英語はSVO語順だけじゃない?古英語のV2語順で倒置のナゾを解き明かす!

照応曼荼羅英文法

英語と日本語の基本の語順(word order)について、こう聞いたことはありませんか?

  • 英語はSVO語順
    ⇒ I eat an apple.
  • 日本語はSOV語順
    ⇒ 私はリンゴを食べます。

これは多くの英語学習者がよく習う解説です。

つまり――

  • 英語:主語動詞目的語
  • 日本語:主語目的語動詞

……たしかに英語の解説にはよくこう書いてあります。

注意として「SVO語順」という用語は、わかりやすく語順を説明するために使用されます。

実際には、目的語(O)でなくて補語(C)でもOKなんです!

だから、次のどちらも言語の語順がテーマだと「SVO語順」と呼ばれます:

  1. I know it.(SVO文型)
  2. I am happy.(SVC文型)

つまり大切なポイントは――

🗝️「主語 S動詞 V 別の要素」という順番だけなんです。

そうだとしても、ふと『なにかがおかしい?!』と思いませんか?

たとえば、こんな英文に引っかかったことはありますよね?

  • What did you do?
    ⇒ あなたは何をしましたか?

🤔主語は you やけど…でも what が先頭に来てるし…。

では、これはどうでしょう?

  • There is a house near the lake.
    ⇒ その湖の近くに家があります。

🤔う~ん…「家がある」ってことは、主語は a house やないの?

こんな「モヤモヤ」を感じたことがあるなら――それ、大正解なんです!!!

その違和感こそが、英語の真の語順ルールのナゾを解くカギになります。

なんと、実は英語って「主語が先頭に来ない」って意外とたくさんあるんです!

SVO語順じゃない英文は意外と多い!?

では英語の語順について「主語 S」の位置を見ていきましょう!

本来なら「主語 ⇒ 動詞」の順番になるはずですが・・・?

まずは基本の疑問文からです。

  1. Who is he?
  2. Where do you live?

【 よくある解説 】
🧑‍🏫疑問文の場合は「主語⇔動詞」の語順が変わります。

なるほど――疑問文だと語順が変わるんですね!

では、次の疑問文はどう考えればいいでしょう?

  1. What is going on?
  2. What happened there?

【 よくある解説 】
🧑‍🏫疑問詞が主語なら倒置は起きません。

わかりました――疑問文でもSVO語順でいいパターンもあるんですね!

それならこれはどうですか?

  1. There is a cat on the roof.
  2. There are two cats on the roof.

【 よくある解説 】
🧑‍🏫存在を意味する there は主語です。

そうですか――では、なぜ be動詞が変化するんでしょう?

それに there は副詞だったはずでは・・・?

まあ、とりあえず、次に進むしかなさそうです。

  • Here comes the bus.
  • Now is the time to do it.

【 よくある解説 】
🧑‍🏫場所や時間などが先頭に置かれる場合もあります。

う~ん、そうなんですね。

でも、まだまだ疑問は尽きません。

こんなのとか――

  1. So am I.
  2. Neither do we.

こんなものも――

  1. Never had she known the fact.
  2. Only then did he find the truth.

ここまで来てしまうと「SVO語順」なんてどこへやら・・・。

でも、ここまで読んできたみなさんなら、もう気づきですよね?

😭少なくとも疑問文って語順とほぼ関係ないやん!

そうなんです!

英語の語順は、SVOだけでは語り尽くせません。

そこに潜んでいるのが――V2語順(V2 word order)」なんです!

😱え?動詞(V)が2番目に来るだけ……って、どうゆうこと?

🤯主語(S)や目的語(O)の順番はどうなんの!?

ご心配なく!

