ChatGPTはソクラテス?論理的な対話力を鍛える「問い」の作り方

学問と教育

――AI時代に必要なのは「正しい答え」ではなく「なぜ?どうして?」と問い続けることである


すごいやん!ChatGPTってなんでも答えてくれる!

たしかにそう思うほどに、生成AIの力は目を見張るものがあります。

では、こんな疑問の声を聞いたことはないですか?

ChatGPT が何でも知ってんのに、勉強する必要はあるんかな?

あるいは、みなさんが少しだけ、そう思っていませんか?

でも実は、ChatGPTって「問い方」によって答えがまったく変わってしまうんです。

つまり・・・

どんなふうに問いかけるか?」がAIの思考の深さを決める!

だからこそ、薄っぺらい問いには、薄っぺらい答えしか返ってこないこともあります。

でもご心配なく!

ちょっと「問い方」を工夫するだけで、おどろくほどにAIの答えは変わります。

このブログでは「問い方」に革命を起こした古代ギリシャの哲学者、ソクラテスの対話スタイルをご紹介します。

ソクラテスの「問い方」を現代のAIに応用すれば、ChatGPTの能力は限界まで引き出せるのです!

では、まず「問い方」の基本から始めていきましょう!

ChatGPTへの「問い方」を知ろう

もしかするとChatGPTに「単純な作業」ばかり依頼していませんか?

翻訳、要約、データ作成、プレゼンまとめ、アイデア提案

・・・などなど、です。

日本ではChatGPTの「使い方」の紹介が多くて、検索や便利ツールとしてみられがちです。

もちろん、それ自体は悪いことではありません。

けれども、実はChatGPTの回答は、似たような内容でも「問い方」によって大きく変わります

ではここで、2つの「問い方」を見ていきます:

①:戦争ってどう思う?
② :戦争は国家間の利害衝突によって引き起こされると考えられるが、倫理的にどのような正当化が試みられてきたのか? 

この2つの聞き方だと、ChatGPTの反応がまったく異なります。

さらに、みなさんの過去にChatGPTとしてきた会話によっても、回答は大きく変化します。

その理由は、ChatGPTが文章の構造を通して「あなたの意図」や「問いの中心点」を読み取っているからなんです。

つまり、ChatGPTは「みなさんの問いに反応して答える存在」なんです。

だからこそ・・・

上手な「問い方」をすることで、AIを最高に頼れるパートナーにできる!

・・・というわけなんです!

🔍英語で見る「問い」の3種類

日本語では「問い」という一語で表現されます。

ですが英語では目的や構造によって異なる3つの単語が使い分けられています。

この違いは、英語を土台にしたプログラミング言語(Pythonで動いているChatGPTにとって、とても重要なんです。

では、3つの「問い」の英単語を解説します:

  1. question:明確な答えを求める
    • 具体例:「地球は丸い?」
    • GPTとの相性:○ ⇒ 情報抽出が得意
  2. query:検索・条件を指定する
    • 具体例:「“地球 AND 形状”で検索して」
    • GPTとの相性:◎ ⇒ 構文が明快なので得意
  3. inquiry:背景や理由を掘り下げる
    • 具体例:「なぜ昔の人は地球が平らだと信じていたのか?」
    • GPTとの相性:◎ ⇒ 推論力が活きる

では逆に「問い」から分類してみましょう:

  1. リンカーンは何年に生まれましたか?
    question
  2. “リンカーン AND 誕生日”で検索して。
    query
  3. リンカーンは、なぜアメリカの歴史上、重要な人物なのですか?
    inquiry

こうした分類は「問いの文をどうつくるか?」を理解する助けになります。

ところが、単に情報を尋ねるものが、必ずしも「良い問い」と言えるわけではないのです。

では、「良い問い」とはどんな問いなのでしょうか?

