イエス・キリストは名前じゃない?オリーブオイルとキリスト教でその意味がわかる

世界が広がる英語の知識

生徒さんから高級なオリーブオイルをいただきました。ありがとうございます。

実はオリーブオイルのような油はキリスト教と密接な関係があります。

そこでイエス・キリストの名前の由来にオリーブオイルをつかって迫りたいと思います。

オリーブオイルとキリスト教の関係

おそらく日本ではキリスト教(Christianity)はあまりなじみのない宗教だと思います。 

日本ではキリスト教はほとんど信仰されていませんし、公教育でも宗教を避ける傾向があるので、仕方がないことだと思います。 

しかし世界人口の3分の1はキリスト教徒(Christian)です。

世界規模でみた場合は、キリスト教の教えは「世界の常識」といってもいいほどに浸透しています。

英語圏をはじめとする西洋文明圏では、言語は違えど、キリスト教の知識は非常に細かい部分まで共有されています。

ちょうど「遣隋使」や「遣唐使」の意味を日本、中国、台湾ですぐに共有できることとよく似ています。

そしてこのキリスト教の常識ではオリーブオイルは欠かせないものなのです。

中でも「イエス・キリスト Jesus Christ」と強いつながりがあるんです。

「イエス」の意味と「キリスト」の意味

日本でも、イエス・キリスト(Jesus Christ)は非常によく知られています。

実は「イエス・キリスト」にはただの名前を超えた大きな意味が含まれています。

もともとイエスが生まれた時には、当然ながらキリスト教はまだ存在しませんでした。

その代わりに、ユダヤ教(Judaism)というユダヤ人(Jews)の信仰する宗教がありました。

そしてイエスもユダヤ人でした。

まず「イエス Jesus」はユダヤ人の言葉であるヘブライ語(Hebrew)の「ヨシュア Joshua」に由来する男性名です。

名前の「イエス」の意味は「ヤハウェ(ユダヤ教の絶対神)は救いである」になります。

イエス・キリスト - Wikipedia

絶対神は言語ごとにいろんな呼び名がありますが、同じ存在と考えて大丈夫です。

  • God ゴッド(英語 English)
  • Deus デウス(ラテン語 Latin)
  • Allah アッラー(アラビア語 Arabic)
  • Jehovah ヤハウェ(ヘブライ語 Hebrew)

一神教の場合、ユダヤ教でもイスラム教でも God といえば「絶対神」の意味です。

決してアッラーやデウスという特別な名前の神様がいるわけではないので注意ください。

さて当時のユダヤ世界では、イエスは比較的ありふれた名前でした。

ところがイエスとは異なり、キリストの意味は姓名ではないんです。

キリストはギリシャ語(Greek)の「フリストス khristos」に由来します。

この「フリストス」は「救世主」を意味する言葉です。

つまり「イエス・キリスト」は「イエスは救世主(キリスト)である」という意味になります。

イエス・キリストを英語にすると「Jesus the Savior」ということができます。

豆知識ですが savior はイギリス英語のスペルでは saviourと書くこともできます。

「油を注がれた者」が「世界を救う者」

ギリシャ語の「フリストス Khristos」は最初から「救世主」という意味ではありませんでした。

フリストス Khristos はギリシャ語の「khriein」ヘブライ語の「māšīaḥ マーシーアハ」が混じって生まれた言葉です。

この語源となった khrieinmāšīaḥ のどちらも「油を注ぐ anoint」という意味を持ちます。

イエスの時代には「王(king)」「祭司(high priest)」「預言者(prophet)」など指導的立場の人たちに「神の祝福」として香油やオリーブオイルなどを塗る習慣がありました。 

つまり動詞 anoint には「油を塗ることで聖なる存在とする」という意味があります。

救世主 = 油を注がれた聖なる存在

英語でも「救世主」を「メシア(メサイア) Messiah」と呼びます。その語源はヘブライ語の「マーシーアハ」に由来します。

その「メシア(メサイア)」の意味は「油を注がれた者 the Anointed」です。

このことから人々を救う救世主としての役割も表すイエス・キリストの呼び名になりました。

キリスト教徒にとって、イエスは「God」から人々を救う役目を与えられた特別な存在です。

やがてもともと名前ではなかったキリストがイエスの名前としての意味を強めていきます。

  • イエス:人間としての名
  • キリスト:人々を救う使命を背負った God の子としての名

すべてはアダムとイブから始まった

では、そもそも「救世主」とはなんなのでしょうか?

