海外ドラマで Alfa, Bravo, Charlie などの英単語を見たことはありませんか?
私がこれらの英単語に初めて出会ったのはアメリカのゲーム(Halo 3)をやっていたときです。
降下艇(drop ship)の識別番号で「Echo 419」や部隊長の呼び方で「Bravo Chief」となどが使われていました。
なにか軍隊には似つかわしくない響きの英語だったので、ずっと気になっていました。
ところが、これらの英単語にはむしろ軍隊と密接に関係する意味がありました。
- 軍隊の通信につかわれる音声コード
- Nato Phonetic Alphabet の一覧
- A: Alfa(アルファ AL FAH)
- B: Bravo(ブラボー BRAH VOH)
- C: Charlie(チャーリー CHAR LEE)
- D: Delta(デルタ DELL TAH)
- E: Echo(エコー ECK OH)
- F: Foxtrot(フォックストロット FOKS TROT)
- G: Golf(ゴルフ GOLF)
- H: Hotel(ホテル HO TELL)
- I: India(インディア IN DEE AH)
- J: Juliett(ジュリエット JEW LEE ETT)
- K: Kilo(キロ KEY LOH)
- L: Lima(リマ LEE MAH)
- M: Mike(マイク MIKE)
- N: November(ノベンバー NO VEM BER)
- O: Oscar(オスカー OSS CAH)
- P: Papa(パパ PAH PAH)
- Q: Quebec(ケベック KEH BECK)
- R: Romeo(ロミオ ROW ME OH)
- S: Sierra(シエラ SEE AIR RAH)
- T: Tango(タンゴ TANG GO)
- U: Uniform(ユニフォーム / YOU NEE FORM)
- V: Victor(ビクター VIK TAH)
- W: Whiskey(ウィスキー WISS KEY)
- X: X-ray(エックスレイ ECKS RAY)
- Y: Yankee(ヤンキー YANG KEY)
- Z: Zulu(ズールー ZOO LOO)
- International Code of Signals
- 軍事用語が日常的な表現にもひろがる
軍隊の通信につかわれる音声コード
スマホの登場で、世界のどこでもインターネットがつながれば画像通信ができる時代になりました。
しかし、昔はそうではありませんでした。特に戦場ではなおさら通信状況は劣悪だったことも多々あったでしょう。
そこで通信状況が良くない場合でも A B C などをしっかりと聞き分けられるように、あえて Alfa Bravo Charlie などの特定の英単語をあてる通信コードが作られました。
この「A~Z」に対応させた英単語の一覧のことを「NATO Phonetic Alphabet」といいます。
phonetic は「音声や発音に関する」という形容詞です。
ここでは「スペルではなく発音を示すアルファベット」という意味で使われています。
NATOは「North Atlantic Treaty Organization 北大西洋条約機構」を意味しています。
では実際に見ていきましょう。
A から Z まで一気にならべるとこうなります。
- Alfa
- Bravo
- Charlie
- Delta
- Echo
- Foxtrot
- Golf
- Hotel
- India
- Juliett
- Kilo
- Lima
- Mike
- November
- Oscar
- Papa
- Quebec
- Romeo
- Sierra
- Tango
- Uniform
- Victor
- Whiskey
- X-ray
- Yankee
- Zulu
これらの「音声アルファベット」が使われる場合は大きく分けて2パターンあります。
① スペルを正確に伝えたい場合
いまほど通信技術が発達していないころは、重要な内容を可能な限り短い言葉で伝える必要がありました。
そして、音声通信ができるようになった時代でさえも、言語の違う国家間で通信を行う必要があります。
そこで聞き間違いをさけるために、あえて発音が似ていない単語があてられています。
たとえば omega という場合は「Oscar, Mike, Echo, Golf, Alfa」といった具合です。
また japan であれば「Juliett, Alfa, Papa, Alfa, November」です。
② ナンバリングに使う場合
日本語だと番号は数字で割り当てるのが一般的です。
学校でも「一組、二組」となり、新選組では「一番隊、二番隊」という具合です。
しかし、これは明治以降のことで江戸時代までは違いました。
