小学校で四則演算(しそくえんざん)を習いますよね。
漢字が4つも並ぶとすこし堅い印象がありますが、実際にやることはシンプルです!
- 足し算(1+1)
- 引き算(2-2)
- 掛け算(3x3)
- 割り算(4÷4)
英語ではこれらをまとめて「the four operations(四則演算)」と言います。
ところが、なぜかこれまた似たような意味の四文字熟語が登場します!
それも2つ連続で!
- 加減乗除
- 和差積商
一体、この2つはどう違うのでしょうか?
なんとなくわかるけど、具体的にはようわからへん・・・
そんな方も多いかと思います(私もその一人!)
というわけで、この2つの違いを英語の語源もあわせて理解してしまいましょう!
🔰加減乗除と和差積商の違い
ではさっそく違いの解説に進みます:
💠加減乗除 ⇒ 計算する操作(operation)
💠和差積商 ⇒ 計算した結果(result)
これを計算で置き換えると・・・
- 1+1=2
- 加:1+1
- 和:=2
- 4+2=2
- 減:4-2
- 差:=2
- 1x2=2
- 乗:1x2
- 積:=2
- 8÷4=2
- 除:8÷4
- 商:=2
まとめるとこんな感じです:
- 計算する操作 ⇒ 計算した結果
- 加減乗除 ⇒ 和差積商
そして加減乗除には「数字」と「計算記号(+ - × ÷)」が登場します。
ですからちゃんと「計算に使われる数」と「計算する操作」を区別した言葉もあります。
💡数の種類(何を使うか?)
- 足すときに使う数 ⇒ 加数(かすう)
- 引くときに使う数 ⇒ 減数(げんすう)
- かけるときに使う数 ⇒ 乗数(じょうすう)
- 割るときに使う数 ⇒ 除数(じょすう)
💡操作の方法(どうやって計算するか?)
- 足し算のやり方 ⇒ 加法(かほう)
- 引き算のやり方 ⇒ 減法(げんぽう)
- 掛け算のやり方 ⇒ 乗法(じょうほう)
- 割り算のやり方 ⇒ 除法(じょほう)
これを足し算を例にすると・・・
- 1+2
- 1、2⇒ 加数!
- + ⇒ 加法!
・・・となります。
これだと結局、漢字の意味を覚えないとダメですよね?
でも、もしかすると英語だとすんなり理解できるかもしれせんよ?
ではさっそく英語の四則演算をさぐってみましょう!
💠加減乗除は英語でなんという?
加減乗除はすべて「計算する操作」です。
だから基本の形は「動詞 verb」です。
- 足す ⇒ add
- 引く ⇒ subtract
- 掛ける ⇒ multiply
- 割る ⇒ divide
そして「○法(計算する方法)」として表現する場合は「名詞 noun」に変えます。
- 加法(足すこと) ⇒ addition
- 減法(引くこと) ⇒ subtraction
- 乗法(掛けること) ⇒ multiplication
- 除法(割ること) ⇒ division
ラテン語源の「加減乗除」の英語
これら計算用語はそのまま英単語ですが、もとはローマの公用語だったラテン語(Latin)からきています。
英語がまだ小さな領域の言語でしかなった時代に、ローマ帝国は西ヨーロッパを広域支配していました。
そのため、ラテン語はもうすでに行政・軍事・法律・建築などの高度に技術的な仕組みを発達させていました。
そのため計算のような複雑な操作を行う用語が、ラテン語にはすでにたくさん存在していたんです。
それがゲルマン人の言葉である英語やドイツ語にも取り入れられていきました。
🔵加:add = ad + dare
英語の動詞 add はラテン語 addere に由来します。
addere = ad(~の方向へ)+ dare(与える)
⇒ 『~向けて与える(数を加える)』
- ad:接頭語や前置詞で「〜へ」や「〜に向かって」という方向を表します。
- 英語の to, toward に相当します。
- dare:「与える」という動詞。
- 英語の give に近い言葉です。
英語の addition(追加)や additive(添加物)もここから派生しました。
🔵減:subtract = sub + tract
英語の動詞 subtract(引く)はラテン語 subtrahere に由来します。
subtrahere = sub–(下に)+ trahere(引っ張る)
⇒『下に引っぱる(数を引き下げる)』
- sub:下へ、下にという方向
- 英語 under に近い言葉です。
- tract:引く、引っぱる
- 英語 pull と似た言葉です。
英語の tractor(トラクター)や traction(牽引)と同語源です。
また attract(ひきつける) や contract(契約、収縮する)など tract 系の英単語は多くあります。