イエスの役目を理解するには聖書の話を知る必要があります。

特に God が生み出した最初の人類であるアダムとイブ(Adam & Eve)の話と強く関連しています。

かいつまんでお話しますと・・・ 

God の生み出したエデンの園(Garden of Eden)でアダムとイブは幸せに暮らしていました。

しかし、悪魔の誘惑により、彼らは God の言いつけを破って「知恵の実」を食べてしまいます。

God は怒り、アダムとイブを追放し、二人に罰を与えます。

この God から罰を受けたことによりアダムとイブの子孫である全人類は、God に守られることなく苦しみを背負って生きることになってしまいます。

そして、God から受けた罰こそ「 labor(US)/ labour(UK)」と呼ばれるものです。

Labor とは God の罰

labor は「労働」と訳されます。

そして、もうひとつ「出産・陣痛」という意味で使います。

God の言いつけに逆らった結果、アダムは「労働」そしてイブは「出産」を与えられます。

そして、その2つは「苦しいもの」という意味を持ちます。

そしてアダムとイブの子孫であるすべての男性とすべての女性はこの「労働と出産(どちらも labor)」を義務付けられている、というのがキリスト教の発想です。

全人類が背負う「原罪 Original Sin」

このように God に逆らい、楽園から追放され、罰を与えられ、苦しい世界で生きるのが人間の運命なのです。

これをキリスト教では「原罪 Original Sin」と呼んでいます。

しかしこれで話はおわりません。

God の言いつけに逆らった人類はどうなるでしょうか?

日本ではウソをつくと閻魔様に舌を引っこ抜かれてしまいます。

キリスト教の考えでは、原罪を背負う人間は天国に行けません。

では、どうしたらいいのでしょうか?

大丈夫です。キリスト教徒にしてみれば「慈悲深い God」」は我々を見捨ててはいません。

そこで登場するのが「救世主イエス Jesus the Savoir」です。

救世主キリストの役目は「原罪」から人類の解放

原罪を背負う人類は、天国に行けません。

God の救いを得ることができません。

死後も魂は休まるところを見つけられないのです。

どれだけ地上で人格者であっても、天国は God の言いつけを守った人だけが行けるところなんです。

ソクラテスも孔子も仏陀も天国に行けません。

私の尊敬する法然さんや最澄さんも邪教の信者として地獄行きだそうです。

キリスト教徒以外は全員地獄行きが決定しています。クリスチャンになる以外は道はないのです。

実際に戦国時代の宣教師が日本中で触れて回ったのは「きみらは全員、このままだと地獄行きになるのを知っているのか?」ということです。

戦国時代の宣教師による「キリスト教の布教」とは慈善事業をしながら同時に死の恐怖を煽る行為です。

もちろん当時の欧米人なので人種差別や奴隷貿易も平然と行っていました。

そんな人格を疑うような人たちでもキリスト教徒なので天国で楽しい暮らしが待っているようです。

さて話は逸れましたが、救世主キリストの役目は「地上で苦しみ、死後も天国に行けない人類を救うこと」でした。

そのためキリストは God の教えを広めます。

しかし、それはユダヤ人たちの教えとは違っていたために、反発を受けます。

そして、その死のきっかけをつくったのが「ユダヤ人」だと聖書に書いてあります。

しかし結果として人類を原罪から救うことになったのは「キリストの死」です。

キリストが全人類の代わりに「犠牲」となることで「全人類の原罪」から我々を解き放ってくれました。

救世主のいろんな言い方

さてキリスト教は世界宗教です。当然、イエス・キリストはいろんな言語で「救世主」と呼ばれます。

英語を読んでいる場合でも、この4つは目にします。

  • Christ(ギリシャ語)
  • Messiah(ヘブライ語)
  • Savior (Saviour) of the World(英語 US/UK)
  • Salvator Mundi(ラテン語)