これから英語の語順のナゾが、すべて明らかになります。

絶対に知っておきたいV2語順

おそらく「英語はSVO語順です」と習ってきた人にとって――

💡V2語順(verb-second word order)
⇒ 動詞が2番目に来る語順

――と聞いても、ピンと来ないかもしれません。

でも実は、英語の中には、V2語順のパターンがいくつも残っているんです。

実際、Wikipediaでも次のように紹介されています:

V2 word order is common in the Germanic languages and is also found in Northeast Caucasian Ingush, Uto-Aztecan O’odham, and fragmentarily across Rhaeto-Romance varieties and Finno-Ugric Estonian. Of the Germanic family, English is exceptional in having predominantly SVO order instead of V2, although there are vestiges of the V2 phenomenon.

V2語順はゲルマン語のグループによく見られる語順パターンです、そして北東コーカサスのイングーシ語、ユト・アステカ・オオダム語、そしてラエト・ロマンス諸語とフィン・ウゴル語族のエストニア語にも部分的に見られます。ゲルマン語グループの中で、英語は、例外的にV2ではなく、SVO語順が基本となっています。ただし、V2語順の特徴が現れるパターンも今なお一部に残っています。』

V2 word order – Wikipedia

この Wikipedia の引用をサクッとまとめます:

  1. ゲルマン語の仲間はV2語順が普通やで!
  2. 英語はSVO語順が基本になったけど、V2語順も残ってるで!

英語はゲルマン語の仲間なので――ドイツ語オランダ語と同じ「V2語順」でした。

特に、古英語(Old English)と呼ばれる時期には、V2語順はよく使われたんです。

このように英語は歴史の中で変化して「SVO語順」に固まっていきます。

…となると英語の本当の語順は――

✅基本パターン ⇒ SVO語順
☑️特定パターン ⇒ V2語順

――ということなんです!

さて、このV2語順には注意が必要です。

なぜならV2語順とは――文の中で 「定形動詞」が2番目に来るパターンのことだからです。

⚓️定形動詞が「V2」に位置する

おそらく日本語では「定形動詞」は詳しく解説されないかもしれません。

ですので――

🤔定形動詞(finite verb)って何?

そんなん聞いたことないねんけど・・・?

――と、思われる方も多いかと思います。

でも、ご心配なく!

焦らずにナゾを一つひとつ解決していきましょう!


まず「定形 finite」の意味を確認します:

主語時制などによって動詞まる

つまり主語とつながり、時制で形が変わる動詞が「定形動詞」です。

そのため英語では「tensed verb時制がついた動詞)」と呼ばれることがあります。

見た目でわかりやすいのは be動詞です:

  • I am here.
  • I was here.
  • We are here.
  • We were here.

もちろん一般動詞でも同じです:

  • You know it.
  • You knew it.
  • He knows it.
  • He knew it.

定形動詞の基本はこれぐらいでOKです。

では、英語 Wikipedia「V2 word order」を引用します。

In syntax, verb-second (V2) word order is a sentence structure in which the finite verb of a sentence or a clause is placed in the clause’s second position, so that the verb is preceded by a single word or group of words (a single constituent).

統語論(syntax:単語の連携や語順)においてV2語順とは、文または節の中にある定形動詞が、節の2番目に配置される文構造のことです。そして1個もしくはグループ化された単語(ひとまとまりの構成要素)がその動詞の前に配置されます。』

V2 word order – Wikipedia

これをまとめると――

✅定形動詞は文構造における2番目に位置しますよ!

⚠️単語を数えて2個目という意味ではないですよ!

では実際に例文を見てみましょう:

  • What kind of fish is this?
    ⇒ “what kind of fish” でまとめて1単位!
    定形動詞is” が2番目!

これはドイツ語でも同じルールになります。

私の手元にあるドイツ語の文法書では「V2語順」に、次の3つの和訳があります。

  1. 第2位
  2. 第2位
  3. 動詞第2位

ドイツ語文法では「定形動詞」が絶対的に重要なんです。

これがゲルマン語の仲間で共通の特徴です。


ところで、みなさんは――

🧑‍🏫動詞(V)は述語動詞(predicate verb)です!

――と習っていませんか?

実は、述語動詞ってラテン語文法をベースにした用語なんです。

この問題点としては――

⚠️主語の行動・状態 ⇒ まとめて述語!