🔵乗:multiply = multi + plic
英語の動詞 multiply(掛ける)はラテン語 multiplicare に由来します。
multiplicare = multus(多く)+ plicare(折る)
⇒『たくさんに折り重ねる(積み重ねて増やす)』
- multi:たくさん
- 英語の many と近い意味で multi-task にも使われる。
- plic:折る、たたむ
- 英語の fold と似た意味の言葉。
英語 duplicate(二重に折る ⇒ 複製)も同語源です。
🔵除:divide = di + videre
英語の動詞 divide はラテン語 dividere に由来します。
dividere = dis-(離す)+ videre(道をつける)
⇒『道を分岐させる(数を分配する)』
- di(= dis):離す・分ける
- 英語 disappear や disconnect の dis と同じ意味の接頭語。
- ここでの意味は split(分ける)と近い。
- videre:道をつける
- 「道筋・分岐」を示す語源から「分ける」へと派生しました。
- 注意としては videre(見る)という解釈もあり、文献により解釈がやや異なります。
ちなみに英語は、基本的な単語ほどドイツ語などよく似たゲルマン語の語源が多くなります。
そこから徐々にラテン語やフランス語などロマンス語源の単語が増えてきます。
英語はゲルマン語を中心にして、ロマンス語の言葉を取り込んだハイブリッド言語なんです。
カンタンに英語の発展してきた歴史をご紹介しておきます。

ですのでラテン語由来の英単語は、ちょっと無理やりゲルマン語源の英語に言い換えることも可能です。
もしかしたら四則演算もわかりやすくなるかもしれません。
- add ⇒ to-give
- 与える方向に足す
- subtract ⇒ under-pull
- 下に引っ張って減らす
- multiply ⇒ many-fold
- たくさん重ねて増やす
- divide ⇒ road-split
- 道を分岐させて配る
こうしてみると、この4つの動詞はすべて「方向性」や「構造」を操作(operate)していると分かります。
つまり四則演算とは「空間を操る動詞」が担当しているんです。
計算記号(+−×÷)は何語?
四則演算の英語がわかると、こんな疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません:
ほんなら +(プラス)とか -(マイナス)ってなんなの?
これらは「計算記号(+−×÷)」のことで plus や minus もラテン語源なんです!
ちなみに、これらの計算記号が最初に登場するのは、ドイツの数学者であるヨハネス・ヴィトマン(Johannes Widmann)の1489年に文書の中です。
ドイツといっても、この時代では「神聖ローマ帝国 the Holy Roman Empire」だったので、ラテン語もドイツ語もどちらも使われていました。

というわけで、ここで「計算記号(+−×÷)」の語源も解説していきます!
ではまず英語の読み方です:
- +(plus)
- −(minus)
- ×(times)
- ÷(divided by)
では次に、語源に進みます:
- +(plus)
- ラテン語の形容詞・副詞の比較級で「より多い」
- 英語 more とほぼ同じ意味。
- −(minus)
- ラテン語の形容詞・副詞の比較級で「より少ない」
- 英語 less とほぼ同じ意味
- ×(times)
- 「機会・回数」を意味する古英語 tīma に由来する。
- 計算では珍しいゲルマン語源のことば
- ÷(divided by)
- divide の過去分詞で「分けられる(受動態)」の意味
実はプラスやマイナスもラテン語の比較級に由来するんです。
でも英語の比較級には注意してください!
英語で more than や less than は不等号の読み方で使います。
- X > Y
⇒ X is more than Y
- 不等号 > は greater than でも言い換え可能です。
- X < Y
⇒ X is less than Y
なんと語源が違う2種類の比較級が英語に使われているんです!
では、まとめておきます。
- + , − の記号読み(ラテン語ベース)
+
= plus(プラス)−
= minus(マイナス)- > , < の不等号読み(古英語由来のゲルマン語ベース)
>
= more than<
= less than
カンタンな計算の語源だけ見ても、英語がゲルマン語とロマンス語のハイブリッド言語なのがよくわかります。
💠和差積商は英語で何という?
