山口県萩市にある東光寺さんに行って参りました。
ちょうど桜の季節に、春の陽気に恵まれてここちよく参拝させて頂きました。
東光寺さんの宗派は黄檗宗(おうばくしゅう)といって、隠元和尚が日本に持ってこられた禅宗のひとつです。
黄檗宗総本山である万福寺がある京都・宇治近辺の方には非常に親近感を感じるのではないでしょうか。
「東光」といえば薬師様
東光寺というお寺は日本にいくつもあるようです。
東光寺の名前の由来は、薬師如来様の浄土である「東方瑠璃光浄土」に由来します。
ですが、この萩にある東光寺さんのご本尊は薬師さま・・・ではなくお釈迦さまです。
なぜ、そんなことになったかというと、毛利三代藩主の時代には新しくお寺を建てることが禁止されていました。
そこで下関にもともとあった東光寺さんを移設したのだそうです。
その東光寺のご本尊は当然、薬師如来さまでしたから、その名残というわけですね。
ちなみに「西方極楽浄土」は阿弥陀如来様の浄土です。
「極楽寺」という名前のお寺もよく拝見するのですが、ご本尊の多くは阿弥陀様ではないでしょうか?
毛利家の菩提寺 Family Temple of Mori
東光寺さんは萩・毛利家の菩提寺でもあります。
もともと「殉死」といって忠義に証として毛利家の家臣(Mori vassals)が主君の死に殉ずるという習わしがありました。
しかし、江戸の泰平の世になり、殉死の代わりに灯籠(stone lantern)を家臣が寄進することになりました。
これだけたくさんの石灯籠があるのは、忠義の証です。
殉死はサムライ、殉教はクリスチャン
「殉」という言葉は「〇〇のために死ぬ」という意味です。
「殉職」は職務中に亡くなることであり、「殉死」は主君などの死のあと追って死ぬことを意味します。
しかし英語では「殉職」「殉死」という単語は存在しません。
一方で「殉教」には martyrdom (martyr 殉教者)という単語が存在します。
キリスト教では信仰を捨てずにあえて死を選ぶことは敬意を受ける行為とされています。
ですが自殺は「God に与えられた命を自ら断つこと」として、信仰上の罪(sin)になります。
殉死というのはみずから命を絶つ行為なので英語では生まれなかった発想なのでしょう。
殉職には killed in the line of duty という言い方がありますが、状況をそのまま表現しただけです。
キリスト教には「信仰に殉ずる」という概念はあっても「誰かの死に殉ずる」という発想がありません。
やはり「殉教」というのは英語で特別扱いの言葉だと認識できます。
英語がいかにキリスト教の影響を受けた言葉かということもわかりますね。
もちろん世界記憶遺産登録で話題となっている「島原のキリシタン迫害」も殉教をテーマにしているから、欧米社会で評価を受けるというわけです。
もちろん実際にはキリスト教徒側からも神社や寺院を破壊する行動が為されています。
キリシタン側が一方的に被害者面をするのは、非常につよい違和感を禁じえません。
そんなにキリスト教の歴史を伝えたいなら、キリシタンの宣教師が残している、神社・仏閣・仏像などへの破壊の記録などを公開してはどうでしょうか?
そもそもイエズス会(Society of Jesus)自体が暴力による布教を正当化した組織であることも日本人は歴史の事実として知っておく必要があります。
それでこそ、秀吉や家康が禁教を行った理由が理解できます。
主君と幕末の志士が共に眠る
東光寺さんの墓所(Toko-ji mausoleum)には幕末期に亡くなった長州藩士たちのお墓もあります。
明治維新(Meiji Restoration)というと身分の低い人物が活躍した時代だと思われがちですが、そうではないと思います。
戦国時代は「下剋上」をスローガンに裏切りやだまし討ちなどが横行していました。
ですが幕末明治の偉人で「自らの出身の藩を踏み台にした人物」はいるでしょうか?
すくなくとも長州藩に毛利藩主をないがしろにした志士はいないのではないでしょうか?
激動の時代というのは存在します。
当時は無法地帯と化した地域もあったでしょう。
ですが、薩長の志士たちは島津藩主や毛利藩主を中心に据え、開明派の諸藩や有能な人材と連携し幕府を倒し、天皇を君主として戴き、オールジャパンの明治政府をたて西洋列強からの独立を守りきります。
明治維新は欧米や中国にありがちな「これからは俺がボスだ!逆らうやつは皆殺しだ!」のような革命ではありません。
ナポレオンや袁世凱の例をとれば、違いが判るはずです。
東光寺では身分やそれに応じた役割はあるにせよ目標を一つにし、最後はみなが同じところに眠る。
そんな藩主と藩士の距離がこんなに近い藩はなかなか珍しいのではないでしょうか?
