英語を勉強するとまず習うのが、いろんな名詞を簡単な形に置き換えてつかう「代名詞」です。
日本語はその場のノリで、代名詞をあまり使わないで会話できます。
しかし英語はきっちりと5文型(SVOC)に代名詞を当てはめて話をします。
そういうわけで日本語では単純な表現ですむことでも、日本語をそのまま英語にするとヘンになってしまうことがあります。
英語の会話は代名詞を使う
それでは、日本語と英語の会話を見ていきましょう。
A「それ誰がやったん?」
B「オレ」
A「ほんまか?ほんならオレもやろ」
A “Who did it?”
B “I did.”
A “Really? Okay, I will do it, too.”
内容はどちらも同じです。
ですが、英語の場合は代名詞を使うことが基本になります。
じっさいに英語に忠実に日本語をつくってみます。
A「それ誰がやったん?」
B「オレがやってん」
A「ほんまか?ほんならオレもそれやろ」
英語をしっかりと理解するにはどんな「名詞」をどの「代名詞」に置き換えればよいか?を知ることがとても重要になってきます。
基本的な代名詞
それでは、中学校でならう代名詞 pronoun の一覧を見ていきましょう。
これらは特に人物の代名詞で使うことが多いので「人称代名詞 personal pronoun」と呼びます。

一年生で頑張って覚えるおなじみの一覧表です。
さて、この表をみているだけで分かってくる日本語と英語の大きな違いはわかりますでしょうか?
そこが「英語と日本語との相性の悪い」ところです。
もちろん英語ネイティブは(さほど)困らないんですけど、日本語ネイティブは困ります。
つまり、代名詞の一覧を何も考えずに丸暗記してしまうと、とても困ることになります。
代名詞を丸暗記するとなぜ困る?
代名詞を丸暗記すると困るポイントは以下の2つです。
お困りポイントその1
お困りポイントその2
この2つのお困りポイントに共通するものはこうなります。
日本語では分かれているのに、英語ではひとつの言葉で表現している。
これでは丸暗記がうまくいかないわけです。困りましたね・・・。
会話感覚がわかれば代名詞マスター
ではここから英語の代名詞の使い方の感覚について説明します。
この「感覚」がわかってしまうと、さきほどの「you」と「they」の使い方も理解できてしまうからです。
英語の代名詞を選ぶうえで重要な感覚とは・・・
それではこの「会話感覚」で代名詞のイメージをみてみましょう。

英語の「I」とは「会話の中心視点」であることが基本です。
そして、「I」の会話相手が「you」になります。
代名詞は「私は~」や「あなたは~」といった単純な和訳よりも「会話の中での位置づけ」が大切です。
日本語の「彼 / 彼女」には「付き合っている男性/女性」という意味もあります。
しかし英語の「he / she」はそんな感覚はありません。
大切なのは「I ⇔ you」との会話の外にいる人という感覚です。
それではこの「会話感覚」を踏まえて、さきほどの ① youと② they のお困りポイントの解説をしてみます。
代名詞 you の本当の意味
お困りポイントその1
「you」が「あなた」と「あなたたち」という単数と複数をまとめて表している。
お困り解決!
「you」は目の前で話をしている相手です。
なので1人か2人以上かどうかすぐにわかります。
正直、私も日本人なので困ることもあります。
ですが、英語が「私視点の会話が基準になっている言葉」なので、仕方がありませんね。
もちろん複数形の you をわかりやすくする表現もあります。
- you all (あなたちみんな)
- you two (君たちふたり)
こうなっていれば、すぐに複数形だとわかりますね。
代名詞 they の本当の意味
お困りポイントその2
「they」が「彼ら(男性)」「彼女ら(女性)」「それら(もの)」の3種類をあらわしている。
お困り解決!
「they」には「男、女、もの」の区別がもともとありません。
目の前で会話しているわけではない人 / ものが「2つ以上」ある。
つまり「会話に入っていない人 / もの」のグループというだけです
3人称はだれとだれの会話?
英語の会話文は「私とあなた」が基本でした。
それでは、次の文をみてください。
” Is he a teacher? “
この疑問文が使われるときは、登場人物は何人でしょうか?
一見、この文には「he(彼は)」の1人だけ登場するようにみえます。
ですが、3人称である「he 彼は」が登場するのは「私とあなた」の会話の中です。
この発想こそ代名詞の「〇人称」をマスターするカギです。
〇人称を明確に理解する
そもそも「〇人称」の〇は「会話の中の登場人物の数」を示します。
1人称 First Person
会話の中心である「わたし」
2人称 Second Person
「私」とその会話相手である「あなた」
3人称 Third Person
「私」と「あなた」とその会話に登場する「誰か」
といってもわかりにくいので代名詞に使われる「〇人称」をイラストで説明します。
1人称の登場人物

2人称の登場人物

3人称の登場人物

3人称の「he」「she」「it」は「私とあなた」の会話があってこそ存在するのです。
かりに会話の内容が「彼が~、彼女が~」であっても、それは「私とあなた」の会話であることを忘れないでください。
私: “Is he a teacher?”
あなた: “Yes, he is.”
実際にこんな単純な会話にも3人登場しますね。
日本人は英会話が苦手!という原因のひとつに、この代名詞の会話感覚不足の影響は大きいと思っています。
疑問文でつかう代名詞は丸暗記しない!
なかなか難しい内容が続きますが、さらにレベルアップしていきましょう。
では早速、次の文章を見てみてください。
hide and seek は「かくれんぼ」のことです。
この質問には2通りの答えがあります。
- Yes, you do.
- Yes, we do.
上の回答は、状況によりどちらも正解になる可能性があります。
というよりむしろ、会話の状況がわからなければ、答えようがありません。
わかりやすいように会話のシチュエーションをそれぞれに合わせてつくってみます。
① Yes, you do. 「先生と生徒の会話」
生徒たちの一人が先生に「かくれんぼをするのか?」と聞いています。
そして先生が「そう、君たちがするんですよ」と答えている。

② Yes, we do. 「子供同士の会話」
子供たちのひとりが自分たちの仲間に「かくれんぼするんか?」と聞いています。
そしてその仲間が「そう、かくれんぼするねんで」と答えている。

この2パターンならどちらでもOKですよね。
「we」をどのように解釈するかは、「I」が話している相手の「you」に選択権があります。
「you」が「we」のグループの中に入るのか / 入らないのかによって答えは決まります。
疑問文は「自分と相手」がいるから成り立つので、状況にあわせたやりとりがとても重要です。
いつも会話に参加する意識で英語をつかう
英語の会話はパターンで覚えてはいけません。
実際に、英語で話していると「自分視点」になるので、あまり困りません。
しかし、本を読んでいたり、話を聞いていたりする場合は、そうはいきませんよね。
いつも登場人物の会話の状況を思い浮かべるクセを大切にしてください。
そんな英語とは違い「日本語は主語を言わないことがよくある」とはよく言われていますね。
これは別の言い方をすると「その会話の状況で『誰が誰に何をいっているのか』を常に確認する感覚が弱い」といえると思います。
これは日本語の特徴なので、その感覚で英語を使おうとしないようにしてください。