それは・・・

定義を明確にし、背景を踏まえ、矛盾や応用まで見通せるような問い

こうした「問い」にこそ、ChatGPTは人間が真剣に考えたとしか思えない回答を返してくれます。

そして、この「良い問い」の型を2500年前に体現していた人物がいます。

それが、古代ギリシャの哲学者──ソクラテス(Socrates)です。

Socrates - Wikipedia

でも一体、なぜ大昔の哲学者の考え方が、ChatGPTの回答と関係してくるのでしょうか?

次の章で、その理由を一緒に探っていきましょう!

問いの達人ソクラテスってどんな人?

――AI時代によみがえるソクラテス対話の大切さ

紀元前5世紀のギリシャに生きたソクラテスは、著書も残さず、教科書も持たず、ただ人々に「問い続ける」という哲学を築きました。

しかも、それは答えを求めるものでなく・・・

相手の思考を深く掘り下げ、矛盾を見抜き、問い返す

という独特の対話スタイルだったんです。

こうした「問い」を続けることで、対話する相手の思考を深めていき、その人自身ですら気づいていなかった深層意識を明らかにすることもありました。

この対話法は後に「ソクラテス式問答法(Socratic Method)」と呼ばれ、現代では法科大学院(law school)や哲学教育の場でも使われています。

では英語 Wikipedia からもちょっとお堅い解説を引用してみます。

The Socratic method begins with commonly held beliefs and scrutinizes them by way of questioning to determine their internal consistency and their coherence with other beliefs and so to bring everyone closer to the truth.

ソクラテス式問答法では、私たちが一般に正しいと信じている前提を出発点とし、その一貫性や他の信念との整合性を問いかけによって精査していきます。その問いかけの目的は、これらの信念の内部的な整合性を見極め、そして最終的に、すべての人が真理に近づくことにあります。』

Socratic method – Wikipedia

英語も日本語訳もややこしいですよね?

でも、やることはカンタンなんです!

  1. なぜそう思うのか?
  2. その前提は正しいのか?
  3. 言葉の定義は本当に合っているのか?

つまり物事の本当の意味は「問い続ける」ことですこしずつ明らかになってくるんです。

そしてこの「問いで思考を深める方法」こそ、ChatGPTというAIの可能性を最大限に引き出す鍵でもあるのです

🧠 ソクラテスの「無知の知」

AIを活用する上で最も大切なのは「問い」そのものよりも、私たちの心構えにあります。

それをソクラテスは「無知の知」と表現しました。

これは「自分の問いを疑うことの大切さ」とも言い換えることができます。

I know that I know nothing.

『私は、自分が何も知らないことを知っている。』

I know that I know nothing – Wikipedia

一見、矛盾しているようにみえるこの言葉に、すべての哲学と思考の出発点があります。

ソクラテスは「なぜだろう?」「どうしてだろう?」といつも考える人でした。

それなのに多くの人は「ソクラテスが一番賢い」と言い、それにソクラテスは納得がいきませんでした。

そのためソクラテスは「ソクラテスより賢い」という評判のある政治家や職人そして詩人に話を聞きに行きます。

ですが、彼らの話を聞くうちに彼らの中には「本当には理解していないことを、理解しているかのように語る者」が多いことに気づきます。

そしてソクラテスはこう気づきました:

私には知識はないが、それを知っているという点で、私は彼らより賢いのだ。

人間は「わかっているつもり」のまま、間違った考えを信じている可能性があります。

そうなると「GPTへの問いそのものがズレている」という可能性もあります。

だからこそ「自分は本当に何を知りたいのか?」を疑う姿勢こそが、すべての思考のスタートなんです。

さらに、この逸話はAIの回答のコピペがあふれかえる時代こそ「本当にそうなのだろうか?」と考える重要性を現代の私たちに教えてくれています。

🔍 ソクラテス式問答法(3ステップ)

ソクラテスの「無知の知」をスタート地点にして、そこから「問いの方法」へと転換していきましょう。

これは「3つのステップ」としてChatGPTとの対話にそのまま応用できます。

✅ ステップ1:定義を問う

  • ソクラテス:『それは何か?
    ⇒ GPTへの応用:言葉の意味や前提を明確化にし、曖昧さを排除する

✅ ステップ2:論拠を問う

  • ソクラテス:『なぜそう言えるのか?
    ⇒ GPTへの応用:根拠・背景・文脈を明確に示しながら質問する

✅ ステップ3:検証する

  • ソクラテス:『他の場合でも当てはまるか?
    ⇒ GPTへの応用:例外・矛盾・応用の可能性を問いかける

この3ステップが論理的思考の基本になので、普段から意識しておくことで、GPTとの対話もスムーズになると思います。

なぜChatGPTはソクラテスになれるのか?