ここまでみたように加減乗除は「計算する操作」だったので「動詞」でした。
それに対し「和差積商」は「計算した結果」なので「名詞 noun」で表現されます。
- 和 → sum(名詞)
- 差 → difference(名詞)
- 積 → product(名詞)
- 商 → quotient(名詞)
ここで注意ですが differ(異なる)や produce(生み出す)という英語の動詞もあります。
ですが、これらの動詞は「計算操作の動詞」として使われることはありません。
その代わりに英語では先ほど紹介した subtract と multiply を使います。
ラテン語源の「和差積商」の英語
では実際に英語の和差積商の語源を確認してみましょう:
🔵和:sum = summus
英語の名詞 sum はラテン語 summus に由来します。
summus = 最高の、最上の
⇒ 『(足した結果が)数の最高点」』
- summus:最も高い
- ラテン語の形容詞 superus(英語 super)の最上級
また英単語 superior は superus の比較級なので「ラテン比較級」と呼ばれることもあります。
ちなみに summary(要約)や summit(頂点)も同語源です。

🔵差:difference = dis + ferre
英語の名詞 difference はラテン語 differentia に由来します。
differentia = dis-(離す)+ ferre(運ぶ)+分詞・名詞変化
⇒『(引いたことで)数が離れた度合』
- dis-:別々に、分離して
- 英語にも dismiss(解散する)など多くの語にある。
- ferre:運ぶ
- 英語だと動詞 carry に相当する。
🔵積:product = pro + ducere
英語の名詞 product はラテン語 productum に由来します。
productum = pro-(前に)+ ducere(導く)+名詞変化
⇒『(掛けることで)前方に導き出されたもの』
- pro-:前へ
- 英語の for- のように使う(例:forward)
- ducere:運ぶ
- 英語だと動詞 lead(導く)に相当する。
ちなみに掛け算とは違いますが、ベクトルで使う「内積」と「外積」も product と表現されます。
いずれも2つのものから「生み出されるもの(product)」という意味になります。
🔵商:quotient = quotus + iēns
英語の名詞 quotient はラテン語 quotientem に由来します。
quotientem = quotus(何番目)+ -iēns(している)+ 名詞変化
⇒『(分けられたことで)それぞれにいくつ分の割り当てになるもの』
- quot :いくつ
- 英語の how many のように「数」を表す疑問詞です。
- quotus:第何番目の、いくつの割合
- 英語だと which in number に相当する。
- -iēns:している
- ラテン語の現在分詞の語尾で、英語の -ing に相当します。
ちなみに quota(割り当て)や quote(引用 ⇒ 一部を取り出す)も同語源です。
では最後に「加減乗除」と「和差積商」をまとめてみましょう。
数を加える(add)と、あわせて最大値(sum)に届いた。
数を下に引っ張って減らす(subtract)と、その分だけ差(difference)ができた。
数を何度も重ねる(multuply)と、何倍になったもの(product)が生まれた。
数を分ける(divide)と、一人当たりの割合(quotient)になった。
こうしてみるとちゃんとストーリーになっている気がしませんか?
それなら日本語も英語もまとめて覚えることで、より意味が定着するかもしれませんね!
ちょっとユニークな英語塾
志塾あるま・まーたは、英語が苦手な方でも楽しく学べるオンライン英語塾です。
高校を半年で中退した塾長が、アメリカ留学中にエスペラント語と出会ったことをきっかけに、ゼロから“世界で通用する英語力”を習得できました。
その学び方をベースに、統語論(Syntax)と意味論(Semantics)を組み合わせた独自の指導法を展開しています。
生成AI ChatGPT に論理的推論や自由な発想の展開をしてもらうための、英語でも日本語でも可能にするプロンプトの作り方も一緒に学んでいきます。
さらにラテン語などヨーロッパ系言語の知識や、古英語・中英語を含む英語史の視点も取り入れた、ちょっとユニークで本格派な英語学習法をご紹介しています。
あるま・まーたの英語の学び方に興味を持っていただけたなら、ぜひお問い合わせください!
ブログの感想や英語の疑問・質問などでもお気軽にどうぞ!