みなさんは、英語のジョークにどんなイメージをお持ちですか?
やはり欧米文化に通じているほうが、笑えるネタは多いでしょう。
ところが今回、ご紹介するのは、その常識に風穴を開ける一件です!
なんと日本人にもなじみ深い「仏教」が、笑いのカギを握るミステリーです。
では、さっそく謎解きの旅へとご案内しましょう!
舞台は、ホットドッグの屋台――そう、あの香ばしい匂い漂う通りの一角です…。
🌭不可解なホットドッグの注文
――その不思議な出来事は、アメリカのとある屋台で起きた。
目撃者によれば、一人の仏僧がふらりとホットドッグの屋台に近づき、こう言ったという。
Make me one with everything.
屋台の主人は笑みを浮かべ、パンにソーセージを挟み、マスタードとケチャップ、そしてザワークラウトまでたっぷりのせて渡した。
――と、これだけでは何が面白いのかわからないだろう。
それでは、ジョークの全文をご覧いただこう:
A Buddhist monk walks up to a hot dog stand and says,
“Make me one with everything.”
だが――ここで、こう思わないだろうか?
😉なんだ!ただのホットドッグの注文じゃないか。
そしてすぐ、こう気づくことになる――
🤔いや、何かがおかしい…?これはジョークなのだから・・・。
そう、この一言は、単なる注文に見せかけて、とんでもない意味を秘めているのだ。
きっと名探偵シャーロック・ホームズなら、すでに「二重の意味(double meaning)」という香ばしいスパイスをかぎつけているだろう。
さあ、読者諸君!
我々も名探偵となって、この不可解な出来事のナゾを一緒に解き明かそうではないか!
❓ナゾの舞台 ― ホットドッグスタンドジョーク
英語ジョークの世界には、一つの定番と呼べる舞台設定がある。
それが――
X walks into a Y
(X が Y に歩いて入ると…)
――という型をもつジョークだ。
最もよく見るのは a bar joke といって、バーが舞台となる。
A man walks into a bar…
A horse walks into a bar…
A priest, a minister, and a rabbi walk into a bar…
――などが定番ジョークとして挙げられる。
この言い回しは、英語ジョークの王道パターンといっていい。
とにかく会話が始まり、何らかのズレから笑いが生まれる――実に便利な「舞台装置」なのである。
そして、今回のミステリーの舞台は――そう、ホットドッグの屋台だ。
理由は単純明快だ:
one with everything
(全てのトッピングをつけて1つ)
――これがホットドッグの注文にピタリと嵌るからだ。
この “with everything“ は、トッピングの「全部のせ」を意味するのだ。
ケチャップもマスタードも、ザワークラウトも、オニオンスライスも――トッピングのすべてをパンに詰め込むイメージだ。
そう、ここまでなら「ただのホットドッグの注文」にすぎない。
ところが、今回の客はただの客ではない――
🧘袈裟をまとった仏教僧(Buddhist monk)
宗教家や哲学者がこの舞台に登場すると、必ずといっていいほど宗教的、哲学的ひねりがジョークに混入する。
日常の舞台に強引に「形而上学的なテーマ」をねじ込み、その化学反応が笑いを生むのだ。
🪷仏僧の素顔 ― 梵我一如とは
先ほどの one with everything は、屋台用語では「全部のせ」だった。
では、これを直訳してみよう。
one with everything
⇒ 一つが全てと一緒に
単なる言い回しのように見えるが、もしこれを仏僧が言ったとなると話は変わる。
ここで、仏教やヒンドゥー教を生んだインド哲学が大きく関連してくる。
インド哲学には「梵」と「我」という概念がある。
それぞれサンスクリット語で次のような意味になる:
- 梵(Brahman)
⇒ 宇宙の根本原理(everything に相当)- 我(Ātman)
⇒ 個人の真の自己(one に相当)
この二つが本来一体であるという真理を「梵我一如(ぼんがいちにょ)」という。
ヒンドゥー教では宇宙と自己の一体化を目指す。
そして仏教では、この境地は「無我」や「涅槃」に近い。
あらゆる分別や境界が消え、自己と世界の区別がなくなる完全な統合状態だ。
After years of meditation, he finally felt one with everything.
(長年の瞑想の末、彼はついに万物と一体になったと感じた。)
西洋文化では、この「一体化」のイメージは仏教とヒンドゥーの概念が混ざって oneness(一体性) として理解されることが多い。
さきほどの仏僧の “Make me one with everything.” も、この「仏教風の一体性(oneness)」を背負って発せられたセリフだ。
そして、この「一体性」のセリフが、屋台で発せられることで――
🌍ホットドッグと宇宙的統合の境地が共存する英文が生まれるのだ。
これこそ、後に明らかになる「二重解釈」を可能にする前提の知識である。
🕵️♂️ミステリーの現場検証 ― ジョーク全文
いよいよホットドッグの注文のミステリーの全容に迫っていこう。
もう一度、英語ジョークを確認してみる:
🧘A Buddhist monk walks up to a hot dog stand and says,
“Make me one with everything.”
