英単語を辞書で調べると「名詞」や「形容詞」といった用語に出会います。
この名詞や形容詞は「品詞 part of speech」という英単語が分類されるグループを意味しています。
そして、すべての英単語はなんらかの「品詞 part of speech」に所属しています。
日本語の文法用語では「○○詞」とつくので、わかりやすいと思います。
英単語には見た目は同じでも、品詞が違うタイプのものが多くあります。
例として英単語 well を見ていきます。
- 名詞 well:井戸
- 動詞 well:水が湧く
- 形容詞 well:健康な
- 副詞 well:上手に
このように同じ well でも品詞が変われば意味が大きく変わります。
そのため必ず「英単語の意味と品詞はワンセット」で覚えてください。
そうはいっても全部同じ well なのでみんな勘違いをしたりしないのでしょうか?
ご心配なく!英語にはちゃんと品詞をみわける仕組みが存在しています。
では、ここから品詞の仕組みを見切っていきましょう。
品詞とは英単語の使用ルール
品詞を調べると次のような特徴があるように思えます。
- 名詞:人や物の名前を表す
- 動詞:行動を表す
- 形容詞:状態や性質を表す
しかし、これはあくまで「参考」でしかありません。
英語の品詞は意味ではなく使用ルールによって決定されます。
一番わかりやすい例が「不定詞 to do」です。
英語の不定詞は「to」と「動詞の原形」をワンセットにして使う用法です。
英語には不定詞専用の使用ルールはありません。
かならず基本的な品詞にあわせて使用ルールが適用されます。
この不定詞には3種類の用法があります。
- 名詞用法 nominal
- 形容詞用法 adjectival
- 副詞用法 adverbial
3種類に分かれていても、意味には大きな違いがありません。
なぜなら「~する方向へ」というのが不定詞が昔の英語から引き継ぐ意味だからです。
そして大きく違うのは英文の中での「使用ルール」になります。
では「不定詞」の使用ルールをまとめてみます
- 名詞・形容詞・副詞と同じように使ってOKですよ!
- もう動詞として使ったらダメですよ!
実は英文法でよくみる「名詞」や「形容詞」などはほとんど「英単語の使用ルール」のことなんです。
それゆえ品詞を知ることで「英文法の仕組み」を理解することができます。
そして「英単語の使用ルール」は「文の要素 SVOC」を基準にして決定されます。
まず品詞の分類は2つの大きなグループに分かれます。
- 文の要素 SVOC として使う
- 名詞 / 動詞 / 形容詞 の3つだけ
- 文の要素 SVOC として使わない
- 副詞 / その他いろいろ
この2つを図で説明するとこうなります。

文の要素 SVOC の中で使う品詞にはさらに細かいルールがあります。

このように「品詞」は文の要素 SVOC とは切り離して考えることはできません。
文の要素と品詞の関係を知りたい方はこちらをどうぞ。
英語の「品詞」は英単語だけでは英文法の仕組みの基本になります。
では、ここからひとつひとつ品詞の使用ルールを確認していきます。
名詞 Noun
名詞には「人やモノの名前」を示すものが多くありますが、これは参考情報です。
英単語の品詞は「使用ルール」が決定します。
そのためちょっと形を変えるだけで「形容詞 ⇒ 名詞」にすることも可能です。
- 形 kind ⇒ 名 kindness
- やさしい ⇒ やさしさ
- 形 important ⇒ 名 importance
- 重要な ⇒ 重要さ
では名詞の「使用ルール」を確認していきます。
名詞の使用ルール
英語において「名詞」は4パターンで使用します。
- 主語(S)⇒ 文の要素
- 目的語(O)⇒ 文の要素
- 補語(C)⇒ 文の要素
- 前置詞とペア ⇒ おまけ要素(文の要素に入らない)

名詞は「前置詞とペア」になると文の要素で使うことはできません。
文の要素にならない品詞は「副詞」と呼ばれます(後述)
それゆえ「前置詞+名詞」で「副詞扱い」と呼ばれることが多くあります。
名詞句 Nominal Phrase
英単語だけでなく「句 phrase」のまとまりのときも「品詞の使用ルール」が適用されます。
では「名詞+句 nominal phrase」の確認です。
英語で「名詞句」になるのは次の3つです。
- 不定詞:to do の名詞用法
- 動名詞:doing の名詞用法
- 疑問詞句:wh-で始まる品詞 + 不定詞 to do
このうち「不定詞」と「動名詞」は「動詞の変化形」です。
つまり「動詞」を「名詞」として使いたいときにこの2つから選択します。
どちらを使うかで意味やニュアンスが変わるので確認をお願いします。

