにこそ重要になってくるのが代用表現です。
ここまでに確認しているので再確認で紹介します。
- They are used for fishing.
- それらは魚釣りにつかわれる。
- They are accustomed to fish.
- 彼らは魚に慣れている。
こうすればだれの目にも意味が明確な英文が作れます。
英語は多義語がどうしても連続で使用される場面がでてきます。
こちらがアウトプットするときは、できるだけ意味を単純明快に表現することを意識していきましょう。
私見ですが誤解をしにくい表現を選べることも大切な言語能力の一つだと信じています。
このようなちょっとした「思いやり」や「気遣い」は神様にしかわからないかもしれません。
そうだとしてもそれらを英語を通して相手に届けようとする姿勢そのものに、ちょっとステキな感じがしませんか?
自然に相手を思いやる言葉がつかえる人の英語は、そうでない人たちの英語とは全く違う輝きを放つような気がします。
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