自然な和訳はこのようになる:
🧘仏僧がホットドッグ屋に歩み寄り、こう言った。
「私に全部のせを一つ作ってください。」
ここまでは、完全に「ホットドッグ注文モード」だ。
だが、この英文にはもうひとつの解釈が存在する。
推理パート① ― 宗教的解釈
ここで、インド哲学の「梵我一如」を思い出してほしい。
- one ⇒ 我(Ātman)
- everything ⇒ 梵(Brahman)
この前提で Make me one with everything を読み替えると――
私を宇宙の全て一体化させてくれ。
つまり、このジョークは――
- 日常的には ⇒ ホットドッグの注文
- 宗教的には ⇒ 宇宙との一体化の願い
――という2つの意味を同時に抱えている。
英語圏で one with everything と聞くと、多くの人は禅や瞑想の最終到達点を思い浮かべる。
それは単なる「一緒にいる」ではなく、あらゆる境界が消えさり、自己と他者の区別もなくなり、あらゆる対立が溶けていく。
言い換えれば、世界そのものに溶け込むような経験だ。
推理パート② ― 文法的解釈
このミステリーを成り立たせているトリックは「動詞の基本文型」にある。
それはたった3語――“Make me one” に隠されている。
英語の make が2つの文型をとれることは、名探偵の諸君ならご存じだろう:
- SVOO(第4文型)
⇒ 私に一つ作る - SVOC(第5文型)
⇒ 私を一つにする
この文型の分かれ道が、そのまま意味の分かれ道になるのだ。
① SVOO(第4文型)
Make me one with everything.
⇒ 作って 私に 1つ 一緒に すべてのトッピングと
- one は「ホットドッグ1つ」
- with everything はトッピング全部のせを指す
こちらは完全に屋台の注文として成立する。
② SVOC(第5文型)
Make me one with everything.
⇒ 作って 私を 1つに 一緒に 万物と共に
- one は「一つの存在」
- with everything は「万物と共に」
この文型だと仏教的な万物と一体となる「悟り」の解釈が立ち上がる。
これにより――
🌍同じ語順と単語でありながら、2パターンの文型により、2つの意味が同時に立ち上がる。
これこそ英文法ならではのトリックであり、二重の解釈を可能にするトリックだ。
💡真相の全貌
我々が追ってきたのは、屋台で交わされたたった一言――
Make me one with everything.
このセリフが笑いを生むのは、単なる言葉遊びではない。
- 現実世界の注文
- 精神世界の悟りの請願
この2つの可能性が同時に存在している。
それを可能にしているのは、柔軟な文型を生み出す英語の動詞 make である。
こうしてトッピングの全部乗せのように、英文法と仏教思想が一文の中に盛り込まれている。
さて、名探偵として結論を述べよう。
このミステリーは、英語の動詞の文型の柔軟さと、文化背景の豊かさによる高度なトリックである。
真相を見抜いた者だけが、仏僧の真意に気づき、そしてニヤリとほくそ笑むのだ。
― 完 ―
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
動詞 make って、意味がたくさんあって覚えるのは大変ですよね。
でも、その多彩さがあるからこそ、こんな愉快な英語ジョークも生まれるんです。
そして今や、このブログを読んでくださったあなたも――英文法ジョークの達人のひとり!
😊Yes, I just made you one!
では、また別の記事でお会いしましょう!
ちょっとユニークな英語塾
志塾あるま・まーたは、英語が苦手な方でも楽しく学べるオンライン英語塾です。
高校を半年で中退した塾長が、アメリカ留学中にエスペラント語と出会ったことをきっかけに、ゼロから“世界で通用する英語力”を習得できました。
その学び方をベースに、統語論(Syntax)と意味論(Semantics)を組み合わせた独自の指導法を展開しています。
生成AI ChatGPT に論理的推論や自由な発想の展開をしてもらうための、英語でも日本語でも可能にするプロンプトの作り方も一緒に学んでいきます。
さらにラテン語などヨーロッパ系言語の知識や、古英語・中英語を含む英語史の視点も取り入れた、ちょっとユニークで本格派な英語学習法をご紹介しています。
あるま・まーたの英語の学び方に興味を持っていただけたなら、ぜひお問い合わせください。
ブログの感想や英語の疑問・質問などでもお気軽にどうぞ!