疑問詞を使う場合は「疑問詞+不定詞」の形にします。
意味は「疑問詞が示す内容+行動」を組み合わせて表現できます。
- what to do:もの+動詞(すること)
- where to stay:場所+動詞(泊まる場所)
- how to run:方法+動詞(走り方)
「疑問詞+不定詞」は名詞として使用できるので主語や目的語などで使ってください。
名詞節 Nominal Clause
「節 phrase」のまとまりのときも「品詞の使用ルール」が適用されます。
では「名詞+節 nominal clause」の確認です。
英語で「名詞節」になるのは次の4つです。
- 従属接続詞
- 接続詞 that
- 疑問詞+節
- 複合関係代名詞+節
文法書によっては接続詞 that を「従属節」に入れる場合もあります。ですが接続詞 that は、使用法が広いため、あえて別枠にしておきます。
名詞・名詞句・名詞節の詳しい解説はこちらをご覧ください
動詞 Verb
英語は「動詞」を基準にすべての文法の仕組みができあがっています。
動詞を決めれば、それ以外の部分は自然に決まっていきます。
英語の動詞には「行動を表す言葉」だけでなく「英語の仕組みの中心」です。
では動詞の「使用ルール」を確認していきます。
動詞の使用ルール
- 1つの英文に使える動詞は1つだけ(メイン動詞)
- 五文型のパターンを決める(文の要素 V)
- 時制・法・相・態(TMAV)を発動する(動詞パラダイム)
① 1つの英文に1つだけ
英語でメイン動詞になるには「主語」の行動を意味するポジションに置きます。
- I am here.
- He has a question.
もしくは助動詞(正確には法助動詞)とペアの動詞の場合は「原形」にします。
- You will be there soon.
- She may have an answer.
このように文章の中心にある「動詞」だけが「動詞」となります。
また英語には「準動詞」とよばれる「動詞の変化形」があります。
この「動詞の変化形(ING形、不定詞、過去分詞など)」は「メイン動詞」になれないので注意してください。
現在進行形や受動態と呼ばれる文章で be動詞を使うのはこれが理由です。
- We are having a party.
- The meeting is canceled.
「現在分詞」と「過去分詞」は動詞の変化形なので「メイン動詞で使えない」からなんです。
② 五文型パターンを決める
動詞 verb には「品詞 verb」と「文の要素 verb」の両方の意味があります。
日本の英文法解説では「文の要素」の「動詞 verb」を「述語動詞」と呼ぶことが多いようです。
しかし「述語動詞」は「述語として使う動詞」という意味なので結局は「品詞」を意味しています。
あるま・まーたでは「動語 V」と呼ぶことで「文の要素の verb 」を区別します。

動詞の「品詞」と「文の要素」の機能を詳しく知りたいかたはこちらをどうぞ。
③ 時制・法・相・態(TMAV)を発動
英語の動詞は行動以外にもいろいろな機能があります。
動詞は形を変化させていろいろな意味を発動することが可能です。
この動詞を変化させる機能を「動詞パラダイム」と言います。
動詞パラダイムの4つの機能に関連する文法用語をみていきます。
- 時制 Tense
- 話し手から見て行動がいつ起こるものなのか?を表す
- 現在時制 present tense
- 過去時制 past tense
- 話し手から見て行動がいつ起こるものなのか?を表す
- 法 Mood
- 話し手の判断・認識を表す
- 直説法 indicative mood
- 仮定法(接続法)subjunctive mood
- 命令法 imperative mood
- 話し手の判断・認識を表す
- 相 Aspect
- 行動の進行度を表す
- 未然相 prospective aspect
- 進行相 progressive aspect
- 完了相 perfect aspect
- 行動の進行度を表す
- 態 Voice
- 行動の「する / される」を区別する
- 能動態 active voice
- 受動態 passive voice
- 行動の「する / される」を区別する
これら4つの機能は英語の動詞の重要な機能です。
くわしくはこちらをご覧ください。
形容詞 Adjective
形容詞には「状態や性質」を示すものが多くあります。
しかし英単語の品詞は「使用ルール」が決定します。
「状態や性質」というのは参考として知っておいてください。
形容詞の使用ルール
- ① 補語(C)になる
- ② 名詞を説明(修飾する)

形容詞は「名詞」につながろうとする機能があります。
「名詞を説明(限定)」でも「補語 C(叙述)」でも最終的には「名詞との関係性が強い」という仕組みは変わりません。
形容詞句 Adjectival Phrase
英語の「形容詞句」はとても重要です。
なぜなら「動詞の変化形(準動詞 nonfinite verb)」の全3パターンを使えるからです。
- 不定詞(to do の形容詞用法)
- 現在分詞(doing の形容詞用法)
- 過去分詞(形容詞用法)
動詞の変化形の「形容詞用法」には2種類の特別な機能が働きます。
- 相 aspect:行動の進行度
- 態 voice:目的語をする / されるを識別する用語
それぞれ「同時発動」できるので確認をお願いします。