レオナルド・ダヴィンチの絵画で「サルバートル・ムンディ」というのが見つかりました。

Salvator Mundi (Leonardo) - Wikipedia

一見してわかりますが、この絵のモデルは当然、イエス・キリストです。

戦国時代の日本人キリシタンも救世主キリストのことを「さるばとーる・むんぢ」と呼んだりもしています。

ほかにも「ぜすす Jesus」とかいろいろあります。現代の英語と同じです。

これはイエズス会の宣教師がつかっていた聖書はラテン語だったことによるからと思われます。

カトリック教会では聖書はラテン語で書かれているものしか認められていなかったので、そのまま日本でも使われたのだとおもいます。

ちなみにプロテスタント運動の引き金となったマルティン・ルター(Martin Luther)が聖書のドイツ語訳を行いました。

なぜならラテン語は一般民衆が読めなかっため、カトリック教会の行いと聖書の記述が矛盾していることを証明するためだったからです。

Holy Anointing Oil (聖膏油)

さて「救世主」の本当の意味がわかったところで「油」に話を戻します。

キリスト教やユダヤ教では「」が「聖なるもの」として関連しています。

さきほど Christ の意味として「油を注がれた者 the anointed」という英訳を紹介しました。

ここで使われている動詞 anoint は「聖別する」と訳されます。

意味としては「油を塗ることで聖なるものとする」になります。

こういった油は司祭などを聖別するために使われるだけでなく、病人にもつかわれていました。

これを「病者の塗油 anointing of the sick」といってカトリックの重要な儀式のひとつになっています。古い表現だと unction といいます。

これは当時、病気の原因と考えられていた悪霊を追い払う効果を香油などが持つと信じられていたことに由来します。

ちなみに軟膏のことも ointment といいます。ointment は薬効成分に加え油が主成分だからです。

もちろん油であれば何でもいいわけではありません。

それでは聖書に登場する holy anointing oil を見ていきましょう。

  • olive oil / オリーブオイル 
  • myrrh / ミルラ 
  • cinnamon / 桂皮(けいひ)
  • cassia / 肉桂(にっき)
  • kaneh bosem (種類には諸説あり)

神社や寺院に「油」がまかれる事件

2016年ごろに神社やお寺に「油」がまかれた事件が多発しました。

連日、メディアを賑わしていたほど、日本人なら誰でも知っている事件でした。

詳しくは Wikipedia に記事が載っているので、参考下さい。

寺社連続油被害事件 - Wikipedia

しかし犯人が日本に帰化したキリスト教徒だったと判明したとたん、日本のマスコミは一気に沈黙しました。

詳しくは Wiki の記事を見てもらうとわかりますが、マスコミが沈黙する理由は、犯人の帰化前の国籍や宗教が絡んでいるからなのか、ほかに理由があるのかわかりません。

私は事件の全容がわかる前から「キリスト教徒が神社(彼らからみれば邪教崇拝施設)を清めるために(彼らにとっての)聖なる油をまいているはず」と周りに人たちには伝えていました。

これは宗教の基本的な知識をもっていれば簡単に推測できます。

  • 一神教は他の宗教を排斥する
  • 油で聖別する

この2つを知っていればすぐに連想できます。

また同時期に、神社仏閣などに油がまかれる以外にも、仏像が破壊される事件が多発しました。

仏像大量破壊事件 - Wikipedia

記事内には犯人の詳しい動機は書かれていません。

しかし、日本の信仰に向けての排他性が理由の一つなのではないでしょうか?