江戸の町火消はひらがなの「い、ろ、は」の順に「い組、ろ組、は組」という名前になっていました。
世界遺産の姫路城の城門にも「いの門」や「ろの門」というように名称があてられています。
これらと同じように、英語のアルファベット「A B C」は順番を表すために使われる場合があります。
一番、よく知られているのがハリケーンの名前です。
「男性名」と「女性名」を交互につかいながら、順番を A B C D… にあわせて使います。
また年度ごとに男性名(A-)からスタートする場合と、女性名(A-)からスタートの場合と交互に切り替わります。
2019年であれば Andrea, Barry, Chantal, Dorian, Erin… と並んでいます。(日本だと、台風1号、2号・・・に相当します)
これと同様に Alfa Bravo Charlie も 1、2、3として使います。
- Afla Team / Alfa Leader (1番隊 / 隊長)
- Bravo Team / Bravo Leader(2番隊 / 隊長)
- Charlie Team / Charlie Leader(3番隊 / 隊長)
こういう英単語は日本の英語教育で目にする範囲ではあまりなじみがありません。
とはいえイギリスやアメリカのドラマなどには非常に頻繁に登場しています。
ですので英語圏の海外ドラマをみているときは A ~ Z まで知っておくと便利です。
Nato Phonetic Alphabet の一覧
それでは、このリストを一つひとつ詳しく見ていきます。
A: Alfa(アルファ AL FAH)
本来のスペルは alpha です。
英語を母語とする人たち以外でも正確に発音できるように「ph」の音をわざと「f」に変えてあります。
ギリシャ文字の先頭の文字なので「一番、ボス」を意味する用語で使います。
オオカミやチンパンジーなどの群れで1位の雄を「alpha male」といいます。人間でも権力志向が強い男性にも使います。
一方、「2位じゃダメなんですか?」という発想で、日本語だと「草食系(?)」にあたる男性を「beta male」と呼ぶ言い方もあります。
B: Bravo(ブラボー BRAH VOH)
スペイン語の bravo に由来します。
C: Charlie(チャーリー CHAR LEE)
男性の名前 Charles、もしくは女性の名前 Charlotte、Charlene の愛称などで使われます。
あとは Alex や Chris なども男性でも女性でも使います。
発音は「シャーリー / SHAR LEE」もあります。
D: Delta(デルタ DELL TAH)
ギリシャ文字で4番目の「Δ」に由来します。
またギリシャ文字の形状から、河口部の三角州のことを delta と呼びます。
E: Echo(エコー ECK OH)
音の反射である「反響」や「山彦」のことです。
コウモリやクジラやイルカが音波を使って、周囲の地形を知ることを echolocation といいます。
人間でも鍛えるとこれができるようで、視覚に障がいのある方が舌を強くはじくような音をだして、構造物の形状を把握するのを BBC か Discovery の動画でみたことがあります。
F: Foxtrot(フォックストロット FOKS TROT)
社交ダンス(ballroom dance)のひとつです。
なぜ「fox + trot」がダンスの名前になったのか由来は不明のようです。
G: Golf(ゴルフ GOLF)
スポーツのゴルフのことです。
H: Hotel(ホテル HO TELL)
当然ながら宿泊施設のことです。
と、思いきやインドでは hotel がレストランを意味することもあるようです。
台湾では「飯店」がホテルを表す場合も多いようですし、旅行する際は注意がいりそうです。
ちなみにフランス語でも hotel は宿泊施設のホテルを意味します(フランス語は「h アッシュ」を発音しないので日本語だと「オテル」に近くなります。)
ところが hotel de ville(ville は都市) といった場合は「市役所 city hall」を意味するので注意です。
I: India(インディア IN DEE AH)
国名のインドのことで、「インダス川 Indus」から派生する由来をもつラテン語の India が語源です。
ちなみに国名の別名として Hindustan(ヒンドゥー教徒の国)という言い方もあります。
といってもインド人全員がヒンドゥー教徒ではありません。
J: Juliett(ジュリエット JEW LEE ETT)
シェイクスピアの作品の「ロミオとジュリエット」で有名な「女性の名前」を意味する言葉です。
語源はラテン語に由来する女性名で、本来であればスペルは Juliet です。
しかし alfa と同じく、英語を母語とする人たち以外でも正確に発音できるようにわざと変えてあります。
ちなみにフランス語の7月(July)は juillet です。