長州藩は一時期、日本の中で孤立しました。
ですが、その状況でも一致団結して長州藩は、多くの犠牲を払いながらも、前進し続けます。
そんな圧倒的不利な状況を覆す「長州男児の腕前」の根源を東光寺さんで、すこし感じることができたように思います。
東光寺に関する英語表現
黄檗宗: Obaku Zen Buddhism
黄檗宗は臨済宗の一派ですが、日本では別の宗派になりました。お経の読み方が中国語発音だそうです。
四大夫十一烈士: Four Chief retainers and Eleven Warriors
諸侯、大夫、士 などは中国の臣下の呼び名です。大夫は諸侯に仕える家臣です。
「烈士 れっし」は革命などで犠牲になった人々の呼び名です。英語では表現しにくいですね。
(幕末の)恭順派: the Conservatives
直訳すると「保守派」です。
(幕末の)尊皇攘夷派: the Imperialism and exclusionism group
「尊皇(天皇中心主義)」は Imperialism となっていますが、「帝国主義」と訳すこともできます。
「攘夷」も「野蛮人(ガイジン)をやっつける」という意味ですが、もともと中国の概念(尊王攘夷)です。どちらも皇帝が世界の中心であるという中華思想と関連があります。
このあたりは英語に訳すと「覇権主義者・国粋主義者」に見えなくもないです。昭和の軍部ならいいですが、この時代の「尊皇」に「帝国主義」は似合わないと思います。
徳川幕府: Tokugawa shogunate
禁門の変: Kinmon Incident
「変」はクーデターですが、incident は武力衝突という感じです。
この「禁門」は the Forbidden Gate でもよい気がします。
中国の「紫禁城 The Forbidden Palace」は高貴な身分の者以外は立ち入り禁止という意味から来ています。
中華皇帝も天皇家の「禁中」も同じ意味なので、英訳で forbidden を使ってよいと思います。
下関の戦い: Battle of Shimonoseki
incident に対し battle は比較的大きな軍事組織同士の戦いです。
長州藩三代藩主: the third warlord of Choshu Clan
warlord は「軍閥のリーダー」という意味合いが強いです。戦国大名の英訳によく使われます。
墓石: grave stone
お墓には tomb といういい方もあります。その違いは tomb が地上に建てるもので、grave が掘るものです。日本は地中に埋葬するので grave なのでしょう。
毛利家の菩提寺: Family Temple of Mori Hagi
菩提寺というのは家族、親戚一族を弔うお寺です。
毛利家墓所: Family graveyard of the Mori family
毛利家の家紋: the crest of the Mori family
家紋は family crest です。
藩政時代:the Edo period
幕藩体制は江戸時代のことなのでわかりやすいです。
大名家の葬制や墓制: the customs of burial methods for the warlord and his family
戦国大名に由来する「大名 warlord」になります。
仏像: Buddha statue
総門: main gate
鐘楼: bell tower
格天井: latticed ceiling
lattice は格子のことです。過去分詞にして「格子状の~」と形容詞化させています。
しゃちほこ: decorative shachihoko carp
carp は鯉です。たしかに見た目は鯱(シャチ killer whale)には見えません。
しゃちほこの英訳もほんとにいろんなバージョンがあります。
唐破風をつけた角柱: rectangular pillars with “karahafu” roofs
破風のことは gable と英訳されているのをよく見ます。
ちょっとユニークな英語塾
志塾あるま・まーたは英語が苦手が困っている人が、英語を明るく楽しく学べるオンライン英語塾です。
塾長が高校を半年で中退後に、アメリカの大学に4年間留学して習得したゼロから始めて世界で通用する英語力の習得法をみなさまにお伝えしています。
英語の仕組みを正しく見切る「統語論文法 Syntax」を使うので、シンプルなのに素早く、正確に英語が理解できます。
また現代文・小論文の対策なども、アメリカの大学で採用されている論理的思考力や批判的思考力(logical and critical thinking)のトレーニングを基準にして行っています。
あるま・まーたのちょっとユニークな英語の学び方はこちらをご覧ください。
あるま・まーたの英語の学び方に興味を持っていただけたなら、ぜひお問い合わせください!
ブログの感想や英語の疑問・質問などでもお気軽にどうぞ!