歴史を訪ねて英語を学ぼう(山口・松下村塾)

日本を学べる英語の表現

山口県萩市にある吉田松陰先生の私塾、松下村塾に行ってまいりました。

松下村塾は松陰神社の境内の中にある小さな塾です。

この小さな塾に集まった人たちが、日本を変革する信念を共有し、学んでいました。

そして結果として近代日本を生み出す大事を為したということに感銘を覚えます。

では、そんな日本の行く末を決めるうねりを生み出した塾の授業とはどんなものだったのでしょうか?

松陰先生の教え

近代日本を担った人材が育った教育は、厳しい課題を与えられるものではなかったようです。

松陰先生はみんなに語り掛けるように話をし、ひとり一人の意見をじっくり聞いて、答えを引き出すようにしたといわれています。

我々は長州藩だ。だから関ケ原からやろう。君たちならどうする?

吉田松陰

このような課題を提示し、様々な意見を喧々諤々と戦わせたのでしょう。

疑問を投げかけ、本質的な意見を引き出そうとするのは、古代ギリシャの問答法(ディアレクティケーdialectic)と似ているでしょうか。

また学校教育で話題となるディスカッションやケーススタディとも通じるところがあるでしょう。

ですが、いまの日本の公立学校で松下村塾と同じ生徒が育つことを期待するのは無理があります。

形式や方法だけまねても「信念」「情熱」「」「義侠心」がごっそり抜け落ちています。

欧米諸国が暴力を使って世界中で弱者を支配し、富を搾取し、傲慢にふるまうのを日本では許してはならない」との強い思いが共有できていればこその「松陰先生の教え」なのです。

教育とは先生と生徒で協力し課題へ向き合うこと

私は松陰先生のやり方だけがすぐれている教え方だとは思いません。

日本仏教には「人々を救う」という教育の本質ともいえる大きな課題があります。

日本の歴史の中のお坊さんたちには教育者としてもみても偉大な方々が多くいらっしゃいます。

最澄さんのように、日本を支える大きな基盤を築きながらも、謙虚に後継者に託す方もいらっしゃいます。 

空海さんのように圧倒的カリスマ性と天賦の能力で多くを惹きこむ方もよいと思います。

法然さんのように本当のやさしさゆえに誤解を生みながらも、時間をかけおだやかに誤解を解き、広く人々を救う方もいらっしゃいます。

道元さんのように人里はなれたところであえて自らを厳しく鍛え上げることにすべてをかける姿勢をもって人を導く方法もあります。

日蓮さんのように激しい信念をもって、逆境をものともせず教えを説く方もよいと思います。

松陰先生のやり方が通用するには「生徒一人一人が責任をもって自分の意見をいい、皆の意見を聞き、チームとしてとるべき行動を決定し、実行する」という優れた能力、高い意識そして行動への決意が共有されている場合に限ります。

教育者としての松陰先生は、やはり高杉晋作や久坂玄瑞といった志ある生徒たちに支えられて輝いたといえると思います。

強い言葉が、強い思いをつくる

松下村塾の解説の中で、日本の英語教育ではなかなかお目にかからない表現があったので紹介します。

「松下村塾では、身分にとらわれず集まった若者達を、強い志と誇りをもって行動する日本人に育てた」

“The Shoka Sonjuku private school taught the youth who gathered there that, regardless of their social status, they were Japanese who could take action with determination and pride.”

松下村塾資料

文章それ自体はとりたてて難しいわけでもなんでもありません。

しかし「強い志と誇りをもって行動する日本人 Japanese who (could) take action with determination and pride」のような強い思いを感じる言葉を日本の英語教育でどれほど目にするでしょうか?

単純な会話に偏った英語だと「世間話」の運用能力程度で終わります。

技術論文を読むだけの英語なら、知識・理屈に偏ったところで終わります。

今の日本になによりもかけているのは、歴史を実際に動かし懸命に生きた人々の生き様や信念を感じる言葉でしょう。

英語教育に「人間が生きようとする強き思い」が欠落しているようにみえます。

これは英語資格や海外経験ぐらいしか英語力の評価ができないことと無関係ではないと思います。

「日本人が英語がヘタだ」というのは「魂を揺さぶる言葉」を今の日本人がもっていないことに最後は帰結するのではないでしょうか?