K: Kilo(キロ KEY LOH)
1 kg や 10 km のキロです。
ギリシャ語で 1000 を意味する言葉からフランス語になりました。
フランス人に聞いたのですが、フランス語の単語の多くはギリシャ語由来だそうです(正確な割合は未確認)。
L: Lima(リマ LEE MAH)
ペルーの首都リマです。
ちなみにペルーの国名は Peru ですが「ペルーの、ペルー人の」を意味する言葉は「Peruvian」になります。
M: Mike(マイク MIKE)
人名の Mike です。後述しますが会話文でよく見ます。
N: November(ノベンバー NO VEM BER)
11月が由来です。
もともと暦(カレンダー)は農耕の時期を知るために作られたので、ローマでは March がスタートになっていました。
そのためラテン語の「9」にあたる「9番目の月 November」が語源です。
フランス語でも「9番目 ninth」は「neuvième(カタカナだと “ヌヴィエム” に近い音)」といいます。
英語の月の由来についてはこちらをどうぞ。
O: Oscar(オスカー OSS CAH)
人名の Oscar が由来です。
P: Papa(パパ PAH PAH)
父親の「パパ」に由来し、語源はラテン語になります。
フランス語では「père 父」も使いますが、軽い言い方で「papa」も使います。
ちなみにローマ教皇を意味する Pope も Papa(父) が由来です。
ながらくローマ・カトリックの聖書はラテン語のものが正統とされてきたるので、いまでもラテン語の表現はたくさん使われています。
教皇ヘの呼びかけも「Holy Father」ということもあります。
英語の father はゲルマン語由来なので、お仲間のドイツ語では vater でオランダ語は vader となります。
英単語には大きく分けてゲルマン語(昔の英語と近い仲間)とロマンス語(ラテン語の子孫)の2つの系統が混ざっているので、似ている発音も意味も全然違うものが多くあります。
Q: Quebec(ケベック KEH BECK)
カナダのケベック州です。
もともとはカナダ原住民の言葉のひとつであるアルゴンキン語(Algonquin)で「川の狭まるところ」という意味だったようです。
正式には Quebec には「州 Province」と「市 City」の2つの表記があり「市」のほうに Québec といって「é」を使います。
フランス語では「é」のようにいくつかアクセント記号が単語につく場合があります。
カナダ人の友人に聞くと実際のところ「Quebec(州)」と「Quebec City(市)」で区別しているとのこと。
ちなみに北アメリカの原住民(indigenous people)を表す用語はアメリカでは「Native Americans」が好まれるようですが、カナダでは「First Nations people」を使うようです。
R: Romeo(ロミオ ROW ME OH)
男性の名前 Romeo が由来です。
Romeo と Juliett がペアで入っているのがいいですね。
なにをするにも先人たちの残した文化的要素を活かすセンスは大切かもしれません。
S: Sierra(シエラ SEE AIR RAH)
スペイン語で「のこぎり」や「山脈」を表す言葉です。
英語でもアメリカ西部はスペイン語の影響があるところの「山脈」を意味します。
英語で serrated blade で「ギザギザの刃」と言ったりしますが、語源は同じで saw(のこぎり)を意味するラテン語 serra です。
T: Tango(タンゴ TANG GO)
ラテンダンスの一種であるタンゴが由来です。
U: Uniform(ユニフォーム / YOU NEE FORM)
日本語の「制服」という意味のユニフォームが由来です。
別の発音で「ウニフォーム / OO NEE FORM」もあります。
「uni ひとつ」+「form 形」の合成なので「みんな同じ1つの姿」という意味です。
「制度で決まった服」ではなく「統一 uniformity」の意味が大切です。
V: Victor(ビクター VIK TAH)
「勝利者」という意味でも、男性名 Victor でも使います。
W: Whiskey(ウィスキー WISS KEY)
お酒のウィスキーです。
スペルは whisky の場合もあり、アメリカとアイルランド以外は whisky のスペリングがよく使われるようです。
X: X-ray(エックスレイ ECKS RAY)
X線のことです。
また ray は「光線」のほかにも stingray などのように魚のエイのことを意味します。
Y: Yankee(ヤンキー YANG KEY)
もともとイギリスによるアメリカ北東部の入植地であった New England の人々をさす言葉だったようです。