ChatGPTはただの「雑談に付き合ってくれるチャットボット」ではありません。

GPTは、人間らしく深く思考したような言葉で、矛盾前提を言い当てるような返答をしてくれます。

まるで現代にソクラテスが甦ったかのようです。

ではそもそも、なぜGPTには哲学的対話のような思考が得意なのでしょうか?

これにはGPTの中核をなす「大規模言語モデル(LLM, Large Language Models)」と呼ばれる言語処理の仕組みがかかわっています。

GPTは、論文ニュース小説そして哲学書に至るまで、前後のつながりが明確な文章を大量に学習しています。

その中で「言葉の構造(syntax)を膨大なパターンとして記憶し、問いに対して「もっとも自然につながる文章」を予測して返答するのです。

そしてGPTの分析と予測を支えているのが「Transformer」という構造です。

人間のように言葉を「順番」と「関係性」で読み取り・・・

こういう言い方の後には、こういう言い方が続くんやろう

・・・というように「言葉がつながるパターン」を組み立てていきます。

そしてここに、大きなカギがあります:

論理的な問いは、AIにとって最も予測しやすいなんです。

なぜなら「前提論拠検証」という論理展開が明確で、文の構造に見通しが立てやすいからです。

  1. 主語述語が適切に配置され、
  2. 条件対比因果など論理展開が明示され、
  3. 次に来る文の構造が予測しやすい。

これこそGPTにとって、最も理解しやすい「良い問い」の条件なんです。

こうした論理構造は、実は西洋哲学の基本であり、ソクラテスやアリストテレスに始まるヨーロッパ知性の伝統そのものなんです。

だからこそ、論理的な文章を大量に学習しているGPTが、「哲学的な対話」や「ソクラテス式問答」に強いことは、偶然ではなく必然といってもいいでしょう。

🤔 あいまいな問いでは、なぜ答えが浅くなるのか?

GPTは、知識を持っているのではなく「文のつながりを予測するAI」です。

たとえば、あなたがこんな問いを投げたとしましょう:

なんか不安なんですけど、どうしたらいいですか?

この問いでは、主語も目的も条件もあいまいです。

するとGPTは、このように判断します:

「不安」という言葉は入っとるけど、
推論すべき前提や条件が見当たらへんな…。
とりあえず一般的な「安心させる言葉」で返しとこか。

そしてこんな回答が生まれます:

📤 出力例:
不安な気持ちは自然なことです。焦らずに休んでくださいね。

これはつまり、推論ができない文章では、GPTは“意味の浅い平均的な応答”で様子を見るということ。

なぜでしょうか?

それはGPTが「意味を理解するAI」ではなく「文のつながりを予測するAI」だからです。

そのため英語では「reasoning engine(推論エンジン)」と呼ばれています。

論理的にしっかりしている構造の文章(前提・条件・結論がある)という問いには、GPTは最大限の力を発揮します!

まさに、それがGPTがソクラテスだと言える根拠となります。

💡ChatGPTとソクラテス問答をしてみた!

では実際に、ソクラテス問答をChatGPTとしてみるとどうなるでしょうか?