辞世の句は両親と弟子たちへ

こちらは松陰先生が「先立つ不孝を両親に詫びる(apologize for the impiety of preceding his parents in death 」ために送った手紙の一部です。

親思う こころにまさる 親心 きょうの音づれ 何ときくらん

“A child may love his parents, but the love of a parent is greater. How this news must sound in the heart of a parent.”

吉田松陰先生

この時代は常に死と隣り合わせでした。

なにか大きなことを起こせば、それに対する反動もあり、命を失うことも覚悟していたでしょう。

死ぬことは怖かったでしょうが、それよりも「孝」を果たせぬ思いがつづってあります。

また弟子たちには留魂録の中で、次のように辞世の句を詠んでいます。

身はたとひ 武蔵の野辺に朽ちぬとも 留置まし大和魂

吉田松陰先生辞世の句

教育者とは知識・方法を伝えるだけの人ではなく、「次世代に大切ななにかを託す人」なのでしょう。

財を残す人は下、仕事を残す人は中、人を残す人は上。

後藤新平

これは、後藤新平の言葉ですが、金でもモノなんでもよいので、一人一人が後世のために何かを残せる文明が発展するのは自明の理だと思います。

松下村塾に関する英語表現

私塾: private school
村塾の双璧: two mainstays of the school

mainstay は「頼みの綱、大黒柱」といった意味ですが、船などのメイン・マストを支えるロープのことだそうです。久坂玄瑞と高杉晋作の2人のことですね。

尊皇の大義: the importance of restoring the Imperial rule

imperial rule は文脈によっては「帝国主義による植民地支配」にもなりえます。ここではあくまでも幕藩体制ではなく「尊皇」の意味です。

山鹿流兵学の師範: logistics instructor of the Yamaga school

logistics はビジネスでは「物流」と訳されますが、軍事では「兵站 へいたん」となります。

つまり、複雑な業務や任務を組織化し実行すること、という意味になります。

奇兵隊: Kiheitai battalion

「battalion 大隊」というのは「独立した活動を行うことができる最も小さな戦術単位  the smallest military organization capable of limited independent operations」のことだそうです。

四境戦争: Shikyo Battle 

この言い方は長州藩から見た場合の「第二次長州征伐 Second Chōshū expedition」のことです。もちろん長州征伐とは幕府サイドの言い方です。

安政の大獄: Ansei Purge

purge は「きれいにする」という意味です。

共産党の支配下の国で行われた反体制派に対する虐殺を「粛清 purge」とよびます。

ちなみにキリスト教(カトリック Catholicism)には煉獄(れんごく purgatory)という場所があります。

地獄 hell よりも軽い罪のものが行き、罪を贖ったのちに天国 heaven に行くところのことです。

幕末: the end of the Edo era
幕末志士: Meiji Restoration leaders

明治維新は革命ではなく「本来の形に戻す」ということで restoration が使われます。つまり王政復古ですね。

幕府: Shogunate

日本を題材にしたBBCのドキュメンタリーなどでも shogun はよく使われています。

日本文化の浸透すると日本語をそのまま英語で使える利点があります。

アメリカ軍艦: American warship

軍艦自体は warship ですが、この時代アメリカが世界を威圧するために使ったのは、大砲を装備し、蒸気機関 steam engine により長期航海の可能な船です。

そのような軍艦を世界中に送り込み、そして威圧することで有利な外交条件を引き出そうとするアメリカの外交方針を砲艦外交 gunboat diplomacy と言います。

ちょっとユニークな英語塾

志塾あるま・まーたは英語が苦手が困っている人が、英語を明るく楽しく学べるオンライン英語塾です。

塾長が高校を半年で中退後に、アメリカの大学に4年間留学して習得したゼロから始めて世界で通用する英語力の習得法をみなさまにお伝えしています。

英語の仕組みを正しく見切る「統語論文法 Syntax」を使うので、シンプルなのに素早く、正確に英語が理解できます。

また現代文・小論文の対策なども、アメリカの大学で採用されている論理的思考力批判的思考(logical and critical thinking)のトレーニングを基準にして行っています。

あるま・まーたのちょっとユニークな英語の学び方はこちらをご覧ください。

あるま・まーたの英語の学び方に興味を持っていただけたなら、ぜひお問い合わせください!

ブログの感想や英語の疑問・質問などでもお気軽にどうぞ!

Copied title and URL