アメリカ国外ではアメリカ人全般につかわれたりいろんな使われ方をするようです。
ちなみにカナダの国土になりますが、New England のすぐ北に Nova Scotia 州があります。
これはラテン語で New Scotland という意味です。
イギリスだけでなく北アメリカでも England のすぐ北に Scotland が位置する構図です。
Z: Zulu(ズールー ZOO LOO)
アフリカ南部の民族であるズールー人に由来します。
International Code of Signals
もともと NATO PHONETIC ALPHABET は海軍で使われていた手旗による通信信号から発展しました。
レーダーや通信技術がなかった時代は、手旗信号でほかの船舶との通信を取っていました。
敵国の船だった場合、いきなり攻撃というわけにはいきません。
味方の船だった場合、こちらの状況次第で、救助要請や作戦行動を継続するのかを伝えないとダメです。
NATO(North Atlantic Treaty Organization 北大西洋条約機構)のHPには、手旗信号やA~Z旗までの図解も載っています。
またこちらは通信信号に関する Wikipedia の記事です。
日本でなじみのあるのは、東郷平八郎率いる大日本帝国海軍がロシア帝国のバルチック艦隊との日本海海戦時における「Z旗(ゼットき)の掲揚」でしょうか。
このZ旗の掲揚の意味はこうなります。
「皇国ノ興廃、コノ一戦ニ在リ。各員一層奮励努力セヨ」
東京の原宿周辺にある東郷神社に行けば、境内のいたるところにZ旗が立っています。
私も実際に行きましたが、原宿の空気感とのギャップがすごかったのを覚えています。
軍事用語が日常的な表現にもひろがる
ここまで軍事・通信用語として NATO Phonetic Alphabet を見てきましたが、日常的にも使われているようです。
だからこそ海外のドラマやゲームでもよく目にするのだと思います。
カナダ人の友達のお父さんが海軍の軍人なのですが、こんな言い方をするときもあるそうです。
- I will be there in 20 mikes.
- 20分後にそこに着く
20 minutes をわざと m の音にあわせて mikes と言い換えています。
ちなみに「了解(Message received)」という意味の「ラジャー roger」は romeo に改訂される前に使われていたものです。
まさか Romeo と同じく「Roger ロジャー」という人名が由来だったとは驚きです。
こうやって言葉遊びをしたりすることがあるので、ドラマなどで見たことがあるものなどを少し紹介します。
Bravo Zulu
通信コード「BZ」の意味から来ているようで、「good job / well done(よくやった)」を意味します。
40 Mike Mike
40 mm 口径のグレネード弾のことです。
Lima Charlie
「Loud and clear(ちゃんとよく聞こえる)」
The whiskey is safe.
「The whereabouts is safe(この地点は安全)」*whereabouts で「場所のこと」
Tango Down
「Target down(目標撃破)」
Tango Mike
「Thanks much(感謝する)」
Tango Yankee
「Thank you(感謝する)」
Oscar Mike
「On the Move(移動中)」
Charlie Mike
「Continue Mission(任務継続)」
いかがでしたでしょうか?
このほかにも調べればたくさん出てきます。
しかし軍隊内の用語から来ているせいか、品が良いとはお世辞にも言えないものが多いので省くことにいたします。
もし海外ドラマやゲームなどで NATO Phonetic Alphabet がスペルを表記する意味以外で使われていたら、軍隊用語かスラングで検索をしてみるとわかるかもしれません。
ちょっとユニークな英語塾
志塾あるま・まーたは英語が苦手が困っている人が、英語を明るく楽しく学べるオンライン英語塾です。
塾長が高校を半年で中退後に、アメリカの大学に4年間留学して習得したゼロから始めて世界で通用する英語力の習得法をみなさまにお伝えしています。
英語の仕組みを正しく見切る「統語論文法 Syntax」を使うので、シンプルなのに素早く、正確に英語が理解できます。
また現代文・小論文の対策なども、アメリカの大学で採用されている論理的思考力や批判的思考力(logical and critical thinking)のトレーニングを基準にして行っています。
あるま・まーたのちょっとユニークな英語の学び方はこちらをご覧ください。
あるま・まーたの英語の学び方に興味を持っていただけたなら、ぜひお問い合わせください!
ブログの感想や英語の疑問・質問などでもお気軽にどうぞ!