――という解釈なので、文構造の分析にはあまり向いていないんです。

それでは困るので、現代言語学では、統語論(syntax)の視点から――

定形動詞(finite verb)を中心に文構造を分析します。

定形動詞(と述語動詞の違い)の解説は、こちらのブログをご覧ください👇

⚠️助動詞の「V2語順」に要注意!

さて英語の場合には、注意すべきポイントがあります:

🚨英語でもドイツ語でも「助動詞」が定形動詞になることがよくあります!

もともと助動詞は「普通の動詞」からうまれたグループです。

言語学では、2つ以上の動詞が連携するときに「助動詞」という言い方が使われます。

そして、助動詞(auxiliary verb)の定義はこうなります:

動詞ける品詞
✅(不定詞や分詞を)ける動詞


では、まず「助動詞 do」からです。

早速、例文を見てみます:

  • 強調:I do know it.
  • 否定:He does not know it.
  • 疑問Did you know it?

見た目ですぐにわかることは――

  • do / does / did
    ⇒ 定形動詞(主語や時制で形が変化する)
  • know
    ⇒ 原形不定詞(形が変化しない)

実は、この助動詞 do は古英語の時代にはなかった用法なんです。

だから、一般動詞にだけ登場するヘンテコな使い方になっているんです。

助動詞 do(do-support)の成り立ちや使い方の解説はこちらをどうぞ👇


次に will や can でおなじみの「法助動詞」です。

例文を見ていきます:

  • She can do it.
    現在形 can
  • She could do it.
    過去形 could

現代英語では「法助動詞動詞の原形」のパターンは固定しています。

法助動詞の形は変りますが、動詞の原形は「形が変化しない」ままです。

つまり――

 ✅現代英語の法助動詞は「定形動詞」として使われる!

法助動詞の詳しい解説はこちらのブログをどうぞ👇

では、いよいよ次章ではV2語順を詳しく見ていきましょう!

現代英語に残るV2語順パターン

古英語には、いろんな語順パターンがありました。

そのなかでも「V2語順はよくあるパターン」だったんです。

英語 Wikipedia の Old English Grammar(古英語の文法)を引用します:

Main clauses in Old English tend to have a verb-second (V2) order, where the finite verb is the second constituent in a sentence, regardless of what comes first. There are vestigial examples of this in modern English: Rarely have I seen … However, V2 order was much more extensive in Old English.

古英語の主節は、V2語順をとる傾向があり、この場合、文のどの部分が先に来るかに関わらず、定形動詞は文の2番目の構成要素となります。現代英語にもこの名残が見られます。例えば 「Rarely have I seen …」などです。ですが、古英語では、V2語順はさらにより広範囲で使われていました。』

Old English Grammar – Wikipedia

これが現代英語にV2語順が残っている理由になります。

現代英語で「V2語順」になると、次のパターンが生まれます:

  • 番目強調部分
  • 番目定形動詞
  • 番目主語名詞

これを Wikipedia の例文に当てはめます:

  • Rarely have I seen
    1. 強調部分(副詞)
    2. 定形動詞
    3. 主語名詞

さらに、さきほどの疑問文もつかってみます:

  • What kind of fish is this?
    • 強調部分(補語 C)
    • 定形動詞
    • 主語名詞

意外とシンプルですよね?

ではここから「現代英語に残るV2語順」を見ていきましょう!

*これ以降のセクションの例文は英語 Wikipediaの「V2 word order」から引用します。

V2 word order - Wikipedia

①wh-疑問文(補足疑問文)

英語には2種類の疑問文があります。

  1. 決定疑問文(yes-no question)
    Yes/No を尋ねるタイプ
  2. 補足疑問文(wh-question)
    疑問詞(wh-)を尋ねるタイプ

この2つのうち、V2語順は、wh-疑問文(疑問詞で尋ねるタイプ)で発動します:

a. Which game is Sam watching?

b. Where does she live?

V2 word order – Wikipedia
  1. 強調部分
    ⇒ Which game / Where
  2. 定形動詞
    is / does
  3. 主語名詞
    ⇒ Sam / she

ここから疑問詞が主語の場合に進みます。

次の例文では「主語名詞強調部分」になります:

  • What happened here?
  • What is happening here?