キリスト教の戒めである十戒(じっかい)には「偶像崇拝の禁止」が明示されています。

キリスト教が日本に入ってきた戦国時代にも、九州付近ではキリシタンによる神社や寺院に攻撃が加えられ、仏像の破壊も行われました。

当時、日本にいた宣教師やキリシタンは決して平和の信者ではありません。

奴隷貿易を平然と行い、世界中で破壊や殺戮を繰り広げるヨーロッパ人の手先でした。

島原の乱もキリシタン迫害に対する反発というような見方があるようです。

しかしキリシタンが日本の既存の宗教などに攻撃を加えていた事実を見逃してはいけません。

私にはこういった文化財の破壊行為に、国同士の軋轢だけでなく、それを助長する宗教も関連していると感じてしまいます。

forced labor と forced to work の大きな違い

また、God による人類への罰である「labor」が日本と韓国の間で英語表記をめぐって外交問題に発展したこともあります。

詳しくは、毎日新聞のネット記事にも載っています。

「forced labor」と「forced to work」日本人が知っておかなければならないこと
「forced labor(強制労働)」と「forced to work(働かされた)」か。論争が続くが、日本側は「強制労働条約違反」と判断したILO見解の存在も認識しておくべきだ。

私が思うに「強制労働」か「強制労役」かという話は本質からかけ離れているのではないでしょうか?

“work” なのか? それとも “labor” なのか?

もっというと 

“labor を使うかどうか?”

ここだけが大問題だと思います。

和訳してしまえば全く意味がありません!!!

labor は英語でいうところの「天罰」です。

わざわざ苦しいことをさせられる、というニュアンスがあります。

だから labor / labour を使うと「かなりネガティブなイメージ」を付与できるんです。

日本語で「労役」「労働」といわれて、どちらが大変そうですか?

わかりませんよね?

中国の老子(Lao Tzu)もいっていますが「仕事は楽しくやるもの」なんです。

「仕事は苦しいもの」という概念自体がキリスト教のものなのです。

英語では laborer / worker / professional とか仕事の内容で区分けがするのが好きみたいです。

なさけないのは「外資系コンサル」をはじめこういう「キリスト教の偏見」を「世界の常識」かのように吹聴する海外通を気取る日本人がとても多いことです。

日本人が「仕事の内容」でマウンティングとる必要がありますか?

肌の色でああだこうだと理由をつけて、マウンティングをとる必要がありますか?

仕事にしろ肌の色にしろ、日本語にそんな上下の区分けはいりません

キリスト教に根差した偏見など理解したうえで無視・軽視しておけばよいことのように思います。

まあ「外資系」や「海外体験」を前面に押し出してくる日本人の表層的な知識は聞き流すことをおススメします。

ですが、外交関係になると話は別です。

私個人は「どうでもええわ」と思いますが、それで日本の問題にされるなら、日本人が無意味に恥をかかされるなら、断固として適切に対処するべきです。

私はこのニュースの一連な流れの中で、外務省が “forced to work” を徹底的に譲らなかったとき「外務省!さすが!」とおもいました。

外務省は英語に限らず「語学のエキスパート集団」です。

当然、英語圏の方たちからの「アドバイス」などもあったかもしれません。

英語表記というのは間接的に「キリスト教文化圏の人たちへのイメージ」を左右します。

神社仏閣への「油」の時も、「労働」の英訳についても、もはや宗教がからんでいるゴタゴタなんです。

こういう歴史や文化が絡む問題は、英語をマスターしてキリスト教文化圏の欧米人に直接聞けばいい話なんです。

キリスト教を知らずに英語が理解をするのは難しい

私見ですが日本では「日本人 or 外国人」もしくは「日本 or 海外(欧米)」という国籍国土での分類に持っていく傾向があるように見えます。

それと同時に「宗教・信仰・思想」は集団の行動を決めるとても大きな要素になります。 

宗教・信仰・思想は国や人種を超えて人々をまとめ上げます。

イスラム過激派が国境や国籍を超えて、世界中から兵士をリクルートしているのを見ていると、それは明白です。

さらに「一神教 」という信仰を持つ人たちの世界観は、日本人の伝統的な価値観と大きく異なります。

キリスト教とイスラム教を信じる人口はあわせて世界の半数になります。

一神教の価値観が理解できないまま、世界を見ようとすると歪んでしまう可能性があります。

英語を勉強するときはヨーロッパの歴史や信仰を知ることで全体像がより理解しやすくなります。

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