前置詞 of + 名詞 = 形容詞の機能
名詞とペアになる前置詞の基本ルールは「副詞扱い(おまけ要素)」です。
ところが前置詞 of は「名詞を名詞に接続する」という機能を持ちます。
もともと英語には「属格 genitive」という「名詞につなげる専用の形」がありました。
この「属格」の代用で「of + 名詞」が使われるようになった経緯があります。
つまり前置詞 of があることで「名詞を説明する=形容詞」という解釈になります。
形容詞節 Adjectival Clause
- 関係代名詞+節(関係詞節)
- 関係副詞+節(関係詞節)
- *接続詞 that(いわゆる同格の that)
接続詞 that は名詞に隣接させて「内容説明」を行うことができます。
形容詞節となっていないことが多いですが機能をみて「形容詞節」に入れます。
形容詞・形容詞句・形容詞節の詳しい解説はこちらをご覧ください
副詞 Adverb
いろいろな機能をつかって表現を豊かにする品詞のことです。
ところがいろいろありすぎて、ほんとうのところは「寄せ集めグループ」が実情です。
英語の Wikipedia でも “catch-all category(いろいろなものをまとめたグループ)” と載っています。
副詞の「副」とは「主」ではないという意味でので、文の要素(SVOC)に入らないという理解があれば的確に理解できます。
副詞の使用ルール
- ① 文の要素(S V O C)に入らない
- ② 形容詞・副詞を説明(修飾)する

副詞はこまかな分類をしないほうがうまくいきます。
副詞句 Adverbial Phrase
- 前置詞 + 名詞
- 不定詞
- ING形(分詞構文)
- 過去分詞(分詞構文)
副詞節 Adverbial Clause
文の要素に入らない「節」をすべて「副詞節」と呼びます。
- 従属接続詞
- 接続詞 that(形容詞を説明)
- 複合関係代名詞+節
- 複合関係副詞+節
名詞・名詞句・名詞節の詳しい解説はこちらをご覧ください
前置詞 Preposition
日本語の「てにをは(助詞)」に似た言葉で「名詞」をつなぐことができます。
「前置詞の使用ルール」
- ① 名詞の前において名詞をサポートする(まとめて「副詞」の扱い)
- ② 動詞とペアになり動詞をサポートする(まとめて「動詞」の扱い)
- ③ 単独でつかうときの品詞は「副詞」となる
動詞とペアになる場合はまとめて「イディオム動詞」や「群動詞」といいます。
こうなると「まとまって1つの動詞」として英文法で機能するのでバラバラにしないようにご注意ください。
- look forward to: 楽しみにする
- take care of: 世話をする / 面倒・邪魔者などを処理する
- make the best of: 最善を引き出す / 限られた中で最大限のことをする
助動詞 Auxiliary Verb
動詞のサポートをする品詞です。
別名で helping verb と呼ばれることもあります。
実は英文法で「助動詞」とよばれるものは2種類あります。
- 法助動詞 modal (auxiliary) verb
- 第一助動詞 primary (auxiliary) verb
この2種類は全く違う仕組みで動詞をサポートします。

法助動詞 Modal Verb
英文法で「助動詞 auxuliary」と教わるものは基本的に「法助動詞」のことです。
- will / would
- can / could
- may / might
- shall / should
- must
この「法助動詞」こそ「話し手の感覚」を追加し、さらに動詞の原形につながるという用法を持ちます。
法助動詞の「法」にはしっかりと意味があります。
英文法の「法 mood(mode に由来)」は「思いを表現する方法(主観・想像モード発動!)」という意味です。
仮定「法」で would や could などをよく使うのは「法」助動詞が、仮定「法」を表すのに必要だからです。
事実とは違う話なので「あくまで仮の話で主観・想像モード発動させるけど・・・」が仮定法の本質です。
- I wish I could be there for you.
- If I were you, I would not do such a thing.
「法」助動詞は「主観・想像モード」を発動させることをしっかり押さえておきましょう。
法助動詞の使用ルール
第一助動詞 Primary Verb
なぜなら「第一助動詞」は「動詞 verb」と解釈することが可能だからです。
実際にリストを見ていきます。
do / does / did / be動詞 / have / has / had
第一助動詞は「進行形の be動詞」そして「完了形の have」を助動詞と解釈した場合の呼び名です。
この2つは古英語では完全な「動詞」でした。そのため「動詞」と解釈しても問題ありません。
接続詞 Conjunction
単語、フレーズ(句)、文章(節)を接続する
- ① 同じ内容の単語・文をつなぐ(等位接続詞)
- ② 条件を設定し、メインの文をサポートする(従属接続詞)
- ③ that をつかって文章をまとまりにする(接続詞 that)
接続詞は「文章をつなげる」役割を持ちます。
それゆえ接続詞の数だけ「動詞」の数を増やすことができます。
メイン文のみ
⇒動詞は1つ
・I know him
・This is it.
メイン文+接続詞が2つ(サブの文章が2つ)
⇒動詞は3つ
・If you go there, can you help him, because he cannot do it alone?
・When you stay here, if anything happens, my sister will help you.