このケースでは、もともとV2語順なので、なにもしなくていいんです。

😱疑問文をみたら、語順を入れ替えないと!

――なんて、思ってませんでしたか?

それ、もう忘れて「V2語順」に切り替えてOKです!

②否定や限定

このパターンは現代英語でも文章ではよく使います。

c. At no point will he drink Schnapps.

d. No sooner had she arrived than she started to make demands.

V2 word order – Wikipedia
  1. 強調部分
    ⇒ At no point / No sooner
  2. 定形動詞
    will / had
  3. 主語名詞
    ⇒ he / she

ほかにも「否定・限定」にはいろんな表現が使われます:

  • never
  • little
  • only
  • scarcely
  • rarely
  • hardly
  • seldom

・・・などなど、まだまだあります。

③程度や強調

程度 so や such の場合は、少し文が複雑になります。

e. So keenly did the children miss their parents, they cried themselves to sleep.

f. Such was their sadness, they could never enjoy going out.

V2 word order – Wikipedia
  1. 強調部分
    ⇒ So keenly / Such
  2. 定形動詞
    did / was
  3. 主語名詞
    ⇒ the children / their sadness

やはり Wikipedia の例文がわかりにくいです。

その理由は、接続詞 that が省略されているからです。

  • so ~ (that) SV
    ⇒ そんなに~なので、SV
  • such (that) SV
    ⇒ それほどなので、SV

文の切れ目の前に that を入れるとわかりやすいと思います。

④場所や時間の副詞

このパターンは、会話の定形フレーズでいまでもよく使います。

存在の there もこの用法から固定化されました。

g. Here comes the bus.

h. Now is the hour when we must say goodbye.

V2 word order – Wikipedia
  1. 強調部分
    ⇒ Here / Now
  2. 定形動詞
    comes / is
  3. 主語名詞
    ⇒ the bus / the hour

移動系の自動詞 comego だと、このパターンが多く残ります。

もともと助動詞 do が使われ始める前は、この語順は普通でした。

ただ代名詞の時は「S ⇒ V」に固定されがちです。

  • Here I come!
  • There you go!

このように代名詞だけ「S ⇒ V」の語順になるのも、古英語から残る傾向のようです。

⑤前置詞句

前置詞句は「副詞扱い」になるので、このパターンも多いです。

i. Behind the goal sat many photographers.

j. Down the road came the person we were waiting for.

V2 word order – Wikipedia
  1. 強調部分
    ⇒ Behind the goal / Down the road
  2. 定形動詞
    sat / came
  3. 主語名詞
    ⇒ many photographers / the person

場所や時間の副詞と同じように使ってください。

⑥直接の引用

小説などではよく見ますが、書き手の選択による部分が多いです。

k. “Wolf! Wolf!” cried the boy.

l. “The unrest is spreading throughout the country,” writes our Jakarta correspondent.

V2 word order – Wikipedia
  1. 強調部分
    ⇒ どちらも “” の会話
  2. 定形動詞
    cried/ writes
  3. 主語名詞
    ⇒ the boy / our Jakarta correspondent

発言を意味する “” が置かれるので、英語を読むのには困らないとおもいます。


ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございました!

英語の見方がすこし変わったのではないでしょうか?

🧑‍🏫英語は主語が大事です!まず主語を見つけましょう!

――だと思って、がんばった方もいらっしゃるでしょう。

でも実は、動詞のほうがよっぽど “主役” だったんです!

😆英語の倒置って「変な例文」やなくて「古英語の記憶」なんや!

そうと知ったとき――

英文が語りかけてくる声が、なんだかちょっと違って聞こえてきませんか?

きっと、これから皆さんは「V2語順」を探す英語の旅に出かけることでしょう。

そのときは、どうか「定形動詞」を旅の仲間に選んであげてください。

きっと彼(または彼女?)は、こう言ってくれるはずです――

🫡Heartily seconded.(心より支持します)

ではまた、次の記事でお会いしましょう!

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