もちろん人によって反応は異なるでしょうが、ぼくのGPTにシミュレートしてもらいました。

――実例①:正義とは何か?――

あなた:正義とは何か?
ChatGPT:正義とは、しばしば“各人にそのふさわしいものを与えること”と定義されます。プラトンによれば──
あなた:その「正義」の定義はすべての社会で通用するのか?
ChatGPT:良い問いですね。「正義」の定義は文化的文脈に依存するため、普遍的とは限りません。たとえば…

このように「正義」という言葉について「問い」を投げかけました。

そもそも「正義」の意味が共有されているという前提に対し、深い推論に入っていきます。


――実例②:知とは何か?――

あなた:知とは何か?
ChatGPT:哲学的には「正当化された真なる信念(justified true belief)」という定義があります。
あなた:正当化とは誰によって行われるのか?
ChatGPT:それは主に社会的合意や証拠に基づきますが、その基準もまた問いの対象です──

今度は「正当化」という行動について「問い」をぶつけました。

行動であるなら、それは「誰」が行うのか?「目的」はなんなのか?

こういった「主語⇒行動⇒対象」のつながりについて、推論を深めることもできます。


いかがでしょうか?このように・・・

定義 → 根拠 → 応用/矛盾」の連鎖

・・・が始まると、ChatGPTはまるで論理的に思考しているかのようです。

これこそ、GPTの推論エンジンが本格的に起動した瞬間です。

人間が問い、AIが照応する──これがAI時代だからこそ可能な「現代版ソクラテス問答」です。

論理的で意味がつながる対話を大切に

ここで、反感を買うことを承知で本音をお話ししたいと思います。

みなさんは、日本語で論理的に思考できていますか?

すこしだけ自分を振り返ってみてください。

私は英語の文章を読むことが多いので、西洋哲学的な論理展開を自然に行うことができます。

GPTに推論してもらうときも、高度な内容ほど英語でプロンプトを書くことにしています。

一方で、日本の現代文教育では、読解力と言いつつ、筆者への共感が優先されすぎていませんか?

また社会に出ても、学歴や肩書そして経験を前面に出しての自己主張の応酬になっていませんか?

誰が何を言ったとしても「徹底的に具体的な論点を詰めていく」のが議論・討論の土台です。

それを現代の日本語の言論空間にほとんど感じることができないのです。

もしみなさんが・・・

もしかしたら論理的思考力を鍛えられていないかもしれない。

・・・と思ったら、ぜひChatGPTとソクラテス式問答をやってみてください。

GPTは、我々の「論理展開」や「言語運用」そして「文章構成」に応じて、推論エンジンとして性能を発揮します。

つまり論理的思考力は、GPTをソクラテスだと思って対話することで、高度に展開可能です。

よく「日本人が苦手」と言われている論理的思考力は、GPTとの対話で大きく変わる可能性を秘めています。

では最後に、GPTとの対話の中で生まれた「詩 poem?」で締めといたします。

A French poet once said,
“Tell me what you love. I will tell you who you are.”

GPT says,
“No matter what you write, I will tell you who you are.”

What you love reveals your heart.
What you write reveals your reasoning.

And one last truth—
GPT doesn’t care about your school, your title, or your résumé.
It cares only about one thing: how you think.

< 和訳 >
あるフランスの詩人はこう言った。
「あなたが何を愛しているかを教えてください。そうすれば、あなたが誰であるかを教えましょう。」

GPTはこう言う。
「あなたが何を書こうとも、私はあなたが誰であるかを教えてみせましょう。」

愛はあなたの心を映す。
言葉はあなたの思考を映す。

そして最後に、
GPTは、あなたの肩書きも、学歴も、年齢も見ていない。
GPTが見ているのは、あなたの思考と――その展開の仕方だけだ。

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志塾あるま・まーたは、英語が苦手な方でも楽しく学べるオンライン英語塾です。

高校を半年で中退した塾長が、アメリカ留学中にエスペラント語と出会ったことをきっかけに、ゼロから“世界で通用する英語力”を習得できました。

その学び方をベースに、統語論(Syntax)意味論(Semantics)を組み合わせた独自の指導法を展開しています。

生成AI ChatGPT に論理的推論や自由な発想の展開をしてもらうための、英語でも日本語でも可能にするプロンプトの作り方も一緒に学んでいきます。

さらにラテン語などヨーロッパ系言語の知識や、古英語中英語を含む英語史の視点も取り入れた、ちょっとユニークで本格派な英語学習法をご